中編3
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気味の悪い女【完結】

気味の悪い女③の続き。

先に今回で一応完結だが

期待に添えない結末だったら本当に申し訳ない。

それじゃあ始めます。

テーブルにピザとポテトを並べ、冷蔵庫からコーラを取り出した。

バラエティー番組を見ながらピザを食っていると、一連の恐怖体験を忘れる事が出来た。

腹も一杯になり、俺は風呂を沸かした。

15分後、もうそろそろお湯がたまったと思い、風呂場を見に行った。

いい感じに沸いていたので、バブ(ゆずの香り)を入れて風呂に浸かった。

至福の時間だった。

一旦湯舟から上がり、頭と体を洗い、再び湯舟に浸かった。

湯舟に浸かりながら、何気なく排水溝を見た時だ。

そこには、明らかに俺のものではない、めちゃくちゃ長い髪の毛があった。

その当時、俺には彼女はいなかったし、たまに友達が泊まりに来たが、こんなにロン毛の奴はいない。

俺は愕然とした。

この部屋に【あいつ】が来ていたのか!?

どう考えてもあの女しかいなかった。

1番安全だと思っていた自分の部屋が、非日常の空間になってしまった。

外ならまだ逃げれるが、この部屋にあいつがいる事を想像すると吐き気がした。

鳥肌も半端じゃなかった。

風呂場の扉を一枚隔てた空間が異界の様にさえ思えた。

期待を裏切らないと言わんばかりに次の瞬間、部屋の中から

「ドッドッドッ」

と言う音がした。

この場所からじゃ姿こそ見えないが、あの女が部屋の壁に頭を打ち付けている姿が脳裏に浮かんだ。

「ドッドッドッ」

という音は時間の経過と共に、

「ドドドドドッ!」

という音に変わった。

狂った様な早さで壁を打ちつけているんだろう…。

逃げる術を失った俺は案外、冷静だった。

連日の体験に恐怖に対する免疫が出来ていたのかも知れない。

こうなれば我慢比べだと思った。

「ドドドドド!」

と言う音は尚も続いている。

我慢比べをしようと決心した俺はこんな状況の中で、「そんなに壁に頭を打ちつけたらお隣りさんに迷惑だろ!」と、馬鹿な事を考える余裕すらあった。

風呂場に時計はなかったが、多分3時間位経ったと思う。

突然、音が止んだ。

俺は勝ったと思った。

でも甘かった。

次の瞬間、女は風呂場の磨りガラスの前に立っていた。

そして今度は、磨りガラスに頭を打ちつけ始めた。

数十㎝先に女がいる。

薄い水色のワンピースが確認出来た。

意味があったのかわからないが、俺はシャワーを持ち、熱湯だけを出して磨りガラスに向かってかけ続けた。

それでも女は磨りガラスに頭を打ちつけてくる。

俺は必死だった。

お湯じゃ駄目だと思った俺は、何故か冷水に切り替えた。

すると、

「うぅぅ」と苦しむ様な声が聞こえた。

うまく説明出来ないが、その声は女にしては低く、喉だけで出している様な声だった。

冷たい水が有効と見た俺はシャワーで磨りガラスに向かってかけ続けた。

「うぅ、うっ、う~」

女は明らかに苦しそうだった。

「ドンッ!」

今までで1番激しく女が頭を打ちつけてきた。

そして顔を磨りガラスに押し付けてきた。

磨りガラス越しだから、よく見えなかったが、女の顔は傷だらけで、白目がない様に思えた。というか黒目が異常に大きかった。

そして…

「あ゛~」

と叫び声を上げたかと思うと、女は消えた。

俺は安堵のため息を付き、風呂場を出た。

脱衣所の足元には、あの女の着ていた薄い水色のワンピースが落ちていた。

直接触るのは嫌だったので、ゴム手袋をはめて、ゴミ袋にゴム手袋ごと捨てた。

俺は着替えて、ゴミ袋を持つと車をある場所に向かわせた。

ある場所とは、お寺だ。

(心霊スポットツアーでお世話になったお坊さんのお寺)

お坊さんと会うのは6年振りだったが、お坊さんは俺の事を覚えていてくれた。

そして

「またお前か!」

と俺を一喝したが、今回は俺に落ち度はないと説明すると納得してくれた。

お坊さんにワンピースを渡し、お礼を言うと、印を切り俺の背中を2回叩いた。

「これで十分じゃろ」

帰り際、このワンピースの持ち主の経緯を聞きたいかと言われたが、俺は断った。

なので今でも、何故あの気味の悪い女に付き纏われたかわからない。

以上で話は終わりです。仕様もない結末で申し訳ない。

でも皆は俺があの女に何故、付き纏われたと思う?

怖い話投稿:ホラーテラー 現役探偵さん  

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