中編4
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悪魔召喚

こっくりさんをやっていて、霊が取り憑いて大変な事になった

このサイトを見ているとそういった事って珍しく無いみたいですね

なので、私も似たような話を一つ

私が遭遇したのはこっくりさんでは無く悪魔でした

信じられないかも知れませんが、悪魔が私の兄に取り憑いたのです

あの日の事は今でも忘れられません

あれは、ある晴れた日の昼下がりでした…

自室から何か大きな紙を持ってきた兄が、居間で漫画を読んでいた私に「悪魔召喚の儀を行うから付き合わないか?」

と誘ってきたのが事の発端でした

元来オカルトが苦手な私は即座に断りましたが、兄の「大丈夫、大丈夫」という陽気な言葉と少しばかりの好奇心に負けてしまい、結局儀式に付き合う事にしました

兄が押し入れから持ってきた真っ黒なカーテンで窓を覆うと部屋の中は昼間とは思えない程暗くなりました

兄は部屋の四隅に置いた蝋燭に火をつけると、大きな模造紙に血のような赤いインクで描いた魔法陣を広げました

この時点で既に私は、この部屋の中の雰囲気が異様な気配を帯びて始めているのを薄々と感じていました

そして兄が呪文を口にします

普段の兄からは想像もつかないある意味無理やり出してるような低い声

紡がれる向こう側から、こちら側へ悪魔を召喚する為の忌まわしい言葉

「魂に愛などない。彼我の溝は絶望なれば、絶死をもって告げるまで

されば6足6節6羽の眷属、海の砂より多く天の星すら暴食する悪なる虫ども

汝が王たる我が呼びかけに応じ此処に集えそして全ての血と虐の許に、神の名までも我が思いのままとならん

喰らい、貪り、埋め尽くせ

来たれベルゼバブ!」

その瞬間、兄は喉の奥から絞りだすような叫びをあげ、手で顔を覆ったままその場に跪きました

悪魔が…

悪魔が兄に取り憑いたのです!

私は呆気に取られて声を発する事も出来ませんでした

そして兄は…

いえ、違いますね

悪魔は…と言った方が良いでしょう

悪魔は、思わず床に座り込んだ私を見下ろす様に立ち上がると、低い声で喋り始めました

「ククク…この私を呼び出せる程の執行者がまだこの罪深き大地に存在していたとは…

僥倖、真に僥倖ぞ!」

これは、ただの悪魔では無いなと直感した私は震えながらも必死に声を上げました

「お、お前は誰だ!」

悪魔は私に向き直ると、大仰に礼をし言いました

「我は這う虫の王 ベルゼバブ

この罪深き大地に終焉の鐘をならす為に現れた

ククク…ヒトの子よ、嘆き悲しむがいい

鉄槌の日は、もう間も無くだ」

「鉄槌の日?」

私はワケがわからず聞き返しました

「そう、それは神々が作り上げしこの罪深き大地が終末を迎える刻

そして、滅びの鐘を鳴らすのが我の役目」

何と、悪魔は世界を滅ぼすと言うのです

私は絶望のあまり目の前が真っ暗になりかけました

その時です

「グッ…そうは…させるかよッ!」

それは兄の声でした

「ほう…流石はこれだけの力を持つ執行者だ

中々にしぶとい」

「ざけんなッ…人の体を使って…何勝手ほざいてやがる!」

どうやら兄の体の中で悪魔と兄がせめぎ合っているようです

その時の私は、ただただオロオロするばかりでした

その時です

インターホンが鳴って玄関の方から声がしました

「〇〇(兄の名前)~、いるか~」

それは兄の友人のA君の声でした

そうだ!A君なら力を貸してくれる

そう思い玄関へ走ろとした私を悪魔が呼び止めました

「待て…動くな…動けば殺す…」

それは、今までで一番怖い声でした

悪魔の恐ろしい目に射抜かれてしまった私は金縛りにあったように身動きが取れませんでした

時間にすれば数秒だったのかもしれませんが、私にしてみれば永遠のようにも感じました

しかし、突然悪魔が顔を手で覆って苦しみだしました

私は何が起こったか分からず混乱していると、兄は突然

「ハッ!俺は何をしていたんだ、ん、あれはAの声、マズいAがこの魔法陣を見てしまえばAにまで悪魔の手が及んでしまうそうだ早くこれを片付けるぞ手をかしてくれ」とまくし立てるように言うとテキパキと模造紙やら蝋燭やらを片付けてしまいました

その後、兄は普段通りでしたが、私には本当に悪魔が去ったのか信じられなません

現に兄は、この間も姿見の前に立ち、おかしなポーズを取りながら

「審判の日は近い…」

と呟いていました

これはあの日悪魔が言った鉄槌の日の事だと私は睨んでいます

まだ、兄の中に悪魔が潜んでいると思うと私は不安でしょうがありません

ところで兄はなんで悪魔を召喚したんだろう

怖い話投稿:ホラーテラー 影羅さん  

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