中編3
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転ばない理由 1

これは去年の今頃の事です。

俺は昔から転んだ事がなかったんです。

不思議なくらい転びませんでした。

極稀に転びそうになってもマトリクスのような体勢で耐えたり側に居た人に支えてもらったりと、転んだ記憶がありませんでした。

ですがある時、派手に転んだんです。

その時は頭の中が?でいっぱいでした。

あれ?なんで?

膝がマジで痛い。

なんで転んだんだろ?

転ばないのが普通だったので、立ち上がるのも忘れてかなり混乱しました。

まぁいいかと、立ち上がり歩いているとまた転びました。

その時は本当に混乱して膝の痛みも流れる血も気にならなかったです。

今までなかった事が二度もあり怖くなり通り掛かったタクシーに手を上げました。

とりあえず、家まで帰ろう。それしかなかったです。タクシーに乗るまでの数メートルの間にまた転びました。

同じ所ばかりぶつけていたようで膝の感覚がありませんでした。

それでもタクシーに乗り込みました。

運転手さんはジーンズが真っ赤な事に気付いて病院ですかと聞いてきたんですが、その時は家に帰りたい一心でした。

家に家にと伝えました。

運転手さん困ったように、はいと言い車を出しました。

どれくらいたったかは混乱していて解らなかったですが、メーターを見ると3000円に差し掛かっていました。

あれ、そんなに家まで遠くないし乗った所からならメーターが一回上がるくらいで着くはずなのに。

そーいえば、家にとは言いましたが住所は言ってないことに気が付きました。

運転手さんに聞きました。何処に向かっているんですかと。

お客さんが言った所ですよ。

混乱してはいましたが言ってないことだけは解ります。

外の景色は見たことがない所でした。

ただ、ひたすら続く一本道。え?どこ?

さらに先に進むと小さなパーキングがあり、タクシーが止まりました。

運転手さんが着きましたと言い料金を告げました。

意味が解らなかったのですが、料金を払い降りました。

膝の痛みが強くなりパーキングエリアに座り込みました。

どうしようかと考えても頭が働きません。

喉が乾いて仕方ありません。小さなパーキングでしたが、自動販売機とトイレがありました。

とりあえず冷たい物でもと自動販売機の前まで行きジュースを買い開けながら元の位置に戻ろうとすると転びました。

また膝かと本当に痛かったです。

ジュースは俺の代わりにアスファルトが飲んでくれました。

はぁツイてない。

もう一本買おうと立ち上がり財布を開けると小銭がありませんでした。

仕方なく千円札を入れますが、ウィーンと何度やっても戻ってきて10回目くらいで諦めました。

どんだけツイてないんだよ。戻ろうとしたら転びました。

さっきのリプレイみたいでした。

転び方も転んだ位置も。

さっき落としたジュースが目に入りました。

少し入ってる。

情けなかったですが、缶を拾い飲みました。

ほんの一口分くらいでしたが、生き返ったような気分でした。

膝はかなりの出血でジクジクと痛みが増してきています。

とりあえず、家に電話して迎えに来てもらおうと携帯を出すと画面がひび割れて電源が入ってません。

何度も転んだせいで壊れてました。

どれくらい座り込みぼーっとしていたか解りません。少し薄暗くなってきた頃に遠くに車が見えました。

生まれて初めてヒッチハイクをしようと立ち上がり、道まで膝を引きずり歩くと転びました。

もういい。疲れた。

どうせ、ヒッチハイクなんかしても止まってなんかくれないし。

予想に反して車が止まってくれました。どうやら、倒れてたのが気になり止まってくれたみたいです。

普通にヒッチハイクだったら止まらなかったと言っていました。

つづく

怖い話投稿:ホラーテラー 鍵仁さん  

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