中編3
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ライバル

今になって思い返してみれば、中学時代にはいつもアイツと競い合っていた気がする。

その友人Dは、勉強も運動も私とよく釣り合い、よく競争していた。

「へっへー、お前もなかなか頑張ったが、俺の勝ちだな」

「さすがだな…でも次は絶対に負けないからな」

そんなことを言い合っては、よく笑っていた思い出がある。

勝っても負けてもお互い笑い合えるような、良きライバル。

私にとって、Dはそんな存在だった。

その切磋琢磨こそが、私の勉学へのやる気の大部分を支えたといっても過言ではないだろう。

そんな中学の頃の思い出は根強く私の心の奥に焼き付いている。

最近になって、ふとその思い出がよみがえったのは、ある夢を見たときだった。

夢の中でDと二人、まだ中学の頃のままの姿で立っていた。

地平線が果てしなく遠く見える、広―い大地。

「向こうのほうまで、競争しようぜ」

Dがそんなことを言ってきた。

私も、当時の記憶が懐かしくなってきて、

「面白い、やってやろうじゃないか」

そう言って、勝負に乗る。

よーいドン、の合図で二人同時に駆け出す。

「くっ……」

何だか、足がうまく動かなくてなかなか進めない。

それに比べ、Dは軽やかな足取りでどんどん進んで私を引き離していく。

ハア、ハア、ハア…

足が鉛のように重く、息切れしてきて、私はその場に立ち止まってしまった。

その間にもDは瞬く間に向こうに駆けて行き、やがて見えなくなってしまう…

そこで目が覚めた。

なんだか、モヤモヤしたような切ないような気持ちだった。

(そういえば、Dはどうしてるんだろうな)

私は地元の高校、Dは遠い高校へ上がってしまったため、それ以来は会っていなかった。

なぜか無性に気になった。

友人を何人かあたって、何とかDの連絡先を知ることが出来た。

さっそく電話してみると、驚くべき事実を知ることになった。

電話に出たのは、なぜかDの母親。

哀しそうな声だった。

今、Dは病院で生と死の間をさまよっている…

少し前からクスリに手を出してしまったDは、ついに過剰摂取により意識を失った。

救急車で病院に運ばれたが、未だに昏睡状態で目を覚まさないというのだ。

私は、病院へと急いだ。

ベッドに寝かされたDの、すっかり変わり果てた姿を見て私は言葉を失った。

(どうして…どうしてなんだよ…!)

静かに眠り続けるDの手を握ると、ほのかに温かかった。

いつの間にか、私は涙を流していた。

家に帰ってからも、私はDの回復を心から祈り続けた。

(D、生きろ!生きるんだ!)

拳をギュッと握り締めながら、心の中で何度も呟いた。

数日後、Dが意識を無事取り戻したという連絡を受けたときは、感極まり嬉し泣きした。

それから休日に急いで病院へ行くと、Dは少し気まずそうにうつむいていた。

「久しぶりだな…」

私がそう言うと、Dは途切れ途切れに呟いた。

「懐かしいな…あのさ…俺…」

私はただ黙ってDの手を握った。

「何も言わなくていいさ…生きててくれて、良かった」

周りの目も気にせず、二人でただ子供のように泣きじゃくった。

だいぶ落ち着きを取り戻したところで、私達はしばらく語り合った。

「くそったれな世の中だよな…でも俺達が力を合わせれば、そんなに悪いもんじゃない。

一緒に生きよう。中学の時みたいに…なっ」

そう言って肩をポンと叩くと、Dは少し照れて微笑んだ。

「まだまだ人生これからじゃないか。

果てしなく長くてつらい道のりだって、力を合わせて一歩一歩進んでいこう。」

私はDと堅い握手を交わした。

今は懐かしい、中学の頃のように。

そしてDは今、もう一度立ち直るために毎日を頑張っている。

「生きてるって、良いもんだな」

ある日Dは少し照れながら、そう呟いた。

私は何だか嬉しくて、何度も頷きながら微笑んだ。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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