中編3
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嘘つきな少年

ハッと我に帰り、僕は時計を確認した。

…もうこんな時間か。

11時53分。後少しで4月1日が終わる。

テレビには1週間前に借りた映画のスタッフエンドロールが流れていた。

僕は吸い終えたタバコの火を消して、もう一度時計を確認する。

11時55分。

4月1日、今日は言うまでもなくエイプリルフールである。

かといって、僕は誰かに嘘をつくでもなく、昼間からレンタルビデオショップで借りていた映画を片っ端から観まくるだけの1日だった。

しかしながら昨日からあまり睡眠をとっていないのと、映画の本数を借りすぎたのが相まって、途中からは「観ないともったいないからとりあえず観る」というノルマ作業と化していた。

それ故、合間合間に観た映画のある程度細かなストーリーは、もはや覚えていない。

ただ、前述の通り細かなストーリーは忘れたが、連続殺人鬼を主役としたバイオレンスな表現たっぷりのパニックホラー。あれは印象的だった。

臨場感があって実に面白かった。

タイトルはなんだったっけ?

にしても、エイプリルフールか。

大学が春休みに入ってからというもの、めっきり日にちの頓着が無くなっていたため、今日がエイプリルフールだなんて意識したのも夜になってからだ。

どこかのネット企業はまたエイプリルフールを利用した大胆な嘘で世間を騒がせているのだろうか。

そんな事を考えながら、映画を止め、テレビを消した。

流石に目が疲れた。そして何より睡眠があまり取れていないせいか、気を緩めると意識が遠退く程眠い。

両瞼を手でこすると目が染みて、涙が出てきた。

実際のところ、こんなに映画を何本も、それも一気に観たのは初めてかもしれない。

まあ、それだけ暇だったということなのだが、我ながら何とも味気のない人生を送っているなと改めて感じた。

伸びをしながら欠伸をして、テーブルに置いていたレモンティーの残りを、ストローでズルズルと音を立てながら飲み干した。

そういえば、明日は大学のガイダンスが午前中にあったはずだ。

早く寝よう。

そう思って風呂に入る支度をしていると、携帯が軽快な音楽と共に震えた。

「?」

メールだ。差出人は大学の友人からだった。

『2010/4/2 0:06 題:Re 本文:それ嘘だろ?日付変わってんぞ』

…なんだこれ?

僕はそのメールに『何が?』とだけ返して、風呂へと向かった。

友人からのメールは風呂から上がって確認したが、返ってきてはいなかった。

僕は特に気にもせず、いつものように歯を磨いて、いつものように布団に入り、寝た。

メールをくれたその友人が自宅にて遺体で発見されたという知らせは、日が昇って大学のガイダンスに行ったとき、別の友人から聞いたものだった。

僕はそんな馬鹿なと思いながらもあの不可解なメールの事を思い出した。メールBOXを開き、あの時の友人とのやり取りを確認する。

その瞬間、僕はゾッとした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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