短編2
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自己責任で、(一)

 十年前、私が中学だった頃、一人の友達を亡くしました。表向きの原因は精神病でしたが、実際はある奴等に憑依されたからです。私にとっては忘れてしまいたい記憶の一つですが、先日古い友人と話す機会があり、あの時の事を、まざまざと思い出してしまいました。

 此処で、文章にする事で少し客観的になり恐怖を忘れられると思いますので、綴ります。私達、(A・B・C・D・私)は、皆家業を継ぐ事になっていて、高校受験組を横目に暇を持て余していました。学校も、私達がサボったりするのは、受験組の邪魔にならなくて良いと考えていた為、体育祭後は朝学校に出て来さえすれば、後は抜け出しても滅多に怒られる事はありませんでした。

 ある日、友人AとBが、近所の屋敷の話を聞いて来ました。改築したばかりの家が、持ち主が首を吊って自殺して一家は離散、空き家になってると言うのです。サボった後の溜まり場の確保に苦労していた私達は、そこなら酒タバコが思う存分できると考え、翌日、直ぐに昼から学校を抜けて行きました。

 外から様子の分からない様な、とても立派なお屋敷で、こんな所に入って良いのだろうかと、少し躊躇いましたが、A、Bは『大丈夫』などと連発しながら、どんどん中に入って行きます。

 既に調べを付けていたのか、勝手口が空いていました。書斎の様な所に入り、窓から顔を出さない様にして、こそこそ酒盛りを始めました。でも、大声が出せない事から直ぐに飽きて来て、五人で家捜しを始めました。すると、Cが『あれ、何や』と、今いる部屋の壁の上の方に気が付きました。

 壁の上部に、学校の音楽室や体育館の放送室の様な小さな窓が、二つ付いているのです。

私「こっちも部屋か……」

 よく見ると壁の此方側にはドアがあり、ドアは、此方の方からは本棚で塞がれていました。肩車すると、左上の方の窓は手で開きました。今思うと、その窓から若干悪臭が漂っている事に、その時、疑問を持つべきでした。それでもその時の、こっそり酒を飲みたいという願望には勝てず、無理矢理窓から部屋に入ってしまったのです。

 部屋は黴、埃と、饐えた様な臭いが漂っています。雨漏りしているのか、じめっとしていました。部屋は音楽室と言える様なものではありませんでしたが、壁に手作りで防音材の様なものが貼ってあり、その上から壁紙が貼ってある事は分かりました。湿気で、壁紙は固くなっていました。

 

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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