短編2
  • 表示切替
  • 使い方

Mと足音

私のしたことは、間違っていたのだろうか?

確かに、人体に害をなす物質だとは重々承知していた…

6/20

今日、新しい被験者が施設にやって来た。管理タグには「M」の刻印が打たれていた。

6/30

被験者MにV-evilを投与。悲痛な叫びがラボ中に響いた…

被験者Mは意識を失う。

7/5

被験者Mの意識が回復。身体はまるで化け物の様に変わり果てていたが、意識や理性、人としての感情は色濃く残っているようで、私達と楽しそうに談笑していた。

7/8

スタッフの一人が被験者Mに殺された。

彼は『身支度を整えたい』と言う被験者Mに鏡を見せてやっただけだったのだが…、被験者が変わり果てた自分の姿にショックを受けたのだろうか?

被験者Mを一時的に監禁室に移すことにした。

7/15

被験者Mの世話役に付けていたスタッフ達が今日までに10人も殺されている。鏡で自分の姿を見たあの日以来、被験者Mは狂暴性を露にしだした。

監禁室の扉や壁を内側からしきりに叩き、雄叫びをあげている。

監禁室が持ちそうにないので、あのエリア自体を防火シャッターを使い封鎖した。

明後日には本部からプロの生物兵器対策班が来てくれるらしい。

7/17

一体…被験者Mに何が起きたというのだ?

今日、本部がよこした生物兵器対策班の連中と被験者Mの様子を伺いに防火シャッターを開け、あのエリアに入った訳だが、私は脚がすくんだ。

我々が一瞬だけ姿を確認した被験者Mに、最初の頃の面影はなく、そこには3メートルを越える巨大な化け物の影があった。

あの監禁室エリアに居た他の被験者達は…Mの餌食になってしまっているのだろうか?

7/20

最悪だ…

施設の電力が朝からダウンしたまま、復旧しない。

研究が出来ない事や、冷凍保存している実験体のことも気にはかかるが、何よりも私を不安に駆り立てるのは被験者Mがいつあの防火シャッターを突き破り外に出てくるのか…という事だ。

7/22

恐れていた事態が現実になってしまった。

被験者Mの足音が研究エリア内に響いている。

きっと次は私の番だ…

私も、他の連中と同じように被験者Mの犠牲になるのだろう…

くそ、ただ黙って殺られる位なら…

8/12

被験者M?

知らないな、あんな出来損ないの事は…。私?

私はV-evilを自己に投与し、それを自分のものにする事が出来た。

そう、私は、私こそが新しい世界の第一人者に相応しいのだ!

怖い話投稿:ホラーテラー よしはるさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