中編3
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一周忌

幽霊とかは出てきません。

少し切なく悲しい話です。

母親に聞いた話です。

僕が5才の頃、家族で母方の実家に行った。

おばあちゃんの家の周りは結構な田舎で畑や山で囲まれたような場所だった。

民家もそこそこ建ち並び、すごく空気の美味しいとこだった。

墓参りや野菜の収穫も一段落を終え、おばあちゃんと母親とチビの僕を連れ3人で散歩していた。

家の近くに溜池みたいな所があり、道路に面していて約10メートル四方の深さは5メートルくらいあるらしく金魚や鯉が数匹泳いでいるのを見るのが好きだった俺は、いつものように覗き込んでいた。

結構大きめの加工された石?みたいなのが立てられていて、それに掴まりながら見るのが日課だったらしい。

するとその石が根元からピキピキ…バキッと折れ僕に倒れかかってきた。

おばあちゃんが咄嗟に僕を引っ張りなんとか擦り傷程度で助かり石はそのまま池に沈んでいった。

おばあちゃんが引っ張ってくれてなかったら僕はそのまま石と一緒に池に落ちていたかもしれない。

母親はその一瞬の出来事になすすべもなくぐったりと腰を抜かしてしまったらしい。

おばあちゃんは「よかった〜…○○ちゃんごめんねぇ〜…怖かったね〜…」

と泣きじゃくる僕の頭を撫でてくれてたみたいだ。

母親が後でおばあちゃんに「あんな立派な石が倒れるなんて思いもよらんかったわぁ。」

と言っているとおばあちゃんは

「たぶん呼ばれたんやろ。すっかり忘れてたわ。」

母親「なにを?」

おばあちゃん「AさんとこのB君の命日や」

母親「誰それ?」

おばあちゃんの話をまとめると近所でも評判のよかったAという一家の長男B君は、去年小学校の入学式を控えておりランドセルを買ってもらった。

嬉しくて嬉しくてそのランドセルを背負って近所の人達に自慢しに行った。

もちろんうちのおばあちゃん家にも見せにきてくれたらしく、とても嬉しそうな姿が微笑ましく思えた。

しかしその夜Aさんが慌てて家にきた。

「Bはきてませんか?まだ帰ってきてないんです!」

と言う内容で、来たけどランドセル見せてすぐ帰った事を伝えた。

そこから近所の人達で探し、暫くすると溜池でランドセルと靴が片方発見された。

しかし肝心のB君は見つからず長い棒で池をくまなく探した。

山や畑や村の人総出で捜索したがやはり池に沈んでいる可能性が高いと言うことで水を抜いてみると底でB君の変わり果てた遺体が発見された。

Aさん夫妻は崩れ落ち号泣しながらB君の名前を叫んでた。

葬儀の時には霊柩車で運ばれるB君を母親は泣き叫びながら追いかけようとしていた。大の大人4、5人でも抑え切れないくらい暴れ喪服もぐちゃぐちゃになり髪も振り乱し止められなかったの事。

あの形相は今でも忘れられへんと言っていた。

それから一応簡易ではあるが溜池に墓とは別に供養のため石碑みたいなものが立てられてんだって。

亡くなった日が丁度一年前で

「寂しかったんかもしれんねぇ。年が近いし友達が欲しかったんかもしれねぇ。」

少し切なく悲しくなる内容だった。

20年近くたった今では溜池の周りにも策が造られ石碑も新しく立てられている。

行く度にお参りをさせてもらっている。

怖い話投稿:ホラーテラー To 011さん  

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