「最近変な男に付きまとわれてるのよね」
「それってストーカーじゃん!どんな男なの?特徴は?」
友人がストーカーに付きまとわれていると聞いてAは友人が心配になった。
「特徴は〜そうだな〜夜しか現れないから暗くてはっきりとは分からないけど、小太りの中年のおじさんて感じかな。これじゃ特徴とは言えないかな」
「だね…情報が少な過ぎるな〜。もう少し詳しく分かればいいんだけど」とA。
「まあもう少し様子見てみるよ。勘違いかも知れないし」
「うん。何かあったら私に言って。力になるから」
「ありがとう。Aは優しいね。今日はごめんね!」
「いいよ。また明日職場で会おうね!」
そう言って二人は分かれた。
それから一週間が経ったある日。
Aの元に友人から電話がかかって来た。
「もしもし」
「A、私怖い。すごく怖い」
「どうしたの?」
「昨日、私が使ってる動画サイトで、私の名前の動画見つけたの。そしたら…」
「そしたら?」
「あの男が動画に出てたの。そして私の名前を何度も何度も呼んでるの。そして最後に、自分の部屋に私を飾りたいみたいな事言って終わるのよ」
「え!怖。明日警察行きなよ!」
「警察行ったらいつか復讐されそうで怖い」
「警察行かなくても今のあなたは危険なのよ!」
「ごめん!やっぱり警察は無理だよ。…電話中悪いけどちょっとコンビニ行ってくるよ。買いたい物あるから。」
「そうか。無理にとは言わないけど本当に気をつけなよ。コンビニから帰ったら連絡して。心配だから」
「分かった。ごめんね。行ってきます」
電話は切れた。
それから一時間経っても友人から連絡が来ない事に心配になったAだったが、あまりしつこく安全を確かめるのは悪いと思い、電話はしなかった。
ふと友人の言っていた動画が気になったので、サイトを開き、友人の名前で検索すると2件の検索結果が表示された。
1件目は友人の名前がタイトルだったが、2件目のタイトルは友人の名前の後に「飾った」と付け加えられていた。
何か嫌な予感がしたAは2件目の動画を開いた。
すると一人の小太りの気持ち悪い男が画面全体を塞ぐように座っていた。
顔は満面の笑みで、すごく嬉しそうだ。
「今から僕のお部屋を紹介するね!見ててね!」と男が言った。
男は立ち上がり歩き始め、画面から男の姿が消えた。
しかし次の瞬間!
画面の向こうで一人の女性が血まみれで座り込んでいる姿がAの目に写った。
Aは悲鳴をあげた。
女性は血で顔が真っ赤だったがAはすぐに「友人だ」と思った。
「なんなのよこれ…どういう事…」
Aはすぐに携帯電話を手にし、友人に電話をかけた…が、友人は出ない。
「間違いない。あの女性は友人だ」とAは思った。
しかしそのまま呼び出ししていると一人の男が電話に出た。
「もしもし」
「あなたは誰ですか!私の友人はどうしたんですか!」
しばらく口を閉ざした男だったが、ようやく口を開いた。
「あなたは僕の部屋の飾りの友人さんでしたか。
Aは怖くなり電話を切った。
そしてすぐに警察に連絡した。
Aはその夜、恐怖に震えながら泣いた。
また、友人を守ってやれなかった自分を責めた。
すぐに犯人は捕まった。Aの素早い通報や、他の沢山のユーザーの通報によって犯人逮捕となった。
犯人は異常な精神状態らしく、責任能力もないという事が精神鑑定の結果明らかとなった。
Aの友人を殺したのも「抵抗されたから」という理由だけ。
犯人が捕まったと同時に、警察からの連絡で、殺されたのが友人である事を知らされたA。
犯人が逮捕されても、Aの友人を守ってやれなかったという後悔から生まれた心の傷は癒えなかった。
しかししばらくして警察からある封筒が手渡された。
中には手紙が入っていた。
友人からAに宛てた手紙。
こう書かれていた。
「Aへ。Aには本当にいろいろ助けられるし、一緒にいて楽しいし、感謝しているよ。でも私そろそろAに会えなくなるかも知れない。いなくなる…なんかそんな予感がするんだ。上手く言えないけど。その時はごめんね。Aは優しいし、私の事いつも心配してくれるから、私がもしいなくなったら、私を守ってあげられなかったって自分を責めてしまうかもしれないけど、そんな事しないで。私はAを責めたりしないし、Aにも自分を責めないでほしい。そんな事されたら私悲しいし。Aには明るく過ごしてほしいな。人生を楽しく過ごしてほしい。もしいなくなった時の為に先に言っておくね。本当にありがとう」
と書かれていた。
友人は自分が殺される事を予感していたのだろうか。
それはAには分からなかった。
この手紙を読み終わった後、Aの心の傷少しだけ癒えた。
と同時に涙が流れてきた。
Aも空を見て友人に言った。
「本当にありがとう」
怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん
作者怖話