続きになります。
恐る恐る音のする方向に目をやると、
そこには私と同じく昆虫採集をしている男性がいました。
ホッと胸をなで下ろす私。
「こんばんわ。」
30分程話し込んだでしょうか。
私達は別れてそれぞれ帰路につきました。
「あんな所で同じ趣味の人と会うなんて奇遇だな。」
そんな事を考えながら車を走らせていました。
「あれ?」
そういえば、さっきの人どんな人だったっけ?
一つずつ思い出してゆきます。
黒い長靴
青い作業ズボン
緑色のジャンパー
黒いニット帽
うーん…。
どうしても顔だけが思い出せません。
しばらく車を走らせていると、ある事実に気がついてしまいました。
いや、気がついたというよりも、何故一緒に話をしている時に気がつかなかったのだろう…。
私は真夏だというのにガタガタ震えながらアクセルを目一杯いに踏み込んでいました。
…そう、私の記憶力が曖昧で彼の顔を思い出せないのではなかった。
そもそも彼には顔がなかったのです。
「のっぺらぼう」
I井山には昔そんな噂があったのを思い出しました。
怖い話投稿:ホラーテラー まげろたかしさん
作者怖話