みっつの選択 【ひとつ目】

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みっつの選択 【ひとつ目】

今日はエイプリルフールだ。特にすることもなかった僕らは、いつものように僕の部屋に集まると適当にビールを飲みはじめた。そして、退屈な僕らはひとつのゲームを思いついた。

嘘をつきながら喋る。そしてそれを皆で聞いて酒の肴にする。くだらないゲームだ。だけど、そのくだらなさが良かった。

トップバッターは僕で、この夏ナンパした女が妊娠して実は今、一児の父なんだ、という話をした。初めて知ったのだが、嘘をついてみろ、と言われた場合、人は100%の嘘をつくことはできない。

僕の場合、夏にナンパはしてないけど当時の彼女は妊娠したし、一児の父ではないけれど、背中には水子を背負っている。

どいつがどんな嘘をついているかは、なかなか見抜けない。見抜けないからこそ楽しい。そうやって順繰りに嘘は進み、最後の奴にバトンが回った。そいつは、ちびり、とビールを舐めると申し訳なさそうにこう言った。

「俺はみんなみたいに器用に嘘はつけないから、ひとつ、作り話をするよ」

「なんだよそれ。趣旨と違うじゃねえか」

「まあいいから聞けよ。退屈はさせないからさ」

そう言って姿勢を正した彼は、では、と呟いて話を始めた。

続く

怖い話投稿:ホラーテラー をわりさん  

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