怖くない話。
母が癌の末期ながら、自宅で闘病していた頃。
痛みと息苦しさ、倦怠感のはざまで、部屋の斜め上を見ながら呟いた。
「3人 人がいる…」
勿論誰もいない。
「どんな 人?」
「男の人がボロ着てなあ、3人で相談してる」
あの頃の母は、子供のような物言いだった。
やがて入院し、大部屋で主に眠ることが多かった日々。鎮痛用の麻薬が 切れたある日
「3人 いる…」
ここにも来るのかあ。
「また相談してる?」
「…じぃっと、見てる…」
ほどなく、母は亡くなった。麻薬の副作用が切れたのか、数十分、母は昔の母だった。
泣きながら、家族にお別れを言った。
痛みが強くなり、再度鎮痛薬を使った夜から意識は無くなった。
3人のボロを着ていた人達は、見ていたんだろうか。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話