中編5
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アライさん家

ローカルなホラースポットで人気のあったその場所は、あるとき雑誌に掲載されてから県外から毎夜毎夜訪れる人が増えました。

一気に全国区になった場所の話しなので知っている方もおられるはず。

それはこんな場所にあります。

神流川と呼ばれる川の上流に下久保ダムがあります。

そこを挟んで北側が群馬県南側が埼玉県になっています。

群馬県側には国道が走っていて、長野県まで行けるようになってます。

埼玉県側は舗装はされてはいても獣道のような道がダムに沿うように走っています。

そして、お互いの道をつなぐ手段はダムの上の道と、ダムの更に上流にある二つの吊り橋式の橋のみです。

赤と青の二つあり、青が「母子橋」赤が「父橋」と通称呼ばれていて、そこにまつわる話しもありますがそれはまた今度。

そして問題のスポットは「母子橋」を群馬県側から渡り、ダムのほうに向かう道(橋を渡って左手に曲がる)に入りしばらく進んだ右手の雑木林の中にポツンと現れます。(現在は鉄柵があり中には入れません。)

この場所で無惨な一家全員殺害事件があり、それ以来不思議な現象やら伝承やらが伝えられてきた場所です。

そこが「アライさん家」と呼ばれる場所です。

そしてこんな言い伝えがあります。

1・「アライさん家」においてあるものを持ち帰ってはいけない。

2・帰るときは、お邪魔しましたと言い「アライさん家」が見えなくなるまでは後ろを振り返ってはいけない。

3・「アライさん家」に来るために使った道を戻ってはいけない。

以上を守らないと後日の夜中に「アライさん」が自宅に現れ、持って行ったものを取り返しに来て更に、全身の血を抜かれると言うものです。

ここからは実体験の話しになります。

…その夜は、私を含めて男女2、2のパーティーで向かいました。

群馬県側から「母子橋」を渡り左に曲がった瞬間に異変がおきました。

後ろに乗った女子の1人(A子)が携帯に異常が出て動かないと言い出しました。

仕方なく車をその場に止め、みんなで携帯を調べているとスイッチの入っていない車のラジオからノイズが…。

「来たなこりゃ。」助手席に座った友人のB君が言い終わったとたんに暗闇と静寂…………。

車のエンジンが停止したんです。

少しパニックになりながら私は仕方なく車外に。周りは夜中ですから真っ暗…なのにもかかわらず、前方にうっすらと明かりみたいなものが見えました。

内心ビビりながらも目をこらしてみると、道端に地蔵があり発光してるように私には見えました。

「お前にも見えるか?」暗闇からの問いにドキッとしましたが、友人B君にもそれは見えていたようでした。

しばらく二人で見ていると、光がすうっと消えてしまいました。

「ここが境界線で先には行くなって事だろ。」淡々と話すB君の方が不気味だと思いながらも私は、

「でも、行くんだろ?」

そうきりかえした。

「モチ。ここまできて帰らんだろーよ。」

車に帰りエンジンキーを回すと難なく掛かりみんなでホッと一息。

あの地蔵の横を通りすぎ右手に曲がりながら道は続きます。

それから無言の時間が流れました。

「あれっ!あれだよね?アライさん家。」ずっと黙っていたC子が初めて発した声でした。

しかし、やっぱりと言うか当然先客がいて、何だかお祭り騒ぎ状態で今までのドキドキが馬鹿らしくなっていました。

先に中を見てきた連中とすれ違い様に、

「何もねーぜ。大量の空き缶と空き瓶は気持ち悪かったけどな。まー頑張れや。お先ー」

と、言い帰っていきました。

………私達はとりあえず辺りを見て回ることに。

母屋だっただろう床の上にきちんと並べられた大量の空き缶と空き瓶、壁を突き破ってはみ出した衣類が入ったままの洗濯機、大木が倒れかかって中に入れそうもない倉まであった。

その倉を背にして振り返った瞬間、視線を背後に感じました。

「だれか見てる…」

「振り返るなよー」B君が耳元で話しかけて来ました。

女子二人は、気付いておらず余裕な雰囲気でしたが、「さあ帰ろう。」B君の一言で、帰路に着くことになり、約束通り「お邪魔しました!」と、皆で挨拶をしてから車に戻りました。

車を動かし始めてすぐに、次の異変がおきました。

相変わらず見られているような視線。

そしてこの重苦しい空気のせいか、C子が気持ち悪くて吐きそうだと言い出した。

「止まろうか?」と、私が言うと、

「いや、しばらくこのまま進んで。」やはり、淡々とB君は言った。

C子も大丈夫だと言うのでそのまま道を進む。

と、車の前方に車のライトに照らされて、白い小さな人型が見え始めた。

「地蔵だ…」

それは右手の路肩に見えた。

「あれっ?道進んでる?戻ってない?」そんな錯覚におちた。

そう、「アライさん家」に着く前にも同じような光景に遭遇していたのを思い出した。

もし、この先に青い吊り橋があったら、それはやってはいけない第三の約束を破ることになる。

3・「アライさん家」に来るために使った道を戻ってはいけない。

もちろん間違えてはいなかった。

地蔵の横を通りすぎた通りすぎた途端に体が軽くなった。視線も感じなくなり、

「みんなもう大丈夫だ」B君がいうと、

「アタシ振り返っちゃったの。そしたら、白い服の人が追いかけてくるのが見えちゃって。そしたらお腹痛く。」と、C子仰天の告白。

本当なのかどうかは私が見たわけではないので何とも言えないが、重苦しい空気は肌で感じていたのは確かだった。

私達の話しはこれで終わりですが、後日談があります。

別の見物人が車ごと崖から転落全員死亡と言う事件が発生して、騒ぎになったことをきっかけに、今のような鉄柵を取り付けたのだそうです。

なんでアライさん家なんだよ?って冒頭で思ったあなた!

私達が帰りがけ通りすぎた地蔵の真上に、誰が立てたか解らないアライ家の墓があります。

遺骨の無い墓とも言われていますが…真実は…。

怖い話投稿:ホラーテラー ぐんまちゃんさん  

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