中編3
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母の頑張り

あれはまだ私が中学生だったころの出来事です。

夜中にもよおし、トイレへ。

私の部屋は2階にあり、階段を降りて直ぐの所にトイレがあるので、

寝ぼけ眼のまま階段を降りていきました。

当時実家は古く、田舎だったので色々な虫などが出没して

小心者の私はかなりビクビクしながら過ごしたものです。

ちいさなワラジムシから蛾にいたるまで、

本当に駄目だったので、

その日もそろりそろりとトイレへ向かったのです。

一階へ降りるとトイレがあって、直ぐ玄関というつくりの我が家。

玄関の電気は、外灯も玄関ホールも点いておらず、

階段の下から3段めくらいからは、

ぼんやり明るいといった感じの状況でした。

玄関の電気は離れた所にスイッチがあるので、

当然私は点けるつもりも無く、

最後の段を降りきろうと足を下ろしました。

!!!!

その瞬間の感触は今でも忘れません。

プツッブジュウゥ

じんわりと温かいものが足の裏に広がり、

そして直ぐにそれは冷たく変化しました。

パニックになった私は、大声を上げ飛びのき、

足の裏を階段のへりに擦り付けていました。

まるで靴底についたガムをとるみたいに・・・

叫び声に気づいた母が飛び起きてきて、

 母「なんなの。どうしたの。」

 私「なんか踏んだよ~。なんか、出た~。」

母はじっとその物体を見つめ、

 「ああ、ねずみの子供踏んじゃったのね。

  大丈夫だから、足洗って寝なさい。」

私はそのまま足を洗って、トイレを済ませて眠りました。

今思うと、汚れを階段へりにまで擦りつけ

被害を拡大させたのに、

文句も言わず方付けてくれた母に感謝です。

ちなみに父はその時、爆睡しており

朝までグッスリだったらしいです。

父よ。もし強盗だったらどうするつもりだったんだ。

後日、半年くらい経ったころのこと、

納屋から虫のわいた猫の屍骸を片付けてくれたのも、

やはり母でした。

その時は納屋の前の雪が溶け、扉が開くようになったので、

私が物を取りに行ったのです。

軋む扉を開くと、ふわりと生ごみの腐った臭いがしました。

そしてあり得ないくらいのまるまる肥えたハエどもの数。

かなりハエの死骸も転がっていました。

なんだろう、なんか腐ってる?

そう思いながら進むと、いました、ありました。それが。

日の光が薄っすらと差し込み、

元は黒かったであろう毛並みは薄汚れ、

抜け落ち、くすんだ肌が波打つのを、照らしていました。

 「うおっ・んっ・だああああー!!!!」

とか、今では発音できないような奇声をあげて、

家に転がりこみました。

母に事情を話すと、意外に落ち着いていて

 「そう、雪かき用のスコップ取ったときに、入り込んじゃったのね・・・。

  ごめんね。気づいてあげられなくて。」

そういうと、猫撤去へ。

さすがに、それは袋ごと捨てたらしいです。

私ももう埋められる状態では無いと思っていましたし。

原因は取り除きましたが、いかんせん発生した副産物が

納屋のいたる所に潜んでいるのでしょう。

しばし考えたすえ、害虫駆除の業者さんにお任せすることにしました。

しかし、消毒と清掃は別仕事らしく、

なんとか頼み込んでしてもらいましたが、

エライ料金取られたそうです。

後で母に聞くと、もう猫を片付けるのだけで、精一杯だったとのこと。

だよね。そうだよね。

かあちゃん。ありがとう。

きっと、子の前で一生懸命強がってくれたのでしょう。

なんか、とても私には真似できそうもないかも。

自分が妊娠してみて、あらためて頭が下がる思いです。

私なんか未だに虫すら苦手なのに・・・

いつか強くなれるのでしょうか・・・?

はー、今は無理っぽいので

なにかあったら、お願いしますね。だんなさま。

きっと、そのうち母に追いつけるよう頑張りますから。

ああでも、あの映像を思い出すと腰がひける。

よそでやって、といわれそうな内容ですが、これが

のほほんと生きてきた私の恐怖体験でした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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