中編3
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天才的な男

「よし!ついに僕は、成し遂げた!」

彼は、紛れもない天才だった。

もし彼が、違う研究テーマ

例えば、量子学、宇宙物理学、論理物理学

などといったカテゴリに入るものを選んでいたら

おそらくは、ノーベル賞も夢ではなかったかもしれない

いや、それは確実であったであろう

しかし、彼が選んだテーマはまったく別のものであった

何を思ったか、彼は心霊現象の解明という

およそ、科学者らしからぬものを自分の研究テーマに選んだ

彼はまず、心霊現象の定義をしようと考えた

何をもって心霊現象とするか

『魂魄(こんぱく)が起こす現象』

そもそも魂魄の定義ができていない

『超自然的、超科学的な現象』

そんな現象はこの世に存在しない

世間でそう思われているのは

まだ解明されてない現象にすぎない

それを心霊現象とするとしたら

ブラックホール、ビッグバンも心霊現象になる

『死者が生者に対して影響を与える現象』

それらしい…それらしいが

これだと、例えば遺書や死後発表された芸術家の作品

などに影響されることも心霊現象になってしまう

いや、しかしそれは死者の生前の行動結果なわけで

生者が生者に与えた影響と考えればいい

でも死者は何ものにも影響を与えないから死者じゃないのか?

それも否だ、死者といっても全てが無になるわけではない

死体だって残るし人の記憶にだって残る

いや、それは拡大解釈のし過ぎか…

でも、死者の定義の仕方しだいではこれでいいのかもしれない…

といった具合に彼は研究を進めた

が、しかし、すぐに行き詰った

彼はこの研究進めていく上で

絶望的にあるセンスにかけていた

つまり、完全なる霊感オンチだった

どうやら、心霊現象は脳の状態によって

起こるのかもしれない

被験者の話を聞く限り(胡散臭いのもあったが)

嘘をついてるようには思えない

ということは、被験者に何か起こってるのは事実である

脳による、錯覚や妄想の可能性が高い

錯覚や妄想でも被験者にとってはそれも実体験そのものだ

では、何が脳にそうさせるのか?

薬物使用者及びそう思われる者は除外してきた

薬物以外だとすると、電磁波や、重力波の異常だろうか?

だとしたらそれはどうして発生したのか?

どちらにしろ、心霊現象が起こらないければ話にならない

しかし、彼には心霊現象は起らなかった

自分の仮説だけに頼ることなく

噂にも耳を傾け、心霊スポットに足繁く通い

かなり罰当たりなこともしてきた

が、しかし何をやっても心霊現象は起らなかった

彼は、執念の権化と化していた

ついに彼はある決意をし

そして、その決意を実行した

「すっきりした、こんなに簡単なら始めからこうすればよかった」

そして遂に彼は全ての心霊現象を解明し

「思い残すことは何一つない」

彼は晴れやかな顔をしているだろう

「これで気持ち良く成仏できる」

そして、彼は成仏したことだろう

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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