中編3
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少女と人形

これは数年前の夏、友人Fに関わって体験した話です。

私自身は怖い思いをしたわけではありませんが、Fにとっては初めての体験で怖かったそうです。

当時交通事故で自宅療養中だった私がいつものように夜中までテレビを見ていると、突然『ピンポーン』とチャイムが鳴ったのです。

時計を見ると0時過ぎ、こんな遅くに誰だろう?と私はドアの前に立ち覗いてみると、そこに立っていたのは中学からの友人Fでした。

「こんな夜中にどうした?何かのサプライズか?」

と笑いながら聞くと、Fは元気なく

「うん…まぁ…いきなり悪いな…」

明らかに普段のFとは違います。

すると突然Fは涙目になりながら

「…マンションには戻りたくない…悪いが泊めてくれないか?」

「それは構わないけど、どうしたんだ?俺で良ければ相談に乗るぞ?」

しばらくFは押し黙っていましたが、重い口を開き始めました。

「お前幽霊とかよく見てたよな?いま何か見えるか?」

「!?」

──えっ?そっち系!?

私は平静を装いながらも、多分顔はひきつらせていたと思います。

「い…いや…何も見えんけど?」

「そうか…信じられないかも知れないが…」

以下はFの話です。

Fは最近リストラにあい、以前住んでいたマンションの家賃が払いきれないので安いアパートに引っ越したそうです。

引っ越した3日目、職安の帰りにパチンコで負けてイライラしながらアパートへ帰りました。

アパート手前の住宅のゴミ捨て場に人形が転がっていて、見ると古ぼけたキャベツ畑人形?だったそうです。

機嫌悪かったFは人形を蹴りながら歩き、アパートのゴミステーションに思いっきりシュートして玄関に入りました。

夜になりシャワーを浴びて酒を飲んでいると

「コンコン…コンコン…」

ドアを叩く音がします。

誰か来たのか?と玄関を開けるが誰もいません。

外に出て辺りを見渡すも人の気配がなく、「気持ち悪いなぁ」とドアを閉めて部屋に戻ると空気が重苦しいのを感じました。

──何か見られてる?…

Fが視線を感じる方向を見ると昼間見た人形がベッドの上に座っていました。

「!?」

一瞬何がなんだか分からず固まっていましたが、状況を把握すると恐怖感に駆られたFは外に逃げようとしたそうです。

しかし急に目眩がしてその場に崩れてしまい、何とか立ち上がろうとしますが力が入らずあがいていました。

恐怖と共に苛立ちを覚えたFは「何見てんだコラァ!!」と怒鳴りつけますが、体は思うように動かず為すすべがありません。

その間人形はずっとFの方を見ていたそうです。

恐怖感がMAXに達したFは怒鳴りつけた事に後悔し始め、やがて「ごめんなさい!消えて下さい!」と懇願したそうです。

何とか立ち上がる事が出来玄関まで走り振り返ると、人形を抱いた少女が立っていたそうです。

少女は悲しそうな目でFを見つめるとスーッと消えました。

呆然としていたFは「人形の祟りだ!」と考え私のマンションに逃げて来たそうです。

この話を聞いた翌日、私はFとアパートに2人で向かうと昨日のゴミステーションに人形はありました。

そしてお寺に行って供養してもらったのですが、やはり大切にしている人形には魂が宿るというのはあるらしく、粗末に扱ってはいけない…と言われました。

お寺をあとに歩いていると、Fが「◯◯(私)!」と呼び指を差しました。

私がそちらを見ると、大きな木の下に人形を抱えた少女がニコニコと笑っているのが見えました。

怖い話投稿:ホラーテラー バジリスクさん  

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