つまらないと思うので覚悟して読んで下さい。
俺は少年野球チームの監督を勤めている。でも49日後で俺は監督をやめる。49日後は俺の退任試合だ。
俺には息子がいる。試合の日で12歳になるな。
「父さんの最後の試合はバースデーアーチ打てるといいなー」
と言いながら素振りに励んでいる。
自慢じゃ無いが、俺の息子は4番だ。今まで打ったホームランは数知れず…
でも、バースデーアーチの夢は叶わなかった…今日の夕方。練習の帰りに事故に巻き込まれて、死んでしまった。
葬式の日、俺は息子と約束した。
「俺の退任試合でもあり、お前の追悼試合でもある試合には、絶対に勝つ!」と。
試合当日、妻も見守る中、試合は始まった。
他の奴は気付いて無いが、俺は気付いていた。あいつがベンチの奥にいる!試合には出れないけど、チームを思う気持ちは変わらないようだ。
試合は初回に3点をリードされ、そのまま最終回となった。最終回ツーアウトランナー満塁、バッターは新しい4番。ツースリーからだった。
「カキ~ン」
バットからは快音が響き、ボールはセンター方向へグングン伸びる。…しかしあと一歩届かず、大きなセンターフライに終わった。
…負けた。約束を守れなかった。
その時ベンチから、
「ドンマイドンマイ惜しかったよ」
と大きな声が聞こえた。
皆一瞬驚いたあと、一斉に大声を張り上げて泣いた。
選手が皆帰ったあと、俺はベンチで一人で泣いていた。監督として選手との約束を、また父として子との約束を果たせなかったことが、悔しくて涙が止まらなかった。
その時声がした。
「お父さん。仕方が無いよ。相手が強すぎた。」
俺が何も言えずにいると、また息子が声をかける。
「お父さん。お願いがあるんだ」
俺は驚いた。滅多に俺に願ってこないあいつが俺に願って来たからだ。
「願いってなんだ」
「俺と、三球勝負してくれ」
やはり打席に立ちたかったのだろう。俺はすぐに了承した。
少年野球では、例えどんなに実力差があっても、全力勝負をしなくてはならない。それが礼儀だ。
一球目も二球目もこんしんのストレートで勝負した。二球とも空振りだ。そして三球目、同じ球を投げた、が…
「カキ~ン」
完璧に捕らえられた。打球はグングン伸び、そのフェンスを超えた。でも清々しい気持ちだった。…お互いに。
息子はダイヤモンドを一周したあと、俺に
「有り難う。最高のバースデーアーチが打てたよ」
と言い、次の瞬間消えた。
グラウンドにはバットとヘルメットだけが落ちていた。
「あいつは、無事成仏出来たんだ。きっと天国でも活躍してくれるだろう」
と思い、俺は球場を後にし、あいつの墓にホームランボールを供えて帰った。
怖い話投稿:ホラーテラー 初コメハンターさん
作者怖話