短編2
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死者の訪問

人が死ぬ前に挨拶に来る、とよく聞く話です。

母の古い知り合いが病に伏せ、周りから先は長くないだろうと言われていました。癌の末期だったのです。

いつもそのおばさんは、元気だったころ家の奥にある母の工房におしゃべりをしに来ていました。家の中庭を通って、奥の工房に向かう道には砂利が敷き詰めてありました。

工房の隣の部屋が私の部屋になっており、渡り廊下を通って自分の部屋に行くのですが、母屋からは少し離れていました。

ある晩、ふとまだ薄暗い明け方に目が覚めました。明るくなるまでにまだ時間があるし、トイレに行きたいけれど母屋の横のトイレは遠すぎるとためらっていると、ジャリッツジャリッと小石を踏んで歩く音が聞こえました。その音はどんどん近づいて、工房の入り口までやってきました。

最初、猫かな?と思っていたのですが、明らかに人間の足音だとわかり怖くなって震えながらも、耳はしっかりその音の行方を聞いていました。

しかし、その足音は来たっきり帰る音は聞こえません。

帰るにしても家の横に回るにしても砂利を踏まずに歩けるはずがないのに・・・

明るくなるまで部屋から出ることが出来ず、朝になってやっと母に伝えようと母屋に行くと、母は朝早くから電話をしているのです。

その古い友人のおばちゃんが明け方亡くなったという知らせでした。

また母が埼玉の姉のところに泊まりで遊びに出かけているころ、家に母の兄が亡くなったという知らせが入りました。私がすぐに埼玉の姉に連絡を取り、母にそのことを知らせると、直接母は兄(叔父)の葬儀に向かうことになりました。葬儀から帰ってきた母から不思議な話しを聞かされました。それは、叔父が亡くなった知らせが入る前の晩、母と姉とその息子(当時1才)が夜寝ていると、突然息子が泣き始め、ぐずってなかなか寝てくれません。

姉も眠いし、近所にも迷惑になるので早めに寝かせつけようとあやしていました。1時間ぐらいあやし、やっと寝付いてくれたのでみんな眠りにつきました。母だけはなかなか寝付けなかったようです

その息子がぐずった時間と叔父の亡くなった時間がぴったり一致するというのです。

きっと幼い子には叔父が母の元にお別れを言いに訪ねてきていたのが見えていて、恐れてないていたのでしょう。皆さんは虫の知らせ…信じますか?

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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