ある交通事故を見てしまった。
横断歩道を歩いていた30才くらいの女性を信号無視した車が轢いてしまったのだ。
丁度俺と友人Yが女性に続いて渡ろうとしていたので、本当の目の前の出来事だった。
車に衝突された女性はスローモーションを見てるように吹き飛んだ。
10mくらい吹き飛び、アスファルトはうつ伏せに倒れた女性の血で赤く染まっていた。手や足も有り得ない方向だった。
焦った俺はすぐ119番に、Yは110番と別々に連絡した。
電話してる最中も女性を見たが、ピクリとも動かない。かなりのスピードで跳ねられたんだ即死かも知れない。
降りてきた運転手はハタチそこそこの兄ちゃんで、車の廻りでオロオロするばかり。
先に電話を終えたYが「兄ちゃん!そんなコトより被害者の方が優先だろ!」と一喝した。
兄ちゃんとYは女性の方へ、俺は救急車が分かりやすいように交差点の角にいた。
辺りが騒がしくなり、ふと女性の方を見ると数人の高校生らしき野次馬が集まって来た。
「うわ〜これすげぇよ!死んでじゃない?」とか「私人死んでんの初めて見た!」
Yは怒って野次馬に色々言ってるようだったが、俺は別のモノを見ていた。
倒れた女性を覗き込むように血だらけの女が立っている。
突然の事で理解出来ていないのだろう。表情はとても悲しそうだった……
──遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話