長編16
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Sの右手

これは、小学校の時の実体験です。

長文になりますが、脚色せず時系列で書いていきます。

当時、俺は九州の田舎の学校に通う小学3年生だった。

学校が終わるとランドセルを置きに帰宅した後

仲のいい友達と再集合して暗くなるまで遊ぶ毎日だった。

俺が通っていた小学校はかなり古く、木造の平屋建てで

4棟の校舎が平行に東西に並んでて

その間に渡り廊下が3本通る造りになっており

最後に残った先生が施錠するまでは 放課後だろうが自由に校舎内に

入ることができた。 (見つかれば 早く帰るよう叱られたが)

その日の放課後も、俺をいれて8人ほどが学校に集まり 校舎内でかくれんぼを

(カンけりのカンの変わりに木や柱にタッチするやつ)していた。

鬼が変わりながら何回か続けたころ、中庭ごしに鬼の動きを伺いながら

渡り廊下へ入ると、その先の校舎に3人位いるのが見えた。

ただ隠れているようにも見えたが、近づくと壁から

何かを引っ張り出そうとしている所だった。

よく見ると 壁に掛けられた鏡の真ん中にSが右手を突っ込んでおり

左手で右手首をつかんでいる。

さらにSの左右からAとBがそれぞれ Sの右手と左手をつかんでいる。

最初は そこに穴があって、中にクワガタムシか何かいるのかと思ったが、

AもBも必死に引っ張っているし、Sにいたっては涙をいっぱいにためた目を

見開いてうなりながら手を引き出そうとしていた。

その時の俺は別に不思議にも思わず

「このまま抜けなかったら先生に見つかってしかられる」と

しょうもないことを思いながら、Sの後ろに回って胴に手をまわして

一緒に引っ張りはじめた。

皆で力をあわせて引っ張ると引き出される感覚があったが

次の瞬間引っ張り返される感じだった。

ちょうど綱引きをしているような感覚。

だが引き出すことはできず「せーの、でひっぱれ」とか

「もうちょっと力入れろ」とか言いながらやっているうちに

他の友達も集まってきていた。

最終的に全員が集まったが、それでもSの手は抜けず結局、

職員室に先生を呼びに行くことにした。

校舎内に残っていたことを叱られながら先生を連れて来ると

先生はSの手を引っ張ったりしていたが、「他の先生全員呼んで来い」と言った。

その間もSは「ふぅーっ ふぅーっ」と言いながら手を引っ張り出そうとしていた。

俺たちは手分けして職員室や講堂(兼体育館)に残っている先生を呼びに行き

残っていた先生が4人位集まった。

先生たちは「何で校舎内に残っとるんだ?」とか「何をしとったんだ?」とか

「何でこんなことになっとるんだ?」と俺たちを叱りながら

さっきの俺たちみたいにSの手を引っ張り始めた。

俺はその様子を横から覗いていたが、さっきの綱引きの感覚通り

手首のところまで引き出されたと思ったら次の瞬間には肘近くまで引き込まれることもあった。

Sは痛がる様子もなく むしろ抜けないことの方に恐怖を覚えているようだった。

先生たちもSの様子を見ながら「せーの」と4人がいっせいに引いたその瞬間、

一気に抜けて後ろに倒れこんだ。

次の瞬間、Sの絶叫が響いた。

Sが見開いた目でみつめるその右手の、手首から先がちぎれていた。 

血は噴き出していたが切断面は刃物で切ったようなものじゃなく、

ひきちぎったか噛みちぎったような感じだった。

それからは大変な騒ぎになった。

俺たちは職員室に集められ、救急車やパトカーのサイレンを聞きながら

一人ひとり状況を説明させられた後、迎えにきた母親と一緒に帰った。

それぞれの親も職員室で説明を受けたようだった。

次の日、俺は珍しく親に起こされることなく自分で起きた。

台所へ行くと、いつもは母親が朝食の支度をしながら

「モタモタしてると遅刻するよ」と急かすのだが

その日は何も言われなかった。

時計をみるとすでに9時近かった。

「遅刻しとるやん。何で起こさんの?」と言うと

「一緒に学校に行くからゆっくりでいい」といいながら自分の支度をはじめた。

母親と一緒に登校するのは入学式以来で、

近所の人に見られるのが恥ずかしかったのを覚えている。

学校に着くと、いつもの下駄箱のところではなく職員用の通用口から入り

そのまま職員室へ入った。

中には先生に混じって、昨日の面子が親同伴で登校していた。

しばらく待たされた後、母親と一緒に一組ずつ校長室に呼ばれた。

校長室には 校長・教頭・担任それと知らない人が3人ほどいた。

警察の人ということだった。

俺たちは ひとりずつ(親と一組ずつ)事情聴取みたいなのをやらされた。

それぞれの話の整合性をみているようだった。

とても信じられるような話でもないし、俺たちだけの説明では納得してもらえなかったはずだが、一緒にいた先生たちの話とあわせて

嘘はついてないことは信じてもらえたようだった。

(話の内容通りのことが本当に起こったのかどうかは信じていないようだったが)

