中編4
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「マー坊」 2

事の発端は私が昔聞いたのと同じでした。

違ったのは、不良グループがマー坊の親指を切断してしまった後、すぐには逃げなかったこと。

マー坊が呪いと思われる痕跡を残していたこと。

マー坊の実家が神社だということです。(その神社は私の家の近くなので、非常に困惑しました・・・)

指を切ってしまった後、不良グループはマー坊を口止めさせるために脅したそうです。

「おめー、先公や警察にいったらどうなるかわかってんだろうな!」

そういう言葉を浴びせつつ、殴る蹴るといったことを執拗に繰り返したといいます。

マー坊は暴行が行われている間、ずっとブツブツ呟いていたそうです。

マー坊「………宜わく………申す」

「あぁ?何いってんだ、てめぇ!」

マー坊の様子に余計に苛立ちを募らせた不良グループの暴行はマー坊が気を失うまで続いたそうです。

そして第一発見者の生徒曰く、なかったと言われていた親指は事件直後技術室にあったらしいのです。

マー坊が首を吊った丁度真下…瓶に入れられて置かれていた…発見当時、マー坊から滴り落ちた体液でその親指入りのビンは満たされていたといいます。

ビンが置かれていた床にも血文字があったそうです。マー坊の体液で殆ど読めなくなっていましたが、

呪   訶

という2文字はかろうじて読めたといいます。

警察が現場に来るころには、中にあったはずの親指が忽然と消えていたそうです。

不良グループの指が腐り落ちるまでの詳細は、不良グループの1人だったものの、事件の日に技術室にはいかなかった男(以下Aとします)から広まりました。

マー坊が死んだことが発覚した日に、不良グループ達は集まって警察に捕まらないための相談をしていたそうです。

とにかく何を聞かれても「知らない」ということを確認して別れたそうです。

次の日、不良グループの1人が学校に来ませんでした。来ていた奴もなんか様子がおかしいのです。

来た奴の1人(以下Bとします)は左利きなのに右手でペンを持っています。

Aが「どうしたんだ?」と尋ねるとBは「左手に力が入らない……マー坊が…」と言って黙り込んでしまいました。

Aが「どうしたんだよ!」と問い詰めると、そいつは泣きそうな顔をして話し始めたそうです。

B『昨日の夜、別れた後に技術室に行った面子で、現場(技術室)を見に行ったんだ。お前は誘わなかったな…まぁ今更だけどあんま迷惑かけたくなかった。

何かさぁ~俺らが捕まる手掛かりになっちまう物が残ってないか、心配だったんだよ。

行ってみたらさ、もう技術室の中はビニールシートで覆われていて、手遅れ(鑑識が入った後)だったんだけどな。』

A『そりゃそうだろ、昨日色々やってたじゃん…』

B『あぁ、でも不安でしかたなかったんだ…

で、行ったんだけど技術室の電気がつかなくてさ。まぁ中庭の明かりが差し込んでたから様子は見れたんだけど。

見たわ…壁の文字…「呪ってやる」ってやつ。

まじまじ見てたら…怖いよな…警察なんて正直どうでもよくなってきてさ。

「帰るか…」って言ったら、皆も同じ気分だったらしくて入口の扉の方に振りかえったんだ。』

……………

そこでBがまた黙り込んだ。

A『なんか…あったんだな…』

B『扉の透かし窓に人影があった。明かりを背にしてるからとかじゃなくて…あれは…真っ黒な人だった。

化け物………いや…マー坊…

全身に強烈な悪寒が走った。CとD(一緒に行った仲間)は弾けるように扉から距離をとってた。

「あぁ!うわぁぁ!」

俺らパニックになってさ。Cは窓を割ろうと拳で殴りだして、Dはビニールシートを引っぺがして意味もなく振り回してた。

俺は暫く動けなくて…影から目が離せなかった。認めたくないけど…やっぱあれはマー坊だった…』

バリン!

『逃げんぞ!逃げんだよぉぉ!』

入り口とは反対側の窓を割った奴の掛け声で一斉に窓へと向かったよ。ガラスで肩や足が少々切れるのなんてどうでもいい。

大きくもない窓に身体をねじ込んで、次から次に必死で逃げたよ。学校裏手の土手の辺りまで。

そこではじめて後ろを振りかえった…マー坊は…いなかった。皆一瞬安心したんだけど…

『ぎぃあぁぁぁ!!!はぁぁぁ!!』

Cがいきなり絶叫して、その場でへたれこんだ。

『あぁぁ!もうなんだよぉぉ!どうしたんだよぉぉ!』

驚かすんじゃねーよって意味で頭にきて、Cに皆して掴みかかった。

『はー、はー、はー…』

呼吸が乱れ、大きく肩で息をするCは目を見開き、ダラダラと流れ落ちる汗

も気にせずに一点を見つめてた。

Cが見つめる先の砂利道の上に…

親指

皆の視線もそれに釘付けになった。

黒く変色しててドロドロした液がついてたけど、それはマー坊の指だと分かった。

『どうしたんだよ…それ…』

『握ってた手を開いたら…あった…』

『ふざけんな…マジふざけんな…』

『クソ!』

一人がその親指を土手から、下の草原へ蹴り落とした。

その後帰った。何かあるんじゃないかと、怖かったが家までは特になにもなかったらしい。

朝起きると、左手が痺れていて今に至る。

話を聞いて、Aは今日登校していないCが気になった。

つづく

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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