中編4
  • 表示切替
  • 使い方

狐憑き

祖母と兵隊さんを投稿させてもらった者です。

この話は小学3年生の時、祖母の家に行った時に体験した話です。

俺が小学生の頃、長期休みの度に祖母の家に行ってました。

祖母が住んでいたのは小さな地域で、一応町でしたが周辺には100人くらいしか住んでいませんでした。

祖母は一人暮らしだったので、子供心に「きっと寂しい思いをしているに違いない」と思っての事でした。

祖母は近くの船大工さん達のご飯炊きをしていたので

朝6−8

昼11−13

夕16−18

は歩いて仕事に行ってました。

いま考えたら俺が遊びに来ていたので、合間は帰って来てたのだと思います。

朝夕は必ず俺も一緒に祖父の仏壇にお経を上げていました。

祖母の家は一人で暮らすには大きくて、仕事に行っている間一人取り残された俺は、トイレに行くのも怖かったものです。

そんな怖がりの俺はお昼になると、毛布を頭から被りながら「あなたの知らない世界」を見るのが好きでした。

(昔テレビで放送されていた、投稿者の恐怖体験をドラマ化したもの)

いつものように「怖かった…」と震えていると、郵便物が届いたようでした。

俺は外に出ると10mくらい先、道路挟んだ向かいの家(かなり大きな家)の囲ってあるコンクリートの塀の上に、20才くらいの男が足をプラプラさせ座っていました。

坊主頭でランニングシャツに短パン、何か異様な雰囲気を醸し出していました。

それはすぐに気づきました。

目が虚ろで口は開きっぱなしで涎が垂れています。

怖くなった俺はポストから封筒を取り出し、すぐに家の中に戻りました。

ちょくちょく窓から覗いていたのですが、男はずっと塀の上に座っていたようです。

暫くして祖母が帰って来ました。(男はまだいます)

「ばあちゃん、〇〇さん家の塀に座っている男何か変じゃない?昼からずっといるよ」と俺が尋ねると祖母は

「あぁ、△△さん家の息子(以下A)だよ。かわいそうに狐憑きらしくて最近親元に帰って来たんだよ」

「俺なんか怖いよ…」

「そんなに怖がらなくても大丈夫、昼から夕方迄ただあそこに座っているだけだから」

そう言われましたが、不安感は取り除かれませんでした。

それ以来、俺はAのいる時間は外に出るのを止めました。

Aは次の日もその次の日も、同じ場所、同じ格好で座っていました。

ある日朝から雨が降っていて、さすがに今日は来ないだろうと思っていると、Aはやって来たのです。

母親らしき人が付き添って来て、Aが隣の家の石垣から塀に移ると、母親が一緒に登ってAにカッパを着せているのです。

それを見た俺は一層恐怖感が増しました。

数日後テレビを見ていると、電話が鳴りました。

電話は祖母からで「忙しくて昼戻れないから、Kちゃん飯場にご飯食べに来なさい。飯場は☆☆の近くの◎◎って所だから」との事です。

俺は窓を覗きました。

Aはいつものように座っています。

外には出たくないけど、腹は減っている。怖いのを我慢して俺は出かける事にしました。

外に出て、なるべくAを見ないように知らん顔して歩き出すと

ジャリッ…と何か踏みしめる音がしました。

と、言うか外には俺とAしかいないので、明らかにAが塀から飛び降りた気配がしたのです。

振り向くと、Aは虚ろな目を向けヨタヨタと歩み寄って来ました。

『うおぉぉぉ、マジか?夕方迄降りないんじゃなかったのか!?』

と思った俺は走り出しました。

すると、さっきまでヨタヨタと覚束ない歩き方をしていたAが追いかけて来たのです。

俺は完全にパニックでした。

『どどど…どうしょう!どうしたらいいんだ!?』

何故か飯場まで付いて来られたらマズいと思った俺は、海の方へ走って行きました。

なんとか撒いたのですが、結局家には帰れない、飯場にも行けない、でご飯も食べず夕方まで海を彷徨いていました。

この事を祖母に話しましたが「Aが何かに興味を示すなんて驚いたねぇ…」と言うだけです。

翌日、昨日あんな事があり不安でしたが「今日は帰って来れる」と祖母が言っていたので、怖いのを我慢して家で待っていました。

郵便が届いても外に出る事なくじっとしていました。

「あなたの知らない世界」を見ていた時の事。

背後から突然バン!という音がしました。

驚いた俺が振り向くと、窓に顔をくっつけたAがガラスに涎を垂らしながら両手でバンバンとガラスを叩いています。

相変わらず虚ろな目を俺に向けて…

「うわぁぁぁん!」

どうする事も出来ない俺は泣き出してしまいました。

そして…

ガチャーーン!!

と窓ガラスが割れ、血まみれのAが「ウォッウォッ!」と訳の分からない奇声を上げています。

しばらくして、音を聞きつけた隣のおじさんが来てくれましたが、血まみれのAが自分の血をペロペロ舐めているのを呆然と見つめていました。

その後、祖母も帰って来てAの母親がガラス代を持って謝罪に来ました。

俺にお菓子も買ってきてくれたようですが、奥に籠もって出て行かなかったので、何を話したかは分かりません。

ただ翌日からAが塀の上にいる事はなくなりました。祖母は遠くの病院に入ったと言ってましたが…

未だに思い出すと寒気がします。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