中編4
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小石

今回は、二年前に引っ越した時の事を書きたいと思う。

俺がその時契約したアパートには、残念だが駐車場がついていなかった。

まぁ、家賃も安いし仕方ないんだけど。

でも不動産屋が言うには、目と鼻の先に 月極め駐車場があるから大丈夫、とのことだった。

早速担当の人と駐車場を見に行くと、そこはアパートに確かに近かった。

徒歩一分といったとこか。

見た限りでは 空いているスペースはあと一台分しかないようだ。

「あの一応聞きたいんですけど、ここ以外の駐車場って…。」

「あ、はい!ここ以外になりますと〜、あちらに看板が見えますよね?

あの場所になります!徒歩三分くらいですかね。」

張り切って言ってくれてるが、看板なんて ちっとも見えない。

俺の目が悪いって事を差し引いても、とても三分でたどり着くとは 思えなかった。

「ここにします。やっぱり近いのが1番いいですからね。」

「そうですか?では連絡しておきますので、今日から車はこちらに置いて下さいね。」

そう言われ、俺はその日から車を その場所に置く事になったわけだが……。

異変はすぐに現れた。

次の朝 仕事に行くために駐車場へ行くと、ボンネットに何かがポツンと乗っかっているのに気がついた。

「??…なんだ?」

近づいて見てみると、それは直径3㎝くらいの小石だった。

「なんでこんな所に?」

不思議には思ったが、その時はあまり深く考える事はなく、小石を捨て 俺は仕事へとさっさと向かった。

次の朝駐車場に行くと、俺の車に また小石が乗っていた。

今度は二つ…。

なんなんだよ!子供のいたずらなのか?

小石をどかしてボンネットをよく見てみたが、傷などはついていない。

なんのつもりで小石を置いていくのかが わからない。

周りの車には、何もされていないようだった。

猫の足跡とかなら構わないが(むしろ歓迎するが)、人にいたずらされるのは気分が良くない。

しかし時間もないので、その日も俺は 仕事へと急いだのだった。

仕事から帰った俺は、一枚の紙に

『いたずらはやめて下さい。

続けるようなら、警察に通報します。』

と書いて、ワイパーに挟んでおいた。

小石くらいで 本気で通報する気などはなかったが、こう書けば『警察』にビビってやめるだろうと 俺は考えていた。

しかし翌朝、俺の期待も虚しく 小石は三つに増えていた。

なんで!?紙は飛ばされたりせずに、ワイパーに挟まれたままだ。

読まなかったのかな…。

いや、読めなかったとか?

漢字が読めないくらいの小さい子供だったら…。

そう考えて、その可能性はほぼない事に気がついた。

俺が昨日帰って来たのは 夜の10時過ぎだ。

そして今は朝の6時…。

その間に、小さな子供がいたずらしたとは考えにくい。やっぱり大人か。

もしかして、俺以外にもこの場所を狙ってる人がいたのかも。

で、俺が先に契約してしまったから、嫌がらせしていたりして。

いくら考えても、それくらいしか思いつかない。

仕方なく仕事へと出かけたが、昼休みに不動産屋に電話をかけてみた。

「あの、駐車場の事で話しがあるんですけど。」

「え、あ、はい。駐車場…ですか?」

「ええ。なんか車にいたずらされてて、困ってるんですよね〜。

あそこ防犯カメラとかってありましたっけ?」

「あ〜…。防犯カメラはなかったように思います、申し訳ありません。

私どもも見回りを強化しますので、また何かありましたら ご連絡下さい。」

そこまで言って、向こうから電話を切られてしまった。

なんだ、これ。

言葉は丁寧だが、なんだか嫌な感じだ。

もういい!明日は休みだし、自分で犯人を捕まえてやる!

こんなくだらない嫌がらせする奴に、説教かましてやる!

そう決めた俺は、仕事が終わってから 車の中に潜む為に 毛布と飲み物を持ち込み、後ろの座席へと乗りこんだ。

前のシートをかなり後ろへずらしている為、パッと見は俺が乗っている事は気づかれないはずだ。それにしても ここは暗い。

明かりは駐車場のはじに一つ街灯があるが、俺の所まではほとんど光は届かない。

毛布に包まりしばらく携帯で遊んでいたが、さすがに飽きてきた。

そもそも、今日も相手が来るとは限らないんじゃないか?

もしかしたら今日に限って 来なかったりして…。

時刻は、0時をとっくに過ぎている。

少し眠くなった俺は、うとうとしはじめていた。

どれくらい寝ていたのか、俺は寒さで目が覚めた。

七月だというのに 震える程に寒い。

顔まで毛布をかぶろうとしたその時、俺の車の周りを誰かがゆっくりと歩いている事に気づいた。

「誰か いる……?」

頭が恐怖を感じるより早く、全身に鳥肌が一気に立つ。

この感覚はマズイ。

生きている人間じゃない…。

思わず俺は 息を潜めた。

怖い話投稿:ホラーテラー 雀さん  

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