中編3
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天狗物

子供の頃の話。

私にはA君という仲のいい友達がいた。

彼との遊び場はたいてい近所の神社で、

いつもそこで待ち合わせをしていた。

 神社といっても、神主のいない荒れ社で、

時おりボランティアで近所のお婆さんが掃除をしていく程度の、

ひと気のない神社だったが、

ただ気になる話があった。

それは度々顔を合わせていたそのお婆さんから、

A君を待つ間に聞いた話なのだが・・・。

曰く、この神社には天狗が出る。

1人で遊んでいるとさらわれてしまうぞ・・・。

当時まだ小さかった私は、

それなりに怖がった。

今思えば案に、

「子供がこんなひと気のない所で1人でいると危ないよ」

という気遣いだったのだろう。

だが、怖いものは怖い。

A君はいつもお婆さんと入れ替わりになるようにやってくるので、

正直、A君が来るまで1人になるのが、

たまらなく不安だった。

 そんなある日、A君がこんな提案をした。

「この社、誰もいないのなら、秘密基地にしないか?」

この社とは神殿のことなのだが、

私はとにかく嫌がった。

例の話もある。

信じたわけではない。

でも不安だった。

「境内には他にも遊べる所が、たくさんあるじゃないか。」

と、そんな感じの反論で諦めさせようとしたが、

逆に、

「遊んだことないのここだけだろ?」

と返された。

どうにも断固として嫌がる私を見て、意地になったらしい。

結局、

  「覗くだけ。」

と、互いに譲歩することになった。

ところが、A君はさっそく神殿に上がり込んでしまった。

  「覗くだけって・・・」

慌てて後を追った私の目に、

一枚の鏡が写った。

御神体だったのだろう。

だが、そんな知識のなかった私は、

他に物もないので、その鏡に手を出した。

あっさりと・・・

あれほど怖がっていたはずの私が、

なぜか手を出してしまった。

持ち上げると意外に重かったのは覚えている。

なぜ持ち上げようと思ったのかまでは覚えていない。

A君が鏡をかしてくれと言ってきた。

私は素直に差し出したのだが、

A君がそれを受け取った瞬間、

     ガシャン!!

鏡が大きな音をたてて割れた。

床に激しく破片が飛び散ったのが見えた。

  「A君が鏡を取り落とした。」

 そう思ったのは病院のベッドの上でだった。

実のところ、鏡が割れた所までしか記憶がないのだ。

気が付いたら自分の家の前につっ立ていた。

私はどうやら3日ほど行方不明になっていたらしい。

とくに体調は悪くなかったが、

検査のためにと入院させられた。

警察からも色々訊かれたが、

あまり覚えていない。

ただ、その日からA君はいなくなった。

あんなことがあったにもかかわらず、

何度も神社に通ったのだが、

結局会えずじまいだ。

A君とは学校も違ったため、連絡も取れない。

A君はどうなったのだろうか・・・。

・・・私はなぜ、あのとき警察に、

A君の安否を尋ねなかったのだろうか。

A君は、誰だったのだろう、か・・・。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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