中編6
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じゃあ、だぁれ?

おかしいな、と思ったのは電気を消してしばらくたったころ。ベッドの下の声がやけに低く男のようで、違和感を感じた。

この部屋には3人の人間がいる。ベッドにアキ(仮名)が寝ていて隣の折りたたみベッドにいるのは私。そしてベッドの下にもう1人。あぁ大丈夫幽霊とかじゃないから。私の友達のミサ(仮名)だ。

何故ミサがベッドの下にいるかを説明するには事を少し遡る。

皆さんは都市伝説「ベッドの下の男」を知っているだろうか。

女の子2人が部屋に居て、1人がコンビニに行こうと誘う。もう1人はあまり乗り気ではないが友人について行って外へでる。

しかしあまりにも友人が焦っているので理由を問うと

ベッドの下に刃物を持った男がいたのだと言う。

そういうお話だ。

初めてこの話を聞いた(正しくはサイトで見た)時は怖くて怖くてしょうがなかった。

思わず部屋を見渡し、見えない男に恐怖した。

というより、私の脳裏にはすでにニタニタ笑いながらベッドの下で私を殺すチャンスを狙っている男がいるのだ。 しばらくの間私は見えぬ男と葛藤しなければならなかった。

それから数週間。

恐怖は薄れ安心を取り戻した私の頭の中は、恐怖の代わりに誰かを自分のように驚かせたいという欲望が溢れかえっていた。

私はほぼ無い頭をフル回転してある計画を思いついた。

早速計画進行するべく友達のアキにメールを送った。アキとは小学校からの友達で当時はもう中学生になっていたが未だに仲が良かった。

(今度うちに泊まりに来ない?)

数分後アキからOKとのメールが届いた。

よっしゃ!と思い次に別の友達に電話をした。

「もしもしミサ?ちょっと面白いことしない?」

私が立てた計画はこうだ。

アキがうちに泊まりにやって来る。その前にミサがうちにやって来てベッドの下に隠れる。

そして暗くなってからベッドの下で音を立てアキを驚かせる…そういうものだった。

昔からイタズラ好きだったミサはすぐに話に乗ってきた。

これで準備完了!

私は当日が待ち遠しくて仕方がなかった。

そして当日。

私とアキはパジャマに着替え、あとはもう寝るだけの状態だ。

ベッドの下にはすでにミサが準備を整えて待っている…

しかし女の子だからガールズトークが炸裂してしまい、ペラペラ喋るアキを横目に私は早く喋り終われ!とイライラしていた。

「でね…」

「んーアキ、もうそろそろ寝ない?私眠たいなあ」

わざとらしく欠伸をしてみるとアキは笑いながら了承してくれた。

私の心の中ではいよいよだ!とアキの見せる可愛らしい笑いとは違いイタズラを楽しむ醜悪な笑いを浮かべる私がそこらじゅうで跳ねていた。

電気を消し、毛布を被る。季節はもう3月で窓には水滴が沢山付いていた。

ワクワクしながらベッドの下の様子を伺う。

っていうかよくアキがミサに気がつかなかったなぁ…天然だからな、アキ。

…あれ?ベッドの下静かだな…まさか寝てんじゃないかと思い始めたとたん、ベッドの下で荒い息遣いが聞こえた。

おぉ、ミサなかなかうまいな。関心していると隣のアキがもぞもぞ動くのが見えた。

私は出来るだけ怖がっているような声で言った。

「アキ…なんか変な音、しない?」

「へ?…さぁ」

アキの眠そうな声に少しかちんときた。

さっきはあんなにベラベラ喋ってたくせに…

しかも「さぁ」って、鈍感だなぁ。

下のミサも気づいてもらえてないことを察知したのか息遣いはさらに荒くなり、足を打ちつけるような音が聞こえてきた。唸るような声もする。

しかしアキは全く気づかい。もう!

「ほら!聞こえてんじゃん!おじさんみたいな…」

あれ?

アキこんなに低かったっけ、声。

う゛ぅう゛ぅう゛ぅ

聞こえてくる唸り声は明らかに正常な女の子の声じゃない。

もしかしたらミサ風邪引いてるの?

