中編3
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理解不能

人間幽霊ひっくるめて、何考えてるのか全く理解不能な奴ってのはホント質(たち)が悪い。

リングや呪怨の怖さって、四谷怪談の怖さとは全く異質なもの、って気がする。

相手を怒らせるような事何もしていないのに情け容赦なく殺される。

通り魔殺人と同じ。

殺される側からしたら、これ程理不尽な殺され方はない。

(何で?何でなん!?)

薄れゆく意識の片隅で、ひたすら無念を訴えても、もう遅い。

運が悪かった・・・・ただそれだけ。

これは俺の従兄の話。

従兄は大学時代、合コンでひとりの女と知り合った。

女は看護婦で、容姿はそれ程でもなかったが明るくて妙に気が合ったという。

2、3回デートして女の住むワンルームマンションに招かれた。

従兄(以後K)が、女の部屋に初めて入った時の第一印象はというと

!!!!!!!!

何と、部屋中の壁という壁に神社のお札がベタベタ貼られていたというのだ。

「驚いた?あちこちの神社行ってお札集めるのが趣味なの」

(趣味って・・・・)

この時点でKのテンションは完全に底をついていた。

愛想笑いを浮かべながら、とりあえずそばにあった椅子に腰を下ろすが、頭の中は(もう帰りたい)という思いで一杯だったという。

「私が勤めてる病院大きいから、患者さんの死と向き合うことも多くって、魔除けの意味もあるんだけど」

(まよけ??)Kはまよけが魔除けだということに、すぐには気付かないくらい動揺していた。

相変わらずニコニコして、女に悪びれた様子は一切ない。

それが逆に怖かったという。

(いくら趣味でも・・・普通隠すだろ・・・・まともな女なら・・・・)

ふと本棚を見渡したKは更にぎょっとした。

呪いの藁人形、だの、黒魔術だの、そんなのがギッシリ高さを合わせて整然と並んでいたというのだ。

オカルトには殆ど関心ないKだったが【藁人形】も【黒魔術】も一般常識レベルで知っていた。

女が、ごく自然な感じで話す。

「私、変わってるってよく言われる。K君はホラーに興味ないのお?」

「へ〜」Kは適当に相槌を打ちながら、女と別れる口実を懸命に考え続けた。

何とか怒らせないように、少なくとも後腐れなく別れなければならない。

俺と同じで霊感など全くないKだが、空気が妙に淀んで重苦しく、あちこちから視線を感じていたという。

「お腹空いてないぃ〜?何か作ったげようかぁ〜?」

甘えた声で尋ねる女に「いや・・・大丈夫」と答えながら、(こんな、気味の悪い部屋でこの女、エッチも平気なんだろか・・・・)ふとそんな思いが頭ん中をよぎった。

そのお陰か、Kは一瞬、冷静さを取り戻せたという。

同時にある考えが閃いた。

突如女の前に土下座して、Kは涙声(意識して)で叫んだ。

「○○さん、ごめん!俺、実は子供の頃から男にしか興味なくて、何とか自分を変えたくて、彼女できれば変われるかな、なんて思って・・・・ホントごめんなさい!やっぱり無理みたいだ!!」

明るかった女の顔が瞬時に変わった。

女は立ち上がると、怖い目でKを見下ろし叫んだという。

「汚らわしい!さっさと出てって!」

「ホンっとにごめん!」

Kはそう叫ぶと、まさに脱兎のごとく部屋を飛び出した。

マンションを出る時には涙ぐんでいたという。

もちろん安堵の涙である。

「女に見られるとまずいから、卒業して引っ越すまでは彼女作れなかったな」

Kは笑って更にこう言った。

「マンション行くまでにエッチしてたらまじヤバかったぜ」

怖い話投稿:ホラーテラー 蜥蜴のしっぽさん  

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