最後に「Sの右手がどこにいったか知っているか?」みたいなことを聞かれ

右手が見つかっていないことを知った。

また、「Sが身体的にも精神的にも参っているので 友達にも話すな」

というようなことを言われた。

その日は教室に行くこともなく、母親と一緒に帰宅した。

夏休みまではあと1週間あまり残っていたが、

不思議なことにそのまま夏休みとなった。

終業式も通知表もないまま、友達とも会えずだった。

(通知表は後から宿題と一緒に母親が受け取っていた)

いつもなら夏休みには友達と毎日川へ泳ぎに行っていたが、その年はなぜか関東に住む叔父の家へ

行くことになり、夏休みの間中叔父の家で過ごした。

今考えると、しばらく遠くへ行かせておきたかったのかもしれない。

夏休みが終わると何事もなかったように新学期が始まり、教室には懐かしい顔が

集まっていた。が、Sの席は空いたままだった。

あの放課後のことを知らないクラスメートたちは 突然夏休みになったことや

Sのことをいろいろと言っていたが、

俺たちは警察や普段は会わない校長に釘をさされていたため

何も知らない振りをし、当事者同士でも触れてはいけない気がして話もしなかった。

ホームルームの時

 「Sが事故で大怪我をして入院したので当分登校しない」

 「ショックを受けているのであまり騒ぎ立てないように」

 「放課後、校内で遊ばないように」

等の説明があり、事情を知らない生徒は信じたようで、その後たまにSの話がでたが

なにもおきないまま冬になり、俺たちは4年生になった。

ただ、玄関から通じる職員室横の鏡以外は取り外されたこと、

職員通用口と 剣道部が練習する講堂以外の出入口が

放課後 施錠されるようになったこと、

それと放課後、グラウンドには親が交代で何人か立つようになったいた。

田舎の学校なので俺たちの学年は一クラスしかなく、

4年になっても全員同じメンバーだった。

ある時、女子生徒が先生にSの事を聞いていたが

「関東の大きな病院に転院し、退院後そのまま関東に転校した」と説明していた。

それっきりSが話題になることはなかった。

4年になった俺は2学期から唯一活動している剣道部に入った。

野球チームもサッカーチームも無かったし、生徒数自体が少なかったため

男子生徒の半数以上が入部した。

あのときのメンバーも何人か一緒に入部したが、AとBは入部しなかった。

以前は帰る方向が同じAやBと一緒に下校していたが、

あの時依頼お互い意識してか別々に下校することが多くなり、

剣道部入部後は下校時間がちがうこともあって一緒に帰ることはほとんど無くなった。

5年になったある日、その日は顧問の先生が会議か何かで練習が中止になり

久しぶりにAと一緒に下校した。

二人並んでテレビ漫画の話などをしながら歩いていると

Aが俺の顔を見ている気がしてAの方を振り向いた。

Aは俺を見ているのではなく、俺の背中ごしに反対側を見ていて

俺もAが見ているほうを振り返ったが田んぼやその先の小川があるだけで

何の変哲もない、いつもどおりの田舎の光景があるだけだった。

「何?」と聞きながらふたたびAを見ると、Aは俺の顔を見つめていて

「見えた?」と聞いてきた。

もう一度見ても変わらず誰もいないし、犬猫さえいない。

「何が? 何かあるん?」と聞く俺に Aは「なんでもない」と言うだけだった。

剣道の練習が休みの日に何度か帰りが一緒になり、2,3回同じようなことがあったが

いつも「なんでもない」とか「馬鹿が見る~。」だった。

その後は特別変わったことも無く平穏に過ぎ、町内唯一の中学校に進学した。

小学校時代の友人も全員が同じ中学校に進学したが、町内唯一の中学校ということで

生徒数もかなり多くクラスがばらばらになった上、また剣道部に入部した俺は

