悩ましい。
早く死んでしまいたいといつの日からか彼は毎日考えるようになっていた…
何をしても上手く行かずに苛々を募らせる日々。
そして、『死』という単語に敏感に反応するようになっていく。
今日も何をするでもなく、ただ家の中でテレビを眺めていた。
番組は夜のニュースだった。
『では、次のニュースです。昨日発見された惨殺体の身元が判明したと、警察の捜査当局が発表しました………』
惨殺ねぇ。んな殺され方されるなんて、きっと死んで当然な事してたんだろ…
『………H.Y(被害者)』
H.Y、ろくでもねぇことしたんだろ?どーせ…
『H.Y』
何だ?また被害者の名前繰り返した?
『H.Y』
は?な、何だ!?
ニュースを聞いてから5分もしないうちに、彼の耳に入ってくる音は惨殺体の被害者の名前だけになっていた…
既にニュースは別のトピックになっていた。
しかし、キャスターの口から発せられる単語は、やはり惨殺体の被害者の名前。
真面目な顔つきで、時には笑顔で、しかし聞こえてくる声のトーンは低く重い。
や、やめろ!
彼が1人叫んだとき、
『ではここで、H.Yさんから一言いただきましょう。』
はぁ!?
『……って。馬鹿にして…なら変わりに私の苦しみを味わいなさいよ…』
う、うわぁぁ!!!!
『では次のニュースです。昨日発見された惨殺体の身元が判明したと、警察の捜査当局が発表しました。被害者の名前は………』
キャスターは彼の名を淡々と読みあげた。
そのニュースを食い入る様に見ていた女が口元に笑みを浮かべ、
なぁんだ。あなた初めから死にたかったんだ。
だったら、良かったじゃない。私に感謝してね…
女はそう呟き、テレビの電源を切った。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話