短編2
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二回飛び降りた男

古い話しで恐縮です。

私が中学生の頃の出来事なので、かれこれ二十数年前になりますか。

ある土曜日の昼下がり、私達はある病院の駐車場でクラスメート数人と、キャッチボールをして遊んでいました。

その時、病院の非常口から一人の男性がスリッパ履きのまま出てきました

その男性は、見るからに病人のようで、足取りもおぼつかず、目はうつろで、一目でこの病院の入院患者だと言う事がわかりました。

その男性の様子があまりにも異様だったので私達は、キャッチボールをするのも忘れ、男性の動向を目で追っていました。

男性は病院横の非常階段を、頼りない足取りで登りはじめました。

二階のおどり場まで登ると、男性は階段の手摺りを乗り越えました。

そして次の瞬間、男性の体は宙に舞いました。そう、男性は飛び降り自殺をしたのです。

あまりの事に、私達は、一瞬何事が起こったのかわからず、わなわなと震え、立ち尽くす他ありませんでした。

しかし、本当の驚きは、まだこれからでした。

飛び降り、地面に叩きつけられた男性が、すっくと立ち上がり、血だらけの体を引きずるように、またしても非常階段を登りはじめました。

私達は、目の前で何が起きているのか、夢か現実なのかも分からないほどでした。

中には泣き出す子供もいたほどです。

その男性は、先程飛び降りた二階を通り過ぎ、更に上へと登って行きました。

そして四階まで登りきったその時です。

男性はまたしても、手摺りを乗り越えました。

そして…そう、もうお分かりでしょう。その後、男性は二度と立ち上がる事はありませんでした。

一度飛び降り死にきれず二度までも飛び降りなければならなかったこの男性に、一体どんな事情があったのか、今となっては知る由もありません。合掌

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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