小学校時代の友人との付き合いも少なくなった。

中学2年になってしばらくたった頃だと思う。

中間テストの前だか何かで部活が中止だったとき、たまたまBと下校が一緒になった。

Bは帰宅部でクラスも別だったのでほとんど接点が無く、何年ぶりかに話をした。

Bはジャンプを毎週かかさず買っていて「部屋に3年分くらいある」という。

俺はそのままBの家に遊びに行くことにした。

自転車で並んで帰る途中の間もなくBの家という時、Bが俺の顔を見ていたので

Bの方を見ると俺ではなく俺の背中越しに驚いた顔をして遠くを見ている。

俺も同じ方を見ると、以前Aが見ていた光景。ちょうどあの場所。

しかし何にもない。 ただの田舎。

「Aも同じことをされたな」と思いながら、Bの方を振り向くと

Bは自転車を立ち漕ぎをしてはるか先を走っていた。

俺は「やられた」と思いながら立ち漕ぎして追いつこうとしたが、すでにかなり走っていたBには追いつけず、少し遅れてBの家に着いた。

庭にはBの自転車が倒れていて、Bの姿はみえなかった。

玄関は鍵が掛かっていて、裏に回ってもBはいなかったし、呼び鈴を押しても誰もでてこなかった。

漫画が読めなくなったことと、Bの態度に腹をたてた俺は、その後しばらくはBを無視した。

もともとクラスも違ったのでたまに廊下ですれ違うくらいだったが、

卒業まで一度も話すことは無かった。

中学を卒業した後、どうにか進学校に合格した俺は

小学校時代の友達とはバラバラになり、浪人を経て東京の私大に進学。

休みのたびに スキーだ、海だ、テニス合宿だと遊んでいたし

成人式もスキーに行って帰省せず、そのまま就職したため会うこともなかった。

(何人かと年賀状のやり取りはしていたが)

たまに3年のときのあのことを思い出すこともあったが

正直、本当にあったことかどうか 夢だったんじゃないかとか

記憶違いじゃないかとも思い始めていた。

就職して数年たったある日、結婚式の招待状が届いた。

小学校時代の友人で、あの時一緒にかくれんぼをしたTからだった。

Tの家は 地元では割と有名な料亭(というか大き目の料理店)を経営していて

結婚式場も別棟で営んでいた。Tも高校卒業後は家業を手伝っていたらしく

式も自分ちの式場で行われたこともあって小学校時代の友人が多数招待されていた。

あの時のメンバーもほとんど招待されており、AとBも出席していた。

披露宴は友人や来賓もほとんど顔見知りで楽しかった。

かなり酔っ払った俺たちはそれぞれ歩いて家路についたのだが、

方向が一緒だったA、Bと連れ立って歩いた。

しばらく3人で歩いていたが、不意にあの時のことを思い出した。

「おい、B。 お前なんであの時いきなり帰った?

 お前んちに行く約束してたろ?」

Bは「覚えてない。そんなことあったか?」みたいなことを言ってたが、

ちょうどあの場所(俺の背中越しに遠くを見てた場所)にさしかかった。

「ほら、このへんやったろ?  ジャンプ読ませてくれる約束やったやろ?

 そういやA、お前もこの辺でいっつも俺をひっかけよったな?

 あっちに何かあるんか?」

俺の言葉を聞いて、ふたりとも驚いたようにあの方向を見ていた。

そのあと、ふたりは「お前も?」とか言い合っている。

俺には意味がわからなかったが、急にBが「俺んちに行こう」

と言い出した。

Bの家に行ったのは二十数年ぶりだったが、Bの親が俺の顔をみてかなり喜んでくれた。

俺は地元では数少ない大学進学組で、

しかも東京六大学(マーチしかも一浪だが)で

今は東京で働いてるということで、ちょっと出来のいい友達と見られていた。

(田舎では六大学というと東京の出来のいい大学6校と勘違いしてる人も多かった)

