短編2
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青い奴

・・・また今日も虐められた。

勉強も運動も苦手な僕は、恰好の虐めの対象だ。

歯向かう勇気も、力も無い。

いつもただ、殴られ、蹴られ・・・

薄笑いを浮かべるアイツらが飽きるまで、耐えて、耐えて・・・

そんな毎日が嫌だった。

勇気も力も無い自分が嫌だった。

現実に逃げ場の無い僕は、いつも空想の世界に逃げ込んでいた。

(大人になったら仕返ししてやる!)

(みんなが大好きなSちゃんと結婚して、あいつらを見返してやる!)

空想の世界では、僕は無敵だった。

全てが僕の思い通りだ。

今日も独り、自分の部屋で空想の世界に逃げ込んでいた。

その時、

(・・・ガタッ・・・)

背後で音がした。

人一倍 臆病な僕に、振り返る勇気など無い。

(・・・ガタッ・・ガタッ・ガタガタガタガタガタ・・・)

音はさらに激しくなり、そして納まった。

振り返ることは出来ない・・・でも、でも、何かがいる・・・

僕は恐る恐る、自分が掛けている眼鏡に反射して写る その『何か』を見た。

(・・・こ、この世のものじゃない!・・・)

それだけは はっきり分かった。

頬は白く、身体は真っ青だ。

目が異様に大きく、頬からは触覚のような、不気味なものが生えていた。

僕はガタガタと震え、息が出来ないくらい苦しくなった。

その『何か』は、机の引き出しからズルズルと這い出してきた。

手足の指は無く、頭は異様に大きい。

一歩一歩近づいてくるその足は、床から浮いているように見えた。

(・・・ひぃ! 来るな、来るなぁ~!!!)

叫んだつもりだったけど、声にならなかった。

およそ血が通っているようには見えない青い身体、生き物じゃない。

絶対、生き物じゃない!

僕は絶望した。

背後に化け物がいる恐怖・・・

空想の世界なら、僕は無敵なのに・・・

こんな化け物、簡単に倒せるのに・・・

(・・・僕は今から、この化け物に殺されるのか・・・)

死について、今まで考えたことは無かった。

虐めは辛かったけど、自殺とか、そんなこと考えもしなかった。

だって、空想の世界では無敵なんだもの。

そこへ逃げ込めばよかったんだもの・・・

恐怖を通り過ぎて、頭が真っ白になった。

今までの、さまざまな空想が頭に浮かんだ。

あんなこと、こんなこと・・・

大空を自由に飛びまわる鳥たちを見て

(羽があったらいいなぁ・・・

アイツらに殴られなくてすむもんなぁ・・・)

そんなことも空想したっけ・・・

でも、そんなの全部叶いっこなかったんだ。

空想の世界は、所詮ただの空想でしかなかったんだ。

今からこの化け物に殺される。それが現実なんだ。

ずっと虐め続けられる事と、今 殺される事、どっちが不幸なんだろう?・・・

でも、一度でいいから・・・

「空を自由に飛びたいなぁ・・・」

「はい、タケコプター。」

怖い話投稿:ホラーテラー ヤツラさん  

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