中編4
  • 表示切替
  • 使い方

写真と影

俺はある日友人から相談を受けた。

友人「なあ、この写真見てくれないか」

俺「お前が写ってるだけじゃん」

と俺は言った。しかしあるものに気が付いた時、戦慄が走った。

写真は友人がキッチンの椅子に座っているところを撮影したものなのだが、友人の背後に人間の形をした黒い影が不気味に写っているのだ。

俺「何だよこれ」

友人「分からないからお前に相談してんだろ」

友人「しかもこの写真の影、だんだん大きくなってるような気がしてな」

俺「マジかよ…気のせいだろ」

友人「ならいいんだがよ」

俺「でもなんか怖いな」

友人「うん………今日はありがとうな。悪かったな」

俺「全然いいよ。」

そんな風に俺達は別れた。

それから一週間後、友人が恐怖に怯えた顔で俺に会いに来た。

俺「どうしたんだよ。そんな怖い顔して」

友人「……これ…見てよ…」

俺は友人が差し出した写真を見て凍り付いた…

前見た時よりも写真の影が大きくなっていた。ただ大きくなっていただけではない。

前に写真を見た時は影は友人の背後にいたが、少し友人との距離が離れていた。

しかし今回改めて写真を見ると明らかに前よりも友人に近付いていたのである。

友人が「大きくなっている気がする」と言ったのは間違いではなかったのだ。

これはまずいと思った俺は友人の家に行く事にした。詳しい話しを聞く為でもあるし、友人の妻にもこの事実をきちんと知っておいてほしかったからだ。友人に子供がいる事が気になったが、友人は「子供はだいたいいつも部屋に居るから話しを聞かれる心配はないと思うよ」と言った。

俺は、それなら子供に気持ちの悪い話しを聞かせないで済むと思い安心して友人の家に向かった。

友人の家に着いた俺を、友人の妻は迎えてくれた。

しかし何故か友人の妻は元気がないように見えた…

部屋に通された俺はテーブルの椅子に座り、友人の妻に挨拶をしてさっそく例の話しを持ち出した。勿論写真も見せた。

妻は元気がないせいか、あまり驚きもしなかった。

俺が不思議に思っていると、友人がキッチンの写真撮影現場に案内するといい出したのでキッチンへと向かった。

キッチンに着いて、友人が椅子に座り、「ここに座ってあの写真を撮影したんだよ」と、写真撮影した時の状況を語り始めた。

そして一通り話しを聞き終わり、友人の妻のところへと戻る事にした。

部屋に着いた。しかし妻の姿がない。何処へ行ったのかと友人と二人で探していると、子供部屋から物音がする。

子供部屋に向かった俺達が見たものは、友人の妻が子供を叩いたり怒鳴ったりしている光景だった。

友人は「やめろよ」と妻に言い、子供を妻から引き離した。

友人「なんでこんな事するんだよ」

妻「…」

友人「答えろよ」

妻「あなたのせいよ…全部あなたのせいじゃない。

友人「お前何言ってんだ」

妻「全部知ってるのよ…」

友人はこの妻の言葉に何かを感じたらしく、妻を別の部屋まで連れて行った。泣きじゃくる子供を慰めた後、俺も二人を追い掛ける。

二人は口論になっていた。

友人「子供は関係ないだろ。子供にあたるな」

妻「……。浮気なんかして楽しい。」

友人「…悪かった…許してくれ」

どうやら友人が浮気をしていたらしい。写真の話しをしに来たつもりだったが、まさかこんな方向に話しが向かってしまうとは思いもしなかった。

とりあえず二人を落ち着かせる為、俺が止めに入る。

二人はなんとか落ち着いてくれた。

しかし話しの内容までは変わらなかった。

妻は本気で怒っていた。

俺は友人の妻のそんな姿を見ていると何か怖いものを感じた。怒っているから怖いとかそういうものではなく、何か不気味なものが感じられた。

妻との口論の末、友人は逆切れして俺を連れて外へと出た。

そして車で街中まで向かい、路上で停車した。

友人「写真の話しをしに来たつもりがこんな事になってしまった。わざわざ来てくれたのに悪い」

俺「構わないよ。まあ浮気は悪い事だが…俺が口を挟む事ではないな…悪い」

友人「ところであの写真どうしたらいいかな」

俺「見せて」

そして友人が胸ポケットから出したあの写真を見て俺達二人は戦慄が走った。

影が友人のすぐ後ろまで来ていて、さらに大きくなっていたのだ。

俺「今日お前が写真持って俺のところに来た時には影はもっと放れてて、小さかったよな…

友人「あ…ああ」

俺達は恐怖のあまり霊感のある知り合いに写真を見てもらった。

知り合いは静かに言った。

大変言いにくいですが、この影はあなた(友人)の奥さんの生き霊です。

あなたに何かしらの恨みを抱いていて、その恨みが写真に写り込み、奥さんの恨みが大きくなるにつれ、写真の影も大きくなっているのでしょう。と…

この時初めて俺達二人は真の恐怖に気が付いたのだった。

今日一日で写真の影があれほどまでに大きくなったのは、友人と妻が言い合いをして、妻の恨みが一気に増大したからに違いないと俺は確信した。

友人は知り合いから告げられた事実を知ってからは家には帰っていないという。

友人の妻と子供もその後、どうしてるかわからない…

友人が今も家にいたら、どうなっていたのだろうか…

俺はそう考えるだけで恐怖が込み上げてくる。

写真がその後どうなったかははっきり覚えてないが、確か供養された気がする。

読者のみなさん読んで頂きありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん  

Concrete
コメント怖い
10
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信