中編3
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真の恐怖

俺は霊感っていうものがまったくない為、幽霊っていうのをみたことがない。だからと言って、心霊スポットだとかに進んで行こうとも思わない。これは幽霊とかの類じゃない話し…

俺は仕事が終わり帰りの都電に乗ったんだ。都電って三ノ輪〜早稲田間繋ぐワンマンの電車ね。時間は夜の8時ぐらいだったかな。車内はそれなりに空いてて、すぐ座れたんだ。座って、「今日もお疲れ俺」なんて思いながら座ってたんだよね。

ある程度時間が経ったんだ。そしたら、車内にいるほとんどの乗客がある物を見てるんだよね。やっぱり気になるじゃん。みんなが見てる物って。だから視線をそっちに移したらさ、いたんだよ。

「黒く光り輝くゴキブリ」

がさ。もう目を疑ったよね。ゆっくり、歩いてんの。ある意味さすが都電。みたいな感じ。

そりゃもう、目が釘付けだよ。だって見失って自分に付いたら嫌じゃん。だからガン見もガン見。心の中では「お願い。こっち来ないで」って祈りまくり。まぁゴキちゃんはそんな俺の気持ちを悟るわけもなく、どんどん近寄って来るわけ。

でも、人もいるし、動けないからただ座って、平常心を装いながらゴキちゃんの進路を見てたんだ。そしたら、そのゴキちゃん、座席の下の部分に進路を変えたんだよね。もうパニック状態。今までは見える場所にいて、進路までわかってたのに、それがわからなくなる恐怖。もう無理だよね。

そりゃ祈り続けたさ。「どうにか俺のとこには来ないで」みたいなさ。乗客の人達も見えない恐怖に晒されて軽くパニックに陥ってる雰囲気。みんながみんな、自分のとこには来るなって祈っただろうな。

まぁ、なんだかんだで降りる駅が近づいて来て、席を立ったんだよ。そしたら、あるお兄さんが一言。

「ゴキブリ付いてますよ!」

だって。

もう恐怖とパニック。必死で、探すが見当たらず。

が、いたよ。ゴキちゃんは。その日のスーツは黒色だった為、同化してやんの。俺の足からゆうゆうと登って来てる。我が道を行くみたいな感じでさ。もう、

「俺、死んだ」

と思ったね。でも人間、ふと我を忘れる時あるじゃん。そんな感じでそのゴキちゃんをデコピンしたんだ。

そしたら、ゴキちゃんは前にいた女性に付いたみたいで、今度はその女性が大パニック。普通に叫んでたしね。そりゃ、大半の女性はゴキブリなんて苦手だろうし。

まぁ、世の中優しい人もいるもんでおっちゃんが女性に付いてたゴキちゃんを払って取り除いてあげてた。車内はさすがおっちゃんみたいな雰囲気。俺とその女性は軽く安堵。

も束の間。

なんでか、その女性に般若みたいな顔で睨まれること睨まれること。怖いのなんのって。今までのゴキちゃんなんて米粒程の怖さ。

「えっ俺が悪い人みたい。たまたまデコピンしたら貴女に付いただけで」って思ってたけど、その女性にとっては俺のせいだったらしく…。目の前には般若の眼光。降りるまでずっと睨まれ続け、駅に着いた俺はマリオ並のダッシュをした。

あん時の女性の睨み。マジ怖かった。なんか憎悪剥き出しな感じ。ゴキちゃんが自分に付いたことよりも般若の眼光のほうが怖かったなぁ。女性に睨まれるってあんまないけど、あの顔は忘れないな。

世の中1番怖いのは女って悟ったよ。

終わり

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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全てが恐ろしい(-̀ω-́ ;)

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