三人の男性にも途中で危険に遭う可能性が高いので、お経を唱えて準備を整えたために遅くなったそうです。
私は準備ができたので男を大病院に連れて行きますと医者に伝え、三人と共に男を車に運びます。
医者は移動先の病院の紹介と連絡をしてくれました。
病院を出ると、お寺に急行します。
車から降ろして本堂へ運び畳の上に男を寝かせると御住職様とお経を二時間程唱えました。
その間、男は喚いたり泣いたり「やめろーー!!」「殺すぞ!!」などと叫んだかと思うと気が狂ったように「アハハハハハハハ…」と声高らかに笑ったりします。
そのどれもが別人の声でした。
終わってみると男は意識を取り戻し、汗は引いて自力で起き上がることができました。
御住職様の説明では男の体に少なくとも十数体の生き霊が憑いた為に動けなくなったそうです。
最初は数体でしたが同じ恨みを持つ者との波長が合い数が増えました。
生き霊達は男を助けられたくない為に数体を私に憑かせ通話の邪魔を。
この事が縁で男は私に親しみをもって接してくるようになりました。
男は生まれてすぐに親に捨てられて施設で育ち色々と苦労してきたようです。
施設で育った者達同士は結束が固く、誰かが困れば必ず手を貸すというのが暗黙のルールだそうで、男は悪道に走った仲間に手を貸し、私と知り合って二年後に逮捕されました。
そのときに男は出所するまで、みなきの面倒をみてほしいと私にすがってきました。
他に頼める人がいなかったのです。
男の心情を察して、出所するまでという条件と出所後はどんな理由でも二度と犯罪に加担しないと約束をさせ、引き受けました。
私は出張が多いため、みなきもその都度転校し、仕事で帰宅時間も遅いので、より寂しい思いをさせないように子供タレントとして雑誌や広告モデルの活動をしています。
各地に移動しても養成スクールでレッスンを受けられ少しでも楽しみを持てるように、出所後お父さんとの生活資金ができるようにと考えていました。
いつしか、みなきは私をパパと呼ぶようになり私も娘と思い接しています。
そういう事情がありみなきは子供なりに、私に余計な気遣いをさせないように友人宅へは入らず外で待っているのです。 「迎えにくるの早かった?」
「いや丁度いいタイミングだったよ」
「へへへ♪」と嬉しそうに笑うみなきはネックレスのようなチェーンがついた古びた今では見かけないタイプの鍵を首にしていた。→4
怖い話投稿:ホラーテラー シルキーデイさん
作者怖話