短編2
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幽霊船

しばらく前になるが,友達と自家用のクルーザー(海外まで航行できるサイズ)で,船旅をした時に体験した話.

8月1日

晴天の穏やかな海に俺達の船は出港した.

行き先はハワイ.

予定航行時間は約1週間.

8月3日

出航から2日後,それに出くわした.

辺りが急に寒気を帯びて,海が静かになった.

友人が船のソナーに見入っている.

「おい,何か外の雰囲気やばくない?

台風でも来るんじゃねーの?」

「・・・・.ちょっと,これ見てみ.」

友人はソナーの右端を指差して言った.

無機質な暗いソナーの画面には,方位を示すラインの他に,大きな影・・・

レーダー上のその影は大きさ的に200メートル程だろうか?

ちょっとした客船級の大きさだ.

「えっ!?これって他の船じゃねえの?」

「ああ,そうだな.」

「これ超でかいぞ!

て言うか,進路変えないとまずいだろ?

この船の進路の直線上にいるぞ.」

「わかってる.さっきから無線で呼びかけてるんだけど,応答が無いんだよ.」

「外国籍の船で日本語通じないんじゃないの?」

「・・・,いや,俺一応7ヶ国語位は話せるんだけど.」

そうだった.こいつは俺と違って頭いいんだった.

「それよりも気になるのが,この影の進む速度,普通じゃねえよ.」

確かに.

友人の一言で冷静に考えたら,その影に対して寒気がした.

ソナー上の影の航行速度は,目測だが約45ノット(1ノットは約2㎞/h).

普通の客船はこんな速度で航行できない.

「もしかして,どっかの軍隊の船じゃねえの?」

「いや,どんな所属の船でもこの大きさでこの速度は有り得ない.」

友人は正体不明のソナーの陰に顔面蒼白.

俺はとりあえず早く船の進路変えろよと,万が一の沈没に備えて脱出の準備.

すでに2隻の距離は船同士が急速旋回して互いを避ける事ができるギリギリまで縮まっていた.

「おい,とにかく舵切れ!!」

「・・・!!?

あ,ああ.何かに掴まってろ!」

友人が思いっきり舵を切った.船体が大きく揺れ,操舵室の机にあった物が床に落ちた.

怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん  

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