しばらく両親の相手をした後 Bの部屋へ行った。

母親が持ってきてくれたビールを飲みながら3人だけになった時

AとBが話し始めた。

「A、あそこで何が見えた?」

「女の人。ちょっとうつむいた感じで、昔っから立っとった」

「さっきは?」

「いや。 最近はおらん」

ふたりは俺を無視するように話していたが、やがてAが俺に話し始めた。

「実は俺、見えるんよ」

Aの話は最初信じられなかった。

というか、また俺をからかってると思った。

だが話しているAも、一緒に聞いているBも笑っていなかった。

Aの話はだいたいこんな感じ。

 「最初は、俺だけじゃなくて皆も見えとると思っとった」

 「他の奴と一緒におるとき、『あの人、いっつも同じ所におるけど

  何しよるんやろ?』って言ったらソイツが『 ? 』ってなって。

  ちょうどお前(俺)ん時みたいに」

 「何回かそんなことがあって、『あ~、俺しか見えてないんかな』って」

 「そんで、あそこ通る時一緒におる奴が見えてるんか確かめてた」

俺は確かめられた中じゃ、かなり後の方だったらしい。

最初の頃は直接言葉で聞いてたらしいが、からかわれたと思って怒り出す奴もいたらしい。

それで俺の時みたいに、目線とかでソレがいる方を向けさせて

反応を見て判断してた、ということだった。

俺のときはすぐ見えてないと判ったらしいが、ごまかすために

わざと何回か同じことをやった、と。

他に見えてる友達がいるのか聞いてみると

 「一人もおらんかった。Bにも見えるって判ったのも、ついさっき」

Bも同じような感じらしく

 「おうおう」 とか 「俺も」 とか 「そうそう」 とか言ってた。

 「それからだんだん普通の人と俺にしか見えんヤツの区別がつくようになった」

それまでAの話を聞いていたBが

 「俺ん時も一緒やけど、あん時はいっつもうつむいてたくせに

  急にアイツが顔をあげて、目が合いそうになった」

 「何か目をあわせちゃいかんとか、俺が気付いてるのを気付かれちゃいかんって、

  気付かれたら追いかけてきそうで怖かった」

 「目はあわんかったと思うけど、もしかしたら気付かれたかもしれんって

  怖くなってダッシュで帰った」

あの日家に着いたBは、自転車を乗り捨てて玄関に鍵を掛け、なぜか仏壇の前に

布団を持ってきてくるまってたらしい。それしか思いつかなかったそうだ。

俺はまだ半信半疑で (というより、疑が8割以上で信は2割以下)だったが

Bの次の話で信が7割くらいに跳ね上がった。

 「小学校のとき、Sがケガしたことあったやろ?

  見えるようになったんは、多分あの時から」

Bは突然、二十数年前のことを言い出した。

 「あの時、お前はSの後ろから引っ張っとったやろ?

  そんで俺とAが横からSの腕を引っ張った。」

 「んで抜けそうになった時、鏡から何か指のない手みたいなヤツが出てきて

  Aの手を掴もうとして・・・」

そこでAが口を挟んだ。

 (A)「お前も見えたん? 俺びっくりして手ぇ離してしもた」

 (B)「やっぱそうか?後でお前に聞こうかと思うたが見間違いかもしれんし

     『知らん』って言われそうやったけん、黙っとった。

     そんで俺の手も掴もうとして俺も手ぇ引っ込めた。

     で、○○達が来て代わってもろた。あん時、ちょっと触られた。

     見えるようになったんは多分あの後から」

Aは触られた記憶はないらしく、また、何時から見えるのかはわからないと言っていた。

最初の頃は区別がつかなかったらしく、それ以前から見えていても普通の人と

思い込んでるだけかもしれないからだそうだ。

また、あの手のような物も自分の気のせいだと無理矢理思い込んだらしい。

正直3年の時のあのことは、記憶違いだったのかもしれないと思っていた俺は

突然出てきたSの話に、やっぱり本当のことだったとある意味スッキリするとともに

A、Bの話が本当のことだと信じ始めた。

それからはどこそこにこんなヤツがおるとか、あそこにもこんなヤツがおるなどと話し出した。

俺もあれこれ聞きたいことを聞いた。

A、Bに聞いたことをまとめるとこんな内容だった。

 「あいつらはいっつも同じ所におって、昼も夜も関係ない」

 「丑三つ時とか言うけど、時間もあんまり関係ない気がする」

 「いつもじっとしていて動いているところを見たことはない」

 「人に付いとるのも見たことない」

 「墓場に特別多くおるというわけでもない」

 「ヤツ等に気付かれたことはないが、見えてることを気付かれるとヤバそうな

  気がする」

俺は気になったことを聞いた。

 (俺) 「もし、こっちが見えてることを知られたらどうなるん?

