中編4
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どっきり

大学生のSの話。

その日Sは、大学の友人三人と共に、とある廃墟に来ていた。

見るからに不気味なその建物は、いかにも幽霊や得体の知れないものが出そうな雰囲気だった。

「な、なぁ。本当に大丈夫なのか、ここ?」

三人の友人の内、Aはかなりびびっていた。

「大丈夫だよ。何かおきたら走って逃げてくりゃいいだろ。」

「そうそう。万が一何か出たら、俺が成敗してやるよ。なんちゃって。」

余裕にかまえてるこの二人は、BとC。

「じゃあ、そろそろ行きますか。」

SはA、B、Cと共に、その廃墟に足を踏み入れた。

ひんやりと冷たい空気が、建物の中を漂っている。壁には所々に穴が空いていて、外見から想像するのよりも、中はもっとぼろかった。

「やべぇよ。ここ絶対なんかでるよ。」

Aはさっきからずっと弱音をはいている。

「確かにここには何かいるかも......」

Bは冗談まじりにそう言った。

「まあまあ、落ち着けって。」

Cがそう言った時、

パリンッ!!

「.......!!!」

何かの割れる音が、廃墟にこだました。

「おい!今の何だよ!」

Aは半分パニックになりながらBに尋ねた。

「か、風でグラスか何かが落ちたんだよ。」

こんな所にグラスなんてあるわけない。

BとCも、かなりびびっている。

.......ふりをしていた。

(よしよし二人とも演技がうまいぞ。)

Sは心の中でほくそえんでいた。

実はこれ、SがAに仕掛けたどっきりだった。

BとCはグル。Aをより恐がらせるため、協力してもらっているのだ。

さっきの音は、Sが別の友人Dに頼んでしてもらったことだった。

(さあ、つぎがくるぞ。)

Dが今度することは、足音たて、自分たちをおいかけまわしながら、行き止まりにうまくAを誘い込むこと。

こつ...こつ...こつ...

「何だ、今の足音.....」

SはAが足音に気づくよう、わざと大きな声で言った。

「えっ.......ほっ本当だ!!どうしよう!!」

狙いどうり、Aは完全にパニックになった。

「こっちに逃げるぞ!!」

Bはそう言って、打ち合わせどうりのルートを走りだした。

「ちょっ、ちょっとまって!!!」

AはBの後を追いかけた。

SとCは、二人の後を追いかけながら、必死に笑いをこらえていた。

(このままいけば、行き止まりだ........よしっ!)

S、B、Cは予定どうりAを行き止まりに誘い込んだ。

「いっ、行き止まりだっ!!!」

Aの顔は恐怖と涙でぐちゃぐちゃになっている。

(くくくっ、も、もう限界!!!)

「ぶぁっははははっ!!」

Sは耐えられなくなり、とうとう笑ってしまった。

「ぶっはははははは!!」

「あははははははは!!」

BとCもつられて笑い始めてしまった。

「えっ、何!なんでわらってるの!!?」

Aはかなり混乱していた。

その時、Dが正体を現した。

「わーっ!!」

「うわーーーっ!!........て、D?」

「あっひゃひゃひゃ!!!」

SとBとCの笑いは、よりいっそう大きくなった。

「な、何だ。そうだったのか.......よかったー」

SはAに全てをばらし、Dを含めた5人で廃墟を後にしようとした。

「いやーこんなにうまくいくと思わなかったな、S。」

「これも、Dが協力してくれたからだよ。しかし、Aの慌てっぷりは本当爆笑だったな。」

「本当、面白かったー。」

S達5人がどっきりのことを面白おかしく話していた時、

「ん?......何だ?」

Bが廃墟の奥の方を指差した。

「えっ、何..........あれは!!」

廃墟の奥から血まみれのワンピースを着た女が、こちらに走ってくる。

「で、出たーーー!!!」

S達5人は外に向かって一斉に走り出した。

「ここまで走れば、もう、だ、大丈夫だろ。」

S達は廃墟の外で座り込んでいた。

「ま、まさか本物が出るなんて。」

「本当だよ!」

「マジ、あせったー!なあ、B。」

「くっ、........くはははははっ!!」

「なっ!B、どうしたんだよ!」

「お、お前らちょっとまってろ。」

「えっ、Bどこ行くんだよ!」

なんとBは、廃墟の中へ一人で入って行ってしまった。

「なんだ、あいつ」

「もしかして、取りつかれちゃったのか!」

残されたS達がそんなことを話していると、

「お前ら、おまたせ。」

「B!お前なにして......うわっ!」

なんとBは、さっきの血まみれワンピースの女を連れてきたではないか。

S達は何がおきたのか分からず、ただただ呆然とした。

「おい、もう変装とけよE。」

「あっもういいの。いやー驚いた?2重どっきりでーす。」

女の正体は、Bの彼女のEだった。

Bは、S達に内緒で別のどっきりを仕掛けていたのだ。

「S、驚いたか?」

「はっははは、なんだそうだったのか。」

「ちくしょー俺達がだまされるなんて。」

Cはかなり悔しがっていた。

「みんなすっごくおどろいてたねー。.......あれ」

「ん、どうしたE?」

「みんな、6人じゃないの?」

「は?」

「私が追いかけてる時、確かに6人いたんだけど........」

あと一人とは、誰のことだ?

怖い話投稿:ホラーテラー 青二才さん  

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