短編2
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神なし神社4

声をかけても2人ともピクリとも反応しない。

「なぁ啓太春樹!いい加減にしろよもうここ出る…」

なぜ、2人が動かないのか

いや動けないのか。

俺は2人のすぐそばにきてやっとそれが分かった。

手足が異常に長く、腹が膨れ、目や鼻らしきところが窪んだ顔。

それが黒い蜘蛛のように四つん這いになりながら天井の上に張りついていた。

それだけじゃない、長い髪のようなものが2人に巻きついて締め上げていたのだ。

こいつはただの化け物なんかじゃない

別格のとんでもないやつなんだ

恐怖で足の力が抜けそうになる。

だけど、2人を助けなければ!

俺は自分でも驚くくらいの奇声を発しながら、持っていた懐中電灯を化け物に向かって投げつけた。

「ギィーーっ!」

金切り声をあげて化け物はないはずの目を眩しそうに萎ませたあとシュルシュルと髪の毛をといた。

同時に2人がどっと膝をつく。

「大丈夫か!」

「…吐きそうだ…頭もいてーよ」

啓太はなんとか喋れたが春樹は依然とボーっとしたままだった。

「おい…春樹!しっかりしろ!」

「…ぬ……い…だ」

「あ!?」

「怖い怖い怖いイタいイタいんだ死ぬんだ!死なないって言ったのに!僕は死ぬんだよ!」

いきなり春樹は意味不明なことを叫びながら暴れ出した。

普段は温厚な春樹が怒鳴るや取り乱すなんてまずない。

なんとか正気にさせようとしていると

ボドッ

アイツが天井から落ちてきた。

首をクルクル回しながら近づいてくるアイツに啓太は悲鳴をあげる。

「ひっ!許して…許して!」

「啓太!春樹を担いで上にいけ!」

「あっ…でも…」

「コイツは俺が引きつけとく!懐中電灯は絶対つけんな!分かったかいけ!」

啓太は青ざめた顔でこくこくと首をふり、華奢な春樹を抱えて走り出した。

それを追おうとする化け物の顔に懐中電灯を照らして行く手を阻む。

ぶっちゃけすごく怖いし無意識に涙がでてくるくらい混乱していたが、家柄が家柄なのでまだなんとかなると信じていた。

四隅にある蝋燭はいつのまにか消えて、懐中電灯だけの光の中アイツと2人きり。

アイツは獲物を逃がされ苛立っているのか奇妙な金切り声を発しながらシャカシャカと動き回る。

すまん。続く。

あと4話くらい

怖い話投稿:ホラーテラー Mr.ABCさん  

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