中編3
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タイトル『アスレチック』

僕はね、家からちょっと遠いところにあるアスレチック場に、自転車に乗っていつも遊びに行くんだ。

とってもスピードの出るターザンロープとか、木でできたおっきなジャングルジムとか、丸太でできた高~い登り棒とか、落っこちちゃいそうになる吊り橋とか、そんな遊具がい~っぱい置いてあるんだ。

でもね、行くときはね、だいたいいつもひとりだよ。

それはね、前に何度か友だちと一緒に遊びに行ったことがあるんだけど・・・・・・・運動が苦手な僕はいつもおいてけぼりになっちゃって、友だちにバカにされちゃうからなんだ。

だからね、僕はいつもひとりで行って、みんなみたいにかっこよく遊べるように練習してるの。

高いのとか速いのとかが苦手だからね、ターザンロープは一番高いところからスタートできないし、高~い遊具のてっぺんまで登ったことはないし、吊り橋だって渡りきったことがないんだ。

だから、帰るときはいつも「今日もかっこよく遊べなかったなぁ」って、しょんぼりしちゃうの。

でもね、いいこともあったんだよ。

新しいお友達ができたんだ。ミキちゃんていうの。

ミキちゃんはね、僕と一緒でとっても運動が苦手なの。

だからね、僕と同じで、練習をしに来てるんだって。

僕はミキちゃんの前でかっこ悪いところばっかり見せちゃうんだけど、ミキちゃんは絶対に僕のことをバカになんかしないよ。

ころんでけがをして涙が出ちゃったこともあるけど、「もうちょっとだね」「がんばって」「次はできるよ」って、いつも励ましてくれるの。

でね、ミキちゃんに応援もらえるのが嬉しくて、僕もミキちゃんのことをい~っぱい応援してあげるんだ!

それでもやっぱりふたりとも全然かっこよく遊べないんだけどね。

でもね、ミキちゃんたら凄いの!

ある日ね、突然かっこよく遊べるようになっちゃったの!

ターザンロープだってスピードつけてピュンピュンいけるし、高いところにだってスイスイ登っちゃうし、吊り橋だってひょひょいのひょいなの!

なんか、急に天使の羽でも生えちゃったみたいにさ!

でね、ミキちゃんがお手本を見せてくれるから、僕も勇気を出してやってみたの・・・・・そしたら・・・・・できたの!できたの!!!!!

ターザンロープだって、高い遊具だって、やる前はすっごく怖かったけど、一回じょうずにできたら、もう怖い気持ちなんて吹き飛んじゃったよ。

それでね、僕たちは約束したの。

「毎週日曜日はここで一緒に遊ぼうね」って。

それからはね、日曜日になるといつもアスレチック場に行って、ミキちゃんと一緒に遊んだよ。

ターザンロープは二人乗りするともっとスピードが出て面白いし、高いところに登ってふたりで紙飛行機やしゃぼん玉を飛ばしたりするのが、とっても楽しかったんだ。

僕はミキちゃんに会える日曜日がとっても楽しみになったの。

こういうの、デートっていうのかなぁ?フフフ

毎週毎週、こんなに楽しい日曜日がやって来ると思うと、楽しくて仕方なかったよ。

けどね、ある日ね、いつもみたいにアスレチックで遊んで、夕方になったから帰ろうとしたとき、ミキちゃんがこんなことを言ったの・・・。

「もう明日からは一緒に遊べなくなるの。ごめんね」

ミキちゃんはとっても寂しそうに涙を流してたよ。

僕はビックリしちゃって「なんで?」って聞いたの。

そしたらミキちゃん、「七回目の日曜日が来ちゃったからね」って言ったの。

なんだかよくわからなかったけど、とにかくもうミキちゃんには会えなくなる気がして、とっても悲しい気持ちになったの。

目からいっぱいいっぱい涙があふれてきたよ。

僕は涙で前が見えなくなって、服でゴシゴシ涙を拭いて顔を上げたら、もうミキちゃんはいなくなってたよ。

その日、アスレチック場からの帰り道は今までで一番悲しかったよ。

ミキちゃんが最後に言った言葉「七回目の日曜日」っていうのが、「四十九日」っていう意味だってわかったのは、それから何年も経ったときだったよ。

(今の僕の喪失感を作品にしてみました。拙い文章ですが、少しでも思いを感じ取っていただければ幸いです。もう投稿はしないとのことですが、「きっと読んでもらえる」との期待を込めて・・・・・)

怖い話投稿:ホラーテラー 未熟者さん  

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