中編3
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少年時代

少年時代って聞くと普通は童心に帰って、幼い日の事を懐かしむ人がほとんどでしょう。

でも僕たちはその言葉を聞くたび、悪夢のような出来事を思い出してしまいます。

今からだいぶ前、「遊戯王ってアニメが始まるらしい」とかそんな話題が、当時小学生だった僕たちの中で持ちきりになっていました。

しかしある日色黒の少年(以下M)が、僕たちにとって興味深いことを話しました。

その時の会話は正確に覚えているわけではないのですが、大体の内容はこんな感じです。

M「薬局の隣で工場があるだろ?あそこに妖怪が出るんだって」

他の少年「ぜってえ嘘だろ。お前目立つためにわざと嘘とかつくじゃん」

しかしMは確信に満ちた表情で(ほんとは自分自身信じていなかったのかもしれませんが)、

「絶対に妖怪はいる」と断言しました。

どうせ嘘に決まっているけど、少年というのは相手の嘘を暴いて、そして「やっぱり嘘だったじゃん」と暴言を浴びせたりするのが実はこの上なく好きで、僕たちは後でMにどんなひどい言葉を言ってやろうとか考えながらその工場に訪れました。

しかしいくら待てど暮らせど「妖怪」は現れません。

「ほら、やっぱりいねぇじゃん、死ねよ!!」

「くそマジウゼぇよなお前、死ね!!」

みんな、罵詈雑言を好き勝手に飛ばします。

子どもっていうのは、どこまでも残酷に相手を追い詰めるもんなんだな、って今になって思います。

そしてMは「昼だからいないんだ、夜になったら絶対いる」と、後に引けなくなって苦し紛れに行ったのかはどうか分かりませんが、精いっぱいの反論をしました。

「夜になったら親が外に出してくれるわけないじゃん、やっぱ嘘だろ、死ね」とか、そんな悪口が聞こえても、Mは意見を変えようとしませんでした。

そして僕たちは夜になると(といっても八時過ぎくらいですが)、親には「花火をしに行く」と言って家を抜け出しその工場に集まりました。

「マジでいなかったら殺すからな!!」

他の子供たちは辛辣に、Mをなじります。

そしてMは「奥に行けばいる」と行って、みんなと一緒に工場の中に入ろうとしました。

さすがにこれにはほとんどの子供が怖じ気づきましたが、みんなでいるから大丈夫だろうって中に入って行きました。

あそこで引き返しておけばよかった、今では心からそう思います。

工場の中には、明らかに僕たちの中にいる誰のものでもない気配がしました。

衣擦れの音、息遣いの声、そして暗闇の中から投げつけられる視線。

どう考えても、普通ではありません。

一人が踵を返したのを皮切りに、皆は一斉に逃げ始めました。

そして出遅れた僕の手を、後ろから伸びた手がつかみました。

その感触は今でも覚えています。

小学校の時の知り合いにはその場に居合わせた奴もいて、そいつらは「錯覚とかじゃない」っていうけど、あの感触はどう考えても人間でした。

当時僕は腕が細いのを気にしていて、夏になっても長袖を着ていたことが多くその日も長袖でした。

そしてその袖には、手あかのようなものがびっしり付いてました。

腕を掴まれた時からずっと震えが止まらなかったけど、帰ってそれを見たらさらに背筋に寒気が走りました。

今思い出しても後ろからまた手を掴まれそうで怖いです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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