中編3
  • 表示切替
  • 使い方

いじめの末路

精神科の専門医をしているFさん。

「子供の患者だったんだが、あの時も大変だった」

その少年は母親に連れられて、落ち着かない目をしてやってきた。

「殺される…殺される…」

時折そんなことを呟いては、頭を抱えて叫びだす始末。

よくある被害妄想の類だろうか…?

そうFさんは考えながら、母親に詳しい状況を教えてもらった。

「いじめ…ですか」

少年が通う学校のクラスで、ある事件が起こったのが発端らしい。

学校の屋上から、そのクラスの少女が飛び降り自殺を起こした。

即死だった。

その自殺の原因に、どうやらクラス内でのいじめがあったという噂だった。

果たして、少年もこの問題に関与していたのか。

それに関しては、母親も詳しくは知らない様子だった。

まず少年にカウンセリングを行い、その原因となるものを調べ上げていく。

心を開かせながら話していくと、次第に問題の裏側ともいえる事が露わになってきた。

どうやら少年は、少女に対していじめを繰り返していたようで…

その異変は、少女が飛び降り自殺をした後から起こり始めたようだ。

「死ね…」

「死ね…」

「死ね…」

ある日、突然クラスの生徒全員が少年を一斉に見つめながら呟いてきた。

みな虚ろな目をしており、異常な雰囲気に耐えられず教室を飛び出した。

「おい、どこに行くんだ」

家に帰ろうとすると、途中で担任の教師に止められた。

「こっちへ来い」

そう言って、腕を強引に引っ張りながらある場所へ連れて行かれた。

そこは屋上だった。

「さあ、行きなさい」

屋上のフェンス際へと無理やり押しやる。

恐ろしくなり、必死で抵抗して何とか逃げ出した。

それからというもの、奇妙な現象が何度となく少年を襲った。

夜眠っていると枕元に父と母が立っており、二人でブツブツと何か呟いている。

「死ねばいいのに…」

「死ねばいいのに…」

父は金槌、母は包丁をそれぞれ手に持っていた。

慌てて逃げるように家から飛び出した。

しばらくして家に帰ると、何事もなかったように父と母は眠っていた。

翌朝になって聞いてみても、まるで覚えていないようだった。

少年の口から語られる奇妙な体験の数々…

それは果たして精神の患いに因るものなのか、それとも…

Fさんが対処法を考えていると、ふと突然に意識を失った。

気がつくと目の前で少年が震えており、Fさんの手にはとがった鉛筆が握られていた。

「殺さないで、殺さないで…」

少年は泣きじゃくりながら、Fさんに懇願していた。

「これは一体…」

Fさんにはまるで記憶がなかった。

(これは本当にマズいかもしれない…)

恐がる少年に安心させようと手を伸ばそうとしたが、駆け出して行ってしまった。

「ちょっと待ちなさい!」

少年を止めようとする受付係の声が聞こえた。

「ギャーーーーっ!」

ものすごい悲鳴が響き渡った。

慌ててその場に駆けつけると、そこにはうずくまる少年と立ち尽くす受付係の姿。

少年の腹からはポタポタと血が滴り落ちていた。

受付係の女性の手にはカッターナイフが握られていた。

「死ね…死ね…」

女性は虚ろな目つきで少年に向かって呟いている。

Fさんが女性を引き止めると、やがて落ち着き正気に戻った。

うずくまる少年と、手にした血まみれのカッターを見て悲鳴を上げていた。

その後すぐ救急車が呼ばれ、少年は大病院へと運ばれていった。

そして二度と、少年が戻ってくることはなかった。

大病院の屋上から飛び降りて、即死だった。

精神の衰弱による自殺ということで処理されたが、実際のところは定かではなかった。

遺書などは見つからず、誰かに突き落とされたという噂もにわかに流れていた。

しかし何の根拠もなく、結局は病院側がうやむやにするかのように自殺として処理されたのだった。

…いくら出来る限りの対処を施しても、患者が自殺をしてしまう事は少なからずある。

しかし、今回のケースは決して違うのだとFさんは神妙に語っていた。

今でもたまに、怯えた少年の姿が夢に出てくることがあるという。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
35500
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