短編2
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偶然と足跡

去年の出張先での出来事です。

当時夜遅くから早朝までの仕事だったので

勤務後は宿泊先であるビジネスホテルの浴場で朝風呂に入るのが日課でした。

辺りはまだ薄暗く徒歩でホテルへ戻る道中、街中でしたが珍しく野生のフクロウを見たのを覚えています。

今思えばあの日は様々な「偶然」が重なっていたのかもしれません。

そんな日のお話です。

その日もいつもと変わらずホテルの自室から仲間と浴場へと向かう途中

トイレに行きたくなった私は一人、通路沿いのトイレへと向かいました。

廊下からドアを開けると洗面台と小便器が3つ個室が2つ

その隣には掃除用具入れが1つの変哲も無いトイレです。

個室の方だったので用をすませ個室から出ようとドアを開けた時でした

黒い足跡の様なものがトイレ内のタイルの床に付着しているのに気がつきました。

その時は特に気にもせず洗面台で手を洗い廊下に出ようとしたのですが

ふと振り返り足跡の様なものを目で追うと、

それは先ほどまで自分が入っていた個室から廊下へのドアへと続いていました。

何だろう始めからあったのか?進行方向は・・と嫌な緊張感に襲われました。

それはドアを開けた先、トイレの外の廊下へと続いていて

廊下に出てからは目と鼻の先のところにそれは居ました。

それを見た瞬間声も出ず、慌ててその場からフロントへ走りましたが

早朝だったため受付もおらず仲間はすでに浴場へ

何度も呼び鈴を鳴らし、やっと受付が出てきました。

幼少期や過去にも何度か同じ経験があったので

受付の方に事情を説明し、それを落とす道具を用意してもらっている間に仕事用の長靴に履き替え

外に水場は無いのか尋ねすぐさま向かいました。

「何故あんな所に・・」

仕事の疲れと眠気の中、何度もそう呟きながら風呂へも入れず

受付の方に貰った使い捨ての歯ブラシと雑巾を片手に

靴の裏についたそれを外の水道で一生懸命落としました。

もちろん靴屋も商店街もまだ開いてませんし自室の玄関に放置する訳にもいきません。

朝食もまだなのに・・一体誰が何故あんなところに・・

早朝だった為ホテルの清掃もまだ行われておらず

偶然が重なったとは言えども、自分の過失と言ってしまえば終いなのですが・・

その後も大して記憶に残る様な「運」の良い出来事もありませんでした。

みなさんも足元にはくれぐれもご注意を。

怖い話投稿:ホラーテラー せなさん  

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