中編4
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ロッカールーム

僕が学生時代にバンドを組んでた時のお話。

当時僕を含め4人のメンバーでインディーズバンドをやっていた。

地元に程よく近い繁華街にある、しょぼくれたライブハウスが僕らのホームで、だいたい週1くらいでライブをしてた。

ファンと呼べるほどの人数はいなかったが、そこそこ客を呼べるようになったころ、ライブハウスのオーナーからバイトのオファーが来た。

オーナーとはある程度仲良くなってたし、機材も整っていて12時までに店を出るなら、営業終了後に練習してもいいという好条件に僕らは即座に食いついた。

しかし働き始めてから一ヶ月ほどの間、オーナーはしきりに

「12時を過ぎる前に店を出ろ!」と耳にタコが出来るほど、しつこく言ってきた。

流石に気になって理由を聞いたが、近隣がうるさいやら警察の指導が入ったやらと毎回話をはぐらかされた。

だが、タダで練習が出来る上に、わずかだがバイト代まで発生すると言うかなりの好条件なので僕らは大人しく言うことを聞いていた。

バイトを始めて3ヶ月ほど経ったある夜、練習に熱が入り、気付いた時には11:30分を回っていて、急いで帰り支度をして表に出た。

だがお茶目なベース担当がベースを店内に忘れたとふざけた事を言い出したので、鍵を渡しハウスの中に取りに行かせた。

このライブハウスにはちょっとした控室みたいなものが付いており、出演者やらの荷物を置いたり着替えたりする為のロッカーが壁側に6つ並んだ8畳程の作りになっていて、そこにベースを置き忘れてしまったらしい。

外で待つこと15分。

店が地下のため携帯も繋がらないし、あれほどオーナーから言われた、約束の12時を10分ほど過ぎた頃、ドラム担当が、「遅すぎる!!オーナーに怒られても面白くないからベースを呼びに行こう」と店に入って行ったのを見て、僕らも慌てて後について行った。

中に入りまっ先にドラムはロッカールームに足を運んだ。

店内の電気は付いていない。

仕方がないので壁づたいに手探りでロッカールームの電気を探して歩き始めてからすぐに、ドラムのギャッ!っと言うマヌケな声と、ビターンと思いっきりこけた様な音がしたので、僕らも携帯のライトを頼りにロッカールームに突入した。

携帯のライトに気付いたドラムが

「何かにつまづいた」と手招きしているので近くに寄って足元を照らしてみると、そこにはベースが白目を向いて倒れていた。

僕らは状況が理解できなかったが、とりあえず、ベースをひっぱたいてたたき起こした。

ベースは目を覚ますなり「ギャー!!」と大声で叫び、前方に見えているロッカーをしきりに指差し、声にならない声で必死に何かを訴えてきた。

とりあえずベースが指差す方向に視線を向けてみると、一番左はじのロッカーの扉が空いていた。

そしてよく目を懲らして見ていると、なぜだか扉がユラユラと動いていた。

それから数秒後、今度は4人全員で「ギャー!!」と叫んだ。

揺れていた扉がピタッと止まった瞬間に、中から髪の長い青白い顔をした女?が顔だけをニュッとロッカーから出して、異様に赤い口を歪ませケタケタと笑いながら扉を揺らしていた。

現実的に考えてもありえない。

狭いロッカーに入り首から上だけを横に出すなんて人間ならば、どんな態勢をとっても不可能だ。

もう何がなんだかわからなくなった僕らは、逃げるように店をあとにし、ダッシュでファミレスに逃げ込んだ。

みんな逃げるのに必死だった。

そのためかベースをロッカールームに残したまま逃げてきてしまった事に気が付いたが、残った3人もあまりの恐怖で、誰ひとり店に戻ることは出来なかった。

とりあえず朝までファミレスで時間を潰し、9時を回ったところで店に戻って見ることにした。

恐る恐る店内に入り電気をつけて、ロッカールームに向かったが、そこにベースの姿は無かった。

代わりにベースの愛用していたエレキがケースごと、ぐしゃぐしゃに壊されて置かれていた。

その日の昼過ぎ、僕らはオーナーに辞めると言うことを電話で伝えると、こうなる事がわかっていた様な口ぶりで「分かった…」とだけ言われた。

それから数週間後、ずっと連絡のつかなかったベースから、公衆電話から電話がかかってきて

「突然ごめん、訳あって辞めさせてもらう。色々ありがとう」

と留守電に今にも消えそうな声でメッセージを残して僕らの前から完全に姿を消した。

その流れでバンド自体も解散し、今では誰とも連絡をとっていない。

たまに、ふと昔の事を思い出すが、ベースの身に何が起きたのか、僕らが見たあの女?は一体何だったのか。今ではもう確かめる事は出来ない。

オチなくてごめん。

怖い話投稿:ホラーテラー 馬のケツさん  

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