友人が約束時間になっても現れないので、Aは心配になり電話をかけた。
友人「んご!……あ、はい。もしもしAか」
なぜ「んご!」などと言ったのかAには分からなかった。何かを食べていた時の飲み込む時の音にも聞こえた。
A「うん。どうしたの?約束時間過ぎてるよ」
友人「ああ悪い。今エネルギー補給してる最中だお。もうちょっと待ってお」
語尾の「お」…
友人はネットで書き込みをする時、必ず語尾に「お」を付けるのだが、最近では現実の世界でも使っている。
A「エネルギー補給?」
友人「うん。だからもう少し待っててくれお!」
一方的に電話を切られた。
少しイラッときたAだったが、「事情があるんだろう」と思い、許す事にした。
しばらくしてから友人が現れた。
友人「悪い悪い!待たせたお」
A「構わないよ!…でさ電話で言ってたエネルギー補給て何?」
友人「……恥ずかしくて言えないお」
A「なんだよそれ!教えてくれよ」
友人「嫌だお!」
A「まあ嫌ならいいよ」
友人「ガソリンスタンド行かない?」
友人が意味の分からない事を言うので、Aは「は?」と思った。
A「なんでガソリンスタンドなんだよ!車で来てるわけでもないんだしさ」
しかし、どうしてもガソリンスタンドに行きたいという友人の気持ちに応えて、Aはガソリンスタンドに行く事にした。
ガソリンスタンドに着いたAだったが、友人に「少しここで待っていてくれお」と言われたので、休憩室で待っていた。
すると外から異常な悲鳴が聞こえた!
外に出たAは思わず悲鳴をあげた。
なんと友人が、ガソリンを入れに来ていた客の車を乗っ取っているではないか!
Aがすぐに駆け寄る。
A「お前何やってんだよ!早く降りろ!!」
友人「嫌だお!降りないお!!」
A「なんでこんな事してんだよ!」
友人「ガソリン飲むまで降りないお!あの客が(飲んでいい)と言うまで降りないお!」
A「ガソリン飲む!?」
いろいろ話しを聞いていると、どうやら友人はガソリンを飲みたいようだ。客が車にガソリンを入れているのを見て、友人が「ガソリン飲ませてくれお」と行ったところ、断られ、怒った友人が車を乗っ取ったらしい。
Aはあきれかえって何も言えなかった。
客は友人に怒鳴っている。
A「早く降りろ!!」
ここでは飲めないと思ったのか友人は
友人「飲むお!」
と言い、車を急発進させた!
しかし車はバックしていき、壁に激突した。
車のトランクが完全に潰れた。
とその時!
友人が車から急いで降りて、こちらに走ってきた!
友人「変な音がするおー!逃げるお!」
と!その時だった!
ドガーン!!!!
車が爆発し、大破した。
友人「爆発したお」
A「お前何やってんだよ!!どうするんだよ!」
友人「…」
客「どうしてくれるんですか!…決めました!あなたを訴えます!!」
どうする事もできなかった。
友人は裁判所で裁判を受けた。
客「この人が私の車を乗っ取って、爆発させたんです!」
裁判官「被告人。言いたい事はあるか?」
友人「はい。確かに乗っ取ってガソリン飲もうとして爆発させたのは私ですが、あんな所に車を停めておく方も悪いお」
Aは「はぁ〜」と溜め息を吐いた。
Aはあんな言い訳をする友人に対して、絶望を感じた。
そして裁判官の下した判決は「懲役1年。執行猶予6ヶ月の」だった。
勿論、車も弁償する事になった。
後で友人から聞いた事だが、どうやら友人はガソリンを飲まないとエネルギーを補給できないらしい。
いつも隠れてガソリンを飲んでいるという。
Aは車を乗っ取ってまでガソリンを飲もうとする友人に少し怖さを感じた。
その後も友人と仲良くしていたA。
しかしある時、Aにショックな情報が入った。
内容は「ガソリンスタンドのコンクリートに穴が開いていて、その中のガソリンの池から友人の死体が発見された」というものだった。
Aは「友人がそこまでしてガソリンを飲みたかったのか」と思うと、涙が溢れてきた。
Aは空に向かい、亡き友人にこう言った。
A「ガソリン池のガソリン、美味かったか?」
と。
怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん
作者怖話