      付かれるんか? 付かれたらどうするん? お前ら払えるん?」

 (AB)「知らん。払えん。だけん、おる所にはなるたけ近づかんようにしとるし、

      じぃ~っと見んようにしとる」

最後に前から気になっていて、いつか聞いてみようと思っていたことを聞いた。

 (俺) 「Sの手は何であんなになっとったん? 何に引っ掛かっとった?」

 (A) 「解らん。俺らが行ったとき、もう引っ掛かっとって、一人で

      引っ張りよった。聞いても『抜けん』しか言わんし」

 (俺) 「あの後、鏡はどうなっとった? 俺、Sの手ばっかり見よって

       鏡は見んかった。すぐ職員室に連れて行かれたし」

 (B) 「俺ちょうどSの斜め後ろのあたりにおって見よった。

      抜けた瞬間、鏡が正面から見えたけど、普通やった。穴はなかった。

      Sの手がどこに引っ掛かっとったのか不思議やった。

      職員室に行く途中で○○(別の友人)に言ったら

      『そんな訳ないやん。穴なかったらどこに引っ掛かるん?』って言われて

      説明できんで誰にも言えんようになった。でも鏡はきれいやった」

あの時、なぜあんなことになったのか、3人でしばらく話し続けたが

おそらく「Sがそいういう奴だったのだろう。結果的にSが呼び出したんじゃないか」

ということで無理やり納得した。

あれ以来Sがどこに行ってどうなったか、誰も知らなかったし

確かめようもなかった。

ふたりともBの家から俺の家までの間にはいないと言ったが

それでも怖かった俺は、Aに一緒に帰ってもらった。

東京に戻った後は、また地元の友達とはほとんど会うこともなく

数年すぎた。

ふたりのことは気にはなっていたが、何か近づきすぎると

俺まで見える人になってしまうんじゃないかと

あえて連絡しなかった。

ある日の夜、着信のあった母親に電話して驚いた。

Bが亡くなったとのことだった。交通事故らしい。

その時俺は福岡に転勤になり、新任課長代理研修というやつに出席するため

東京本社に来ていて一週間は帰れなかった。

通夜も葬式も帰れないこと、代わりに出席してほしいこと、

帰ったらお悔やみに顔をだすので伝えておいてほしいことを伝えた。

実家に帰った俺にさらに追い討ちがあった。

Aが亡くなったと。

事故か自殺かは不明だが川に落ちているのを、朝発見されたらしい。

友達や親に事情を聞いたが

 「Bの現場は交通量の多いところではなく見通しのいい場所なのに」とか

 「事故も起きたことない場所やのに。一本道やし」とか

 「Aは家族が寝ている夜中に出かけて橋から落ちたらしい」とか 

 「なんで夜中に川に行ったか家族もわからんらしい」とか

 「ふたりとも酔っ払ってはなかったらしい」とか

自殺じゃないかと思わせるような噂話しかなかった。

以上が、俺が体験したことです。

二人が言ったことが本当かどうか今はもう確認できませんし、二人が死んだ理由も

「見えること」が原因かどうかもわかりません。

AとBの「見える」話は、それとなく友達に振ってみましたが誰も知らないようです。

いまさら二人の話をしても信じてもらえないだろうし、

逆に「死者をネタにして愚弄するな」と言われそうなので、誰にも話してません。

もしかしたら、二人にからかわれただけかもしれません。

ただ、あの時Bが「Sの時から繋がってる」ような話をしたとき

俺には二人が本当の事を言ってると思えたし、二十数年が繋がったような気がしました。

あの話が冗談ならば、一緒に帰る時Aが笑って打ち明けたと思います。

その後一度だけ出席した同窓会でSの話題になったとき

かくれんぼをした奴等は同じようにあの事件を覚えていました。

ただ皆あいまいで、手首のこととか鏡の穴のことは誰も触れなかったので、

「ただ鏡で手を切断した」としか覚えてないようでした。

俺もあえて触れませんでしたし。

また、Bの家にお悔やみに行ったとき

Bのお母さんが言ってくれました。

 「いつか(俺)君がA君と一緒にウチにきたときがあったろう?

  あの次の日、Bはえらい喜んでてね。

  何か、むかし(俺)君と仲たがいした原因が自分にあって

  いつか謝りたかったって。やっと謝れたって。ゆるしてくれたって」

始まりとなったあの事件や、AとBが打ち明けてくれたあの日のことも

記憶違いや俺の空想ではなかったと思います。

幸いなことに、今でも俺には「見え」ません。

でも、二人が「あそこにはおる」といった場所には近づかないようにしています。

他の場所では、居るはどうかもわかりませんが、二人が「居る」と言った場所には

おそらく本当に居るし、万一そこで「見え」たら、もしソイツと目があったら・・・、

と考えると怖いのです。

俺は二人の話も含め、全て本当のことだったと信じています。

怖い話投稿:ホラーテラー 銀狼さん 

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こういう系の話しは、引き込まれるしやっぱり怖いですね…