中編5
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永遠の愛

その日は、とてつもない暑さの日だった。

三十歳、サラリーマンのCさんは、そんな暑さのなかでもスーツを身に纏い取引先へと向かっていた。

Cさんは、今にも倒れてしまいそうだった。家族のために仕事をしないと、その気持ちだけがCさんを動かしていた。だが、とうとうCさんは暑さの前に倒れてしまった。

懐かしい。誰かが俺を呼んでる。

「...ですか、起きて下さい。大丈夫ですか?。」

「ぅう、こ、ここは?。」

気がつくと、公園のベンチだった。

「あ!、よかった、やっと起きてくれた。」

「あの..私なんで..」

「後ろを歩いていたら急に倒れたので、とりあえず日陰のあるここに運んできたんですけど。...

何か飲みますか?。」

気を失う前まで歩いていた道が、そこに見えた。

だいぶ意識がはっきりしてくると、そこにいる女性の顔がしっかりと見えてきた。

どこかで見たことのある、いや、絶対に見たことのある顔だった。

「あの、何か?。」

思わず見入ってしまった。

「あっ、す、すいません。ご迷惑をおかけしたようで。あの..お礼になにかしたいので、お名前か電話番号をおしえてくれませんか?。」

「お礼なんてそんな、当たり前の事をしただけです。」

「いや、このままでは私の気がすみません。せめて、名前だけでも。」

自分でもびっくりするぐらい積極的だった。何でかよくわからなかったが、この人の事を知りたいと、自然と思っていた。

「名前だけなら..アンドウ カオルと言います。」

「!!」

まさか...そんな..

それは、十五年前。

Cさんが、中学三年生のころ。Cさんが付き合っていた彼女がいた。その彼女は、ある日突然行方不明になってしまった。

その人の名前は安藤 薫。

ちょうど、今まえにいるアンドウ カオルが、十五歳ぐらいの姿だった。

「あのー、どうしたんですか。」

「えっ、あっ、な、何でもないです。また機会があったら...」

逃げるようにその場を立ち去った。

Cさんは、アンドウ カオルの事が、帰ってからもずっと気になっていた。

「あなた、どうしたの?」

「いや、別に大した事じゃないよ。」

自分には妻がいる。

(別にこれは浮気じゃないよな)

Cさんは自分にそう言い聞かせた。

次の日、Cさんは早めに家をでて、あの公園へいった。

そこに、彼女の姿はなかった。

(もうあえないのか...)

そう思った時だった。

「あれ?、もしかして昨日の...」

ふりかえると、アンドウ カオルがいた。

「こんな早くからどうしたんですか。」

「あの...あなたを探していたんです。」

「わたしを?。」

「ま、まだ昨日のお礼をしていません、いきなりで申し訳ないんですが、今日の夜、食事でもどうですか?、七時に私ここにいます。」

「そ、そんな。食事だなんて...」

彼女の頬が、少し赤くなったのがわかった。

「私、ここでまってます。」

そう言ってCさんは仕事へ向かった。

午後七時、Cさんは公園で彼女を待っていた。

うつむきながら、何時間でも彼女を待とうとおもっていた。

なぜここまでするのか、自分でもふしぎだった。

理屈ではわからないが、心が互いにひきつけあう感じがしていた。

「あの...」

顔をあげるとそこに彼女の姿があった。

今までの服装と違って、きれいな白いワンピース

を着ていた。

(ますますそっくりだな。)

十五歳の時付き合っていた安藤 薫も、同じ様なワンピースを着ていた。

「来てくれたんですね。」

「あの、こういうこと初めてなので...」

「とてもきれいです。」

「えっ!、あっありがとうございます。」

「それじゃあいきましょう。」

十五年前、安藤 薫と初めてデートした時も、こんな感じだった。

予約していた店につき、二人で食事を始めた。

最初は会話が少なかったが、次第に会話もはずんでいき互いに打ち解けあい、二人は楽しいひと時を過ごした。

それから二人は時間があればたびたび会うようになった。毎日午後七時に、Cさんが公園に行き、彼女がいればそのままどこかへ行き、いなければその日は帰る。

これが日課になっていた。

妻には、残業だといっていた。完璧な浮気だったが、そんなことはどうでもよかった。

会うたびに二人は、互いに惹かれあっていった。

Cさんは、自分が彼女に惹かれる理由が少しずつわかってきた。

Cさんは、今も昔も変わらず、安藤 薫を愛していた。当時、安藤 薫を愛していたCさんは、突如終わってしまった恋の続きを、いましているんだ、と感じていた。 

だが、今いるアンドウ カオルが、昔の安藤 薫と同一人物でないことはCさんはわかっていた。

もしかしたら安藤 薫はいきてたのかも、なんて事Cさんは、みじんも考えなかった。ここにどこにそんな根拠があるのか、それは、Cさんにしかわからないことだった。

「ねぇ、私のこと、愛してる?」

いつもの公園でかのじょはそう聞いてきた。

「どうしたんだよ、いきなり。」

「あなたには奥さんがいるでしょ。それでもわたしの事、愛してる?」

妻のことなんて、Cさんはもうどうでもよかった。

「ああ、愛してるよ」

Cさん自信をもって言った。

「...やっぱり」

「?」

「やっぱりあなたは、私の事を愛してくれていた。十五年前からかわらず。」

「何?」

「きずいてるでしょ、私が安藤 薫だってこと。」

「そんな...ばかな!!」

「わたしがここにいるはずないって?そうだよね。だってわたしは...」

「そうだ!あいつは俺が...殺した。」

十五年前、Cさんは安藤 薫を殺した。

いつものデートのとき、二人は口論になった。

Cさんが浮気をしているかもしれないというのが理由だった。しかしCさんは浮気などしておらず、もめあいになった結果、Cさんは近くに流れていた川へ彼女を突き落とした。彼女はあがってこず、そのままながされていった。

「すぐばれると思った、だけど、おまえの死体は見つからなくて、そのまま行方不明ってことのなった。だけどおれは、この手でおまえを殺したのを覚えてる!」

「そう。でね、私殺されたあともあなたのこと、考えてた。そしたら、ゆっくり、ゆっくり、体ができてきたの。」

Cさんの目には、十五年前の彼女の姿がうつっていた。

「私を愛しているんだよね、じゃあ、いっしょにきてよ。」

「え?」

「愛してるんでしょ、きてよ。」

ゆっくりと彼女が近づいてきた。

「ゆっ許してくれ!!」

「私、怒ってないよ。私たち愛し合ってるんでしょ、だからいっしょにきてよ。きてくれるよね」

次の日公園で男性の変死体が発見された。

まるで、誰かに抱きつかれるように死んでいたという。

怖い話投稿:ホラーテラー 青二才さん  

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