中編6
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その日は朝から憂鬱でした。

窓を開ければ昨夜からの雨、その上起きてから頭が痛い。

(会社…休みたい…。)

そんな事を思いながら、自然と体はバスルームへ…。

すこし熱めのシャワーを浴び、火照ったまま脱衣場で直ぐにタオルで体を拭く。

髪を乾かしながら、歯を磨き会社に行く準備をする。

ハァ〜…。やはりいつもの変わらぬ朝だ!

7:30。

家を出て最寄りの駅まで徒歩8分。雨のせいか10分弱、かかった。

ギリで電車には乗れ、混雑の中に私はいた。

列車と列車の繋ぎ目に身を置きそのドア窓からふと隣の車両に目をやると、見た事のあるコート。

(懐かしい!踊る大捜査線の織田裕二!?…そう言えばあの人にプレゼントしたっけ!)

あの人とは大学時代に同じサークルで付き合っていた彼氏。

彼は踊る大捜査線のファンで青島刑事のコートを欲しがったので誕生日にあげました。

その後ろ姿を見ているうち、懐かしいと同時に似ているなぁと思っていた。

まさかと思いながらもチラチラ見てしまう私。

乗り換えの駅に着き、隣のホームにはすでに電車が到着。足早に乗り込み外を見ると階段の下にコートの人が目に入った。

電車はゆっくり走り出し、横を通り過ぎた時顔が見えました。うつむいていた顔は彼でした。

間違い無く、彼でした。

(こんな所で…でも、いつもの電車だけど…初めて見たな…。)

不思議に思いながらも、偶々だろうと一人納得して会社に向かった。

18:30。

今日は金曜日!

独身女の楽しみはこれからよ!………。

しかし、学生時代の友人は皆、結婚してる。

会社の同僚・後輩は婚活中で予約有り。

(ハァー。頭痛も治まってないし、何か美味しい物でも買って帰ろ!)

外に出ると相変わらずの雨。

18:55。

電車に乗り、乗り換えの駅まで約10分。

面倒なので今流行りの駅中での買い物に決定!

買い物の最中に懐かしい香り。

【ジバンシーのウルトラマリン?】

当日、貧乏学生のくせによく彼が付けていた香水。

朝の事もあり、私は直ぐ様辺りを見回し、(彼が居る?)そう感じてた。

しかし、彼は見当たりませんでした。

気持ちを入れ替え、未だに付けてる人もいるんだと思うようにした。

ワインといろんなお惣菜を買って帰りの電車に乗り、何気なく隣の車両を見るとあのコートが目に入った。

その姿は朝と同じようにうつむいたまま。

私は何故か側に行かなきゃと思い、次の駅で隣の車両に移る決心をしました。

車両に乗り込み人をかき分けて彼がいた場所に着くと……彼は居ませんでした。

(やっぱり見間違え…か?…居る訳…ないよなぁ。)

なんだか不思議な淋しさが込み上げてきました。

でも……するんです。……微かですが…ウルトラマリンの香り。

20:00。

ちょっと過ぎ、最寄りの駅に到着。

誰も居ない部屋に、「ただいま!」の挨拶。

台所に買った物を置いて、食器棚の脇にある電話FAXが点滅しているのに気付き留守録を確認。

4件、入っていた。

「誰からだろう?」

ピィーッ

大学時代の友人、Aだった。直ぐに連絡してとの事。

お惣菜を盛る皿を出しながら聞いていた。

ピィーッ・A

ピィーッ・A

ピィーッ・A

4件目が終わり、(以上です。)と思った時でした。

ピィーッ・・・・(ゴメンね……ありがとう…。)

!!!彼の声!!!

小さく囁くような彼の声!

