中編3
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借家

『人に話してはならない。』

和尚さんと僕の約束だった…。

友人Aは、家を建て替えをする間、家族で借家に住む事になったらしい。

A:「それがさぁ、かなりボロいんだよね。」

それを聞いた僕は、友人3人とAの借家に遊びに行く事にした。どんだけボロいか見てみたかったし。

学校で待ち合わせて、自転車で借家に向かった。入り組んだ住宅街を走って行くと、

あった。

ひときわ古ぼけた家。廃屋と言っても納得するほどの家だった。

今にも壊れそうな玄関をAが開けると、

違和感を感じた…。

玄関を入って、まず階段が目の前にあるのだけど、後から無理矢理つけた階段のようだった。

しかも、何故だかヒンヤリとした空気が上から流れてきた。

(なんか、気持ち悪りぃな。)

そう思いつつも、実際に住んでるAに気を使い、黙って家にあがった。

しかも、Aの部屋は2階なので、気持ち悪いと思っていても行くしかなかった。

2階に上がると、

ひび割れた窓ガラス・破れまくった障子・キズだらけの柱。そして、ほとんど日が差さない薄暗い部屋だった。

でも僕は、それよりも部屋全体の妙なよどんだ空気が気になった。

とりあえず、みんなで床に座り、他愛のない会話をしていた。すると、友人の一人が、

「なぁ、アレ何?」

目線の先には、壁の下の方に板がはめ込んであった。

その板には取っ手もなく、開けて収納できる感じではなかった。

Aは無言だった。

言い出した友人Bと僕は、気になって板を調べてみた。

やはり、取っ手はなく、黒い縁取りがされた古ぼけた板だった。

B:「開けてみようぜ。なぁ!A!いいよな!」

相変わらずAは、無言だった。

かまわずBは、Aの定規を板と壁の隙間に差し込み、板を少しずらした。

B:「おい!ずらしたトコ掴んで、開けろよ。」

僕は、言われた通り板を外した。

その瞬間、生暖かい空気がムワっとした。

中は、大人1人寝転がれる程の奥行きと幅の何もない空間があった。

ただ、その家の古ぼけた感じとは対称的に“眩しい程、真っ白”なのだ。まるで、つい最近塗り替えたように。

Bと友人達は、何もなかった事に拍子抜けしたのか、笑っていた。

僕は、笑えなかった。

僕の持っている板の裏、つまり真っ白な空間側の板に

無数の手形がついていたからだ。

赤茶色の、おそらく乾いた血であろう手形を見た僕は、動けなかった。

声を出そうとしても、出ない。板を離したくても手が動かない。

周りの友人達は、気づかない。

(助けてくれ…!!)

僕は、恐怖で泣きそうだった。

「どうした…?」

誰かが僕の肩を触った。

…Aだった。

その瞬間、体が動いた!

僕は、板を放り出して叫びながら家から飛び出した。

自転車に飛び乗り、メチャクチャ走った。一刻も早く、あの家から離れたくて。

翌日、Bや他の友人に質問攻めにあった。突然帰った理由、叫んでいた理由。

僕は、思い出したくないので適当に流した。

Aは、あまり話さなかった…。

そんなある日、

Aが泊まりに来いと言って来た。

どうやら、建て替えが終わった新しい家に遊びに来ないか、という事らしい。

気は進まなかったが、あの借家ではないし、あれ以来気まずくなったAとの関係も修復したかったし、泊まりに行く事にした。

≪続く≫

怖い話投稿:ホラーテラー 葉月さん  

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