中編5
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佇む人

・・・これは、小学生の頃に体験した話です。

ある下校中の事です。

何をする訳でもなく下を見ながら歩いていると目の前に綺麗な花柄のワンピースを着た女の人が立っていました。

・・・その時ちょっとした違和感を感じました。

それは、その時の季節は冬でとても寒い日だったのですが、目の前に立っている女の人のワンピースは生地の薄い春物のワンピースだったのです。

不思議に思いながら膝から下位しか見えていなかったので全身を見ようと顔を上にあげると、そこには誰も居ませんでした。

「・・・?」

「まぁ、いいか・・。」

子供だった私はその事を深くは考えず目の錯覚だろう位にしか思う事も無く家路につきました。

次の日。

学校が終わりいつものように自分の通学路を帰っていると、昨日と同じ場所に同じ格好をした女の人が立っていました。

その時も下を向きながら歩いていたので見えているのは膝から下なのですが、靴といいワンピースといい全く同じだったし何て説明していいのか分からないのですが直感で同じ人だと感じたのです。

びっくりして顔を上げるとそこには誰もいませんでした。

「!!!]

私はあまりの恐怖に走って家に帰りました。

でも親にどう説明したらいいのかも分からないし、何となく口にしてはいけない事のように思え誰にも話す事無く次の日を迎えました。

・・・時間は瞬く間に過ぎていき下校時間になります。

いつもなら終わった喜びと何して遊ぼうかと幸せな気持ちでいっぱいなのですが、その時は違いました。

絶望的なまでの恐怖。

当時、私の通学路は途中までは友達と一緒なのですが残り3分の1は一人で、しかも遠回りでも違う道があれば良かったのですが一人になってからは一本道でその道を通るしかありませんでした。

凄まじいまでの恐怖を抱えながら、ついに友達と別れ一人で歩きだしたのですがいつもなら何も考えずただ下を向いていたのですが今は違います。

恐怖で前を向いて歩く事が出来ず、じっと下を見ながら歩いていました。

・・・・居る。

同じ場所に同じ格好でその女の人は佇んでいました。

あまりの怖さに叫び声もだせず、前を直視する事も出来なかった私は何も起こらない様にとただただ祈りながら静かに横を通り過ぎ家へと急ぎました。

無事家に着き、その後も何事も起こりませんでした。

ホッとはしたもののやはり怖いものは怖い。

次の日からも帰りは友達と別れた後は前を見る事はなくひたすら下を見ながら歩く日々でした。

・・・ワンピースの女の人は晴れの日も雨の日も毎日同じ場所に佇んでいました。

そんなある日、ふと思い出したのです。

ワンピースに見覚えがあることを。

何処で誰が着ていたのかまではどうしても思い出せないのですが、私は確かにそのワンピースを見た事がありました。

思い出すと気になってしかたありません。

意を決し、心を決めた私は帰りの通学路へと歩みを進めて行きました。

そしてあの場所に着くとそこには裏切る事無くあの女の人が佇んでいました。

その時私はやはり前を見て行く勇気はなく下を向きながら歩いていました。

なので全身を見るために勇気を振り絞り早まる鼓動を抑えゆっくりと顔を上げて行きました。

「あれ?」

いつもと違う異変を感じました。

綺麗な花柄のワンピースが所々やぶけ、汚れていたのです。

それでもゆっくりと顔を上げていくと、前は膝から上を見ようとしたら消えてしまっていたのに今日は腰、胸へと視線を上げても消える事はありませんでした。

そしてついに顎の所まで視線が上がってきました。

・・・・深く深呼吸。

私は今まで走った事が無いだろうと思う位の速さで走って家に帰りました。

そしてご飯も食べず自分の部屋に行き布団を被りただ震えていました。

・・・女の人の顔は無残にもズタズタに切り裂かれ血が滴っており、それは言葉にできるような状態ではなく、とても酷いものでした。

子供の私にはあまりの光景にショックが大きく、次の日から高熱を出し一週間近く寝込んでしまいました。

そしてだいぶ熱が下がったある日、夢を見たのです。

・・・それはとても幸せな夢でした。

昔近所に居た大好きなお姉さんに遊んで貰っている夢でした。

お姉さんはお気に入りの綺麗な花柄のワンピースを着て幸せそうに笑っていました。

目が覚めると私は泣いていました。

起きた後もしばらくは涙が止まりませんでした。

私は一人っ子で、そのお姉さんが物凄く大好きで本当の姉の様に慕っていました。

でもそのお姉さんはある日突然通り魔に襲われ若い命を落としたのです。

私が泣いていると、部屋に入ってきた母は優しく抱きしめ今までの出来事と夢の話を何も言わず全部聞いてくれました。

そして何故か母も泣いていました。

「何で泣いてるの?」

私が聞くと母は驚くべき事を話し出したのです。

私が熱で学校を休んでいた時に私の通っている通学路で女の子が通り魔に襲われるという事件があり、犯人はちょうどその時に通りかかった人によって捕まったそうです。

襲われた女の子は命はとりとめたものの重症を負い意識不明で入院しているそうです。

母はきっとお姉さんが私を助けようとその道を通らないようにって必死に訴えていたんだよって泣きながら言っていました。

私もお姉さんが助けてくれたんだって今でも信じています。

その後、すっかり熱も下がり体調も万全になってから母と二人でお姉さんのお墓参りに行き御礼を言いました。

只、今でも早くお姉さんに気付く事が出来なかった事が悔しく思われます。

もっと早く気付ければもっとお姉さんと話ができたのに・・・

この事を思い出すと今でも涙が込み上げてきます。

ちなみにこの話には後日談がありまして、噂で聞いたのですが、あの道を通っていた女の子が皆お姉さんの事を見ており、私は優しいお姉さんは皆を救いたくて皆の前に姿を見せていたんだとそう思っています。

大好きな優しかったお姉さんが夢で見たように幸せに笑ってくれている事を祈りつつ・・・

怖くない話にここまでお付き合いくださりありがとうございました。

皆様の心の中に少しでもお姉さんの事が残ってくれれば幸いに思います・・・。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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