中編3
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淡い思い出

初めて投稿させて頂きます。

ご批判、ご指導宜しくお願いいたします。

私はいろいろな体験をしてきましたが、これは生まれて初めて体験した少し切ない思い出です。

当時、幼稚園の年長だった私には仲良しの女の子がいました。仮にKちゃんとします。

Kちゃんとは入園時から同じ組で、園内でよく遊んでいました。

年長になった頃、Kちゃんは休みがちになりました。

母によると「Kちゃんは病気になっちゃったのよ。なかなか来れないけど、優しくしてね。」

私は、幼いながらも重い病気だと感じていたので、通園してきた時はそれまで以上に優しく接しました。

Kちゃんはやがて帽子を被って通ってきました。

通園用の紺色の帽子を園内でもずっと被っていました。お遊戯中も、食事中も。

それをからかう園児も居ましたが、私がかばった記憶があります。

やがて、Kちゃんは来なくなりました。

母は「Kちゃんは、今戦っているの。頑張って戦っているのだから、おまえも祈りなさい。」と悲しそうに話していました。

年長の半ば頃、保母の先生が私を呼びました。

「Kちゃん、遠くに行っちゃうのよ…。T(私)君、○日にお別れ出来るかな?仲良しさんのT君がバイバイしてあげて。」

私は結構しっかりした幼稚園児だったので「その日はお家の用事でお母さんと出掛けます。Kちゃん、バイバイなの?」と返しました。

先生は「じゃあ、お母さんとその日の午後1時にお家でKちゃんの家に向かって手を合わせて。お母さんには先生から電話します。」と言いました。

先生に言われた○日になり、私は母と出掛ける用意をしました。

そして午後1時ちょっと前。母と一緒に正座になり、Kちゃんの家の方角に向きました。

手を合わせて、目を瞑ります。

…小さかった私は、本当に1時なのか気になり…母にバレない様に目を開け(母は所謂教育ママだったので、そういう事でも叱る人でした)壁に掛かっている時計を見上げました。

針がちょうど1時を示していましたが、時計の横に誰かがいます。

テレビの砂嵐みたいなそれは、紺色の帽子を被り…幼稚園の制服を着ていて…胸から上だけでしたが…透けていましたが…ニッコリ笑っています。

そして、右手を上げてバイバイしています。

(Kちゃん…Kちゃん!?)

私は(Kちゃん…バイバイ)と、母が気づかない様に手をそっと振りました。

Kちゃんは、本当に満面の笑みで…一緒に遊んでいた頃のKちゃんのままでスッと消えていきました。

声は聞こえなかったけど(T君、バイバイっ)と言ってたと思います。

Kちゃんは白血病で五歳で亡くなりました。

幼い私は、その不思議な体験でKちゃんが亡くなり、遠いところに行くという意味が理解出来ました。

…25年たった今でもKちゃんの最期の「バイバイ」はハッキリ覚えています。

時々思い出して、懐かしいような、切ないような。

淡い不思議な思い出は一生忘れないでしょう。

初めて投稿しましたが、年代を追って体験談を書きたいと思います。

駄文、失礼しました。

怖い話投稿:ホラーテラー 徐晃さん  

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