アキは気づかないし、ミサが風邪引いてるなら残念だけど作戦は断念だなぁって思ってアキに気づかれないようにベッドの下のミサに声をかける。

「ミサ~?風邪引いてるの、なら止めよう?」

返事はない。

「ミサ?ねぇ!いるんでしょ!」

返事はない。

「ねぇ!」

イラついてきて大声になってしまっていた。

そしてふと、気づいた。

何でこんな大声でアキは起きないのだろう。

「アキ…?」

唸り声はいつの間にか止んでいる。

アキは動かない。

ガンッ!

「ひっ!」

ベッドの下から蹴り上げられた。

かなりの力だ。

蹴る!蹴る!蹴る!

さっきから私のベッドはもの凄い勢いで蹴られ続けている。

だいたい何でミサは私のベッドの下にいるのだろう。

静かな部屋に激しい音が鳴り響いていて、それが私の恐怖を増大させていった。

「ひ、ぁ、やめてよ…」

情けないことに掠れるような声しかでない。

ミサじゃないミサじゃないミサじゃない!

この下にいるのはミサじゃない!

明らかに女の子の力ではない。ベッドは右左に大きく跳ねて生き物のようだ。やめてやめてやめて!

ミサは?

頭の中で声がした。

ミサは?ミサはどこにいったの!?

探したいがベッドの下は見えない。というより凄い勢いでベッドが揺れていて動けない。

まさかベッドの下の男は本当にいて、ミサ殺されちゃった?私もしぬ?

アキは?

ばっとアキのいるベッドを見た。アキはまだ動かない。

何で動かないの?

私の体は冬だというのにあせだらけで、顔はきっと涙でぐちゃぐちゃだと思う。

どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!!

そのとき、ベッドが止まった。動かない。

心臓の音だけが部屋に響く。あと私の荒い息。

その均衡は鈍い音ですぐ崩れた。

ずるずる、どしゃ。

ずずっずずずず

怖い

すぐ隣で、音がする。

ゆっくり、ゆっくり首を左に向ける。アキのベッドを見る。

そのとき私は見た。

アキに絡みつく青白い手。ベッドから落ちていくアキ。

顔が見えなくなって

あとは一気に胴体がずり落ち、足の先すら見えなくなった。

ずるずる移動する音が、ベッドの下から聞こえる。だんだん私のベッドの近くに近づいてくる。

私は毛布にくるまり耳を塞いだ。

聞きたくない!でも音は確実に私のベッドの下へ…

ずるず、ず、ず、ず

アキが死ぬ。アキはタスカラナイ。タスカラナイタスカラナイタスカラナイタスカラナイ

「す…け、て」

ぎょっとした。ベッドの下で声が聞こえる。

震えた…アキの声。

「ねぇ助けてくれないの?起きてるんでしょう!怖いよ!怖いよ!助けてよ!ベッドの下にいるんだよ!ねぇ、ベッドの下に、あたしと、いるんだよ!怖い!痛い!やめて!痛い痛い痛い痛い痛い痛いよ!ああ゛ぁあぁ゛」

言葉に表せないぐらいの悲鳴が耳に届く。

「  」

アキが最後に呟いた。

その言葉に背筋が凍った。

気がつけば窓から優しい光が差していて、

フローリングの上に飛び散った血が綺麗なぐらいに光を反射してキラキラ輝いていた。

恐怖のあまり私は叫びだした。ただ血が広がっているだけではなく、その血で文字が形どられていたのだから

     い

     っ

     た

     ら

     こ

     ろ

     す

そして頭の中にはアキの死に間際の声がリピートされる。

「ミサもお前も許さない」

ベッドの下にいたのはやっぱりミサだった。

ミサにアキは殺されたのだ。

あたかもベッドの下の男が殺したように装いたかったのか、何故アキは殺して私を生かしているのかはわからない。

もしかしたら私に罪をなすりつけた?

私が話を持ちかけた、あの時からミサはアキを殺すつもりだったのだろうか。

そして私の部屋の扉は開かれた。

あれからだいぶ時間が経ちました。

私は犯人にされてしまいましたが未成年ということで逮捕されませんでした。

本当のことを言いたかったけど、将来ミサに殺されるかと思うと、警察に本当のことは言えませんでした。

ミサは死にました。

ベッドの下で変死していたそうです。

何でアキを殺したのかは未だ分からぬままです。

でもこれで私はミサに殺される恐怖に怯えなくてすみます。

こわかったんですよ?

ベッドの下にミサがいるんじゃないかって。

しばらくは眠れませんでした。

じゃあ

今、ベッドの下にいるのはだあれ?

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名子さん  

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