「うちの…番号…知らない筈。それに留守録は4件のでしょ?」

プルルルルルル。

ドキッ!電話が鳴り、恐る恐る出ました。

「はっ…はい。〇〇です。」

「あんた!いい加減、携帯繋がるようにしときなよ!緊急事態なんだから!」

Aだった。凄い剣幕で怒られた。

無理もない。私はあまり携帯に依存性は無く、着信音もマナーモードにしてる為にバックに入れたら最後、気が付くまで見ない。

友人からは【不携帯電話】と呼ばれている。

私はAに、

「ねぇ?T君(元彼)にうちの番号、教えた?」

すると驚きながら、

「なっ、なんでそんな事言うの!?」

「今帰ったばかりで留守録聞いてたら、中にT君の声が…。」

話終わらないうちに、

「そんな訳ない!」

Aは急に泣き出しながら、

「T君、さっき、6時過ぎに亡くなった…。朝に家で倒れて……脳卒中だって…うちの旦那(大学時代の仲間)も病院に駆け付けたけど…」

私もAもそこからは言葉になりませんでした。

へたり込んでいる私に、

「一応、T君の家と病院の地図と住所、FAXしたけど…また、連絡する。」

そう言うとAは電話を切った。

再びAから電話がきたのは、23:00を過ぎた頃でした。

翌日、雨の降る中、仲間で集まりお通夜に向かいました。

ご焼香を終え、皆で故人を偲ぶ場で昨日の出来事を話すと皆は

「最後に逢いたかったんじゃないかなあ。」

「2人の別れはアイツが身を引いた形だもんな。」

そう……私が彼と別れた理由が、私は卒業・就職が決まっていたのに対し、彼は留年してしまった。

仕事が始まり、てんてこ舞いの私はいつも彼にあたっていた。

最初は我慢していたらしいが、そのうち彼は徐々に離れて行き、別れを告げられた。

当時は嫌いになったんだ!と思っていたが後々、友人に聞くと彼自身が側にいたら私がダメになる。私は仕事で手一杯だから余裕が無くなってしまい、どうにかなる前に別れる。

そう言ってたそうです。私の性格を知ってる彼らしい選択。一つの事しか出来ない私を労っての事だったとわかりました。

その時は強がりましたが、何年も起つと彼の優しさに気が付きました。

帰ろうとした時でした。

彼の奥様が、

「〇〇さん…ですよね…。」

「ハイ!そうです!」

「あの……これなんですが…。」

渡された物は封筒、それもすこし汚れていました。

「彼ね…バックの中に…入っていました。…結構、前に書いた物と…思うのですが…。」

しっかり封してありました。

「あの人、いつか渡せればと…思っていたのでしょう……いつでも…渡せるように………持っていたんだと…思います。」

奥様は涙ながらに封筒を渡してくれました。

裏には私のフルネームが書いてありました。

家に帰ってから封筒を開け、中には一通の手紙と薄い金版でできた御守りが入ってました。

『〇〇へ

言葉には出せなかったが、今までありがとう。

それと……ゴメン…。

俺、弱く情けない人間だけど、これからは頑張るよ。

貴女に出逢えて本当によかった。

誕生日のお返し、こんな物で悪いけど、貰ってください。財布に入れたらいいらしいよ!

それじゃ!また、何処かで…!

本当に、本当に、ありがとう!』

涙が溢れました。涙が止まりませんでした。簡単に書いてありましたが凄く彼の胸のうちが見えました。

今更ですが彼と過ごした日々が楽しく、また眩しいかったという事を思い起こしてくれました。

窓を開けると……雨はやんでいました。

P/S

最後まて読んで頂いた方々、下手な文章で申し訳ありません。

あの不思議な出来事を思い出すと、当時よく聞いていた【中森明菜】のアルバム【クリムゾン】に入っている竹内まりあ作・【駅】の詞があまりにも似ていたので(自分自身はそんな風に考えてしまいました。)この題名にしました。

彼も私がこのアルバムを気にいっていたのを知っていたので、ええカッコしいの彼がその場面を作ったのかなと勝手に解釈しました。

読んで頂き、有り難うございました。

怖い話投稿:ホラーテラー あらふぉーさん  

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