中編6
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ペットの『こめ』

当時、私がクラブで働いていた時の出来事です。

幽霊的な部分は出てきませんが不思議な話です。ご理解の上、お読み頂ければ幸いです。

私は、クラブで働くと同時にワンルームマンションで一人暮らしを始めた。

引っ越し後の荷物の移動の際、実家近くのペットショップにて、一人暮らしのパートナーにと『インコ』を購入する事にした。

名前を『こめ』と名付けた。(変な名前でスイマセン)

こめは元気にすくすくと育ち、♂の性質もあってか、

『こめちゃんオハヨウ!』

『ホー…ホケキョ!』

『オイシイネー!』

『どしたん?』

『E(私の名前)な〜、Eな〜、あほぅ♪』(このセリフを教えた覚えはありませんが…)

など、たくさんの言葉を覚え、本当に可愛い姿を山ほど見せてくれていました。

特にお気に入りの言葉は

『出ちゃう!』

関西で育ち、関西で働いていた私に取っては、一度も言う機会がないセリフですが…カゴから出たがる『こめ』に対し、『出たい?』と聞く私の言葉を、インコ訛りで覚えてしまったのか、近づく度に『出ちゃう!』と言い、カゴから出してもらうのを催促するのでした。

仕事柄、夕方から深夜3時近くまで家を空けるのですが、家にいる時間帯は出来るだけ『こめ』を出し、肩に乗せたり、私がシャワー中には、シャワー横の洗面台で水浴びをさせたり、常に一緒に過ごしていました。

ある日曜日、遠方にいる友人M美から電話がかかってきました。

M美とは、この仕事を始める前からの付き合いで、一人暮らしを始めてからも、2時間以上かけて私の部屋に遊びに来てくれたり、かなり頻繁に会う仲でした。

そんなM美と、電話越しに喧嘩をしてしまったのです。

肩を落とす私の様子を見てか、『こめ』は私の顔を覗き込み、心配そうにしてくれていたのが印象的でした。

その日、私は仕事だったのですが、仕事中にもM美からのメールや着信がありました。

いつも土日平日・時間も問わず来てくれるM美に対し、たまには私の方からもサプライズで会いに行って仲直りするかぁ…。と思い、家に帰った私は、M美の住む街へ、会いに行く事を決心しました。

『こめ、M美んトコ行ってくるし、お留守番しといてね。帰ったら出したげるね。』

そぅ『こめ』に告げると、私は家を後にしました。

『こめ』は『頑張って!』と訴えかけるように私を見つめていました。

季節は冬。時間も真夜中3時半。

当然タクシーもなく、電話で呼び出そうとしても、行き先や時間帯が尋常ではない為か、

『そっち方面は雪が心配やな〜。スタッドレス履いてる車がないから…ちょっと行けへんな〜』

『ほか当たってくれるか?』

などの対応ばかりで、ようやく乗る事が出来たのは朝5時近くになってからでした。

『今年1、高額のお客さんに出会えたゎ〜♪ありがとうなお姉ちゃん!』

笑顔で去っていったタクシーを見送り、M美の家のインターホンを鳴らしました。

…………。

朝7時過ぎ。私が着く寸前に、仕事に出たのかM美とは会う事が出来ませんでした。

駅近くの喫茶店でコーヒーを飲みつつ、M美にサプライズで仲直りしに来た事をメールで伝え、何の収穫もないまま、電車で帰る事にしました。

『…ただいまぁ〜。』

私はブーツを脱ぎ、『こめ』の方へ歩きながら

『M美に会えへんかったゎ〜…涙』

と話しかけました。

………。

何も反応がありません。

鳴き声も、動く音も…。

………。

『こめ』の反応がありません。

短い廊下を抜け、部屋の電気を点けると共に、私は叫んでいました。

『こめ!!!』

『こめ!?』

…………。

次の瞬間、私は言葉を失いました。

カゴの隅っこで、『こめ』は、冷たくなっていたのでした。。。

『ごめんね…。ごめんね…。』

冷たくなった『こめ』を両手に乗せ、なでながら何度も何度も謝り、涙を流しました。

次の日、休みだった私は『こめ』を綺麗な花柄のキッチンペーパー?で包み、小さな箱に入れて、実家に連れて帰りました。

当時、高校生だった弟が学校から帰ると同時に、庭に小さな穴を掘ってくれました。

『こめ』の埋葬が終わると、一緒に手を合わせてくれていました。

『こめ、歴代のインコもいるからね。向こうで、お友達になってね。』

お別れの時間が過ぎ、私は一人暮らしのマンションへ戻る事にしました。

電車を降り、駅を出ると、東西に大きな商店街が続いているのですが、私の家は駅から西方向にあります。

なのに、誰かに呼ばれるかの様に、東の商店街側に足が向かうのでした。

引っ越してから、特に用もなかったので、東側の商店街に行ったことすらありませんでした。

数分歩いたところで、身体がピタッと止まりました。

商店街を抜けきる手前、右側に、わりと大きなペットショップがありました。

『!?』

ビックリしたのも束の間、またも呼ばれるかの様に、足は店内へ…。

そして、他の物には目もくれず、どこに何が置いてあるのか知っているかの様に、インコの雛の入ったケースの前に着いたのです。

皆様お察しの通り、『こめ』を失ったばかりの私は、お恥ずかしながら、そこで衝撃の出会いをしてしまうのでした。

ケースの中には5〜6羽インコがいました。

その中に、ひときわこちらにアピールしてくる1羽。

そうです。どう見ても『こめ』なんです。うり二つなんです。

天からも、その子からも

『また一緒に暮らそう』

と言われてる気がして、私は『こめの生まれ変わりだ!』と確信し、その子を迎え入れてあげる事にしました。

第二の『こめ』として。。。

新しい『こめ』は、以前の『こめ』同様、すぐになつき、同じしぐさをしたり、本当にソックリそのものでした。

(ややこしいので、以後『こめ2』にしますね)

ただ少し違ったのは…言葉をなかなか覚えてくれない。

何度も何度も教えたのですが、何も話してくれませんでした。

ある日、カゴから出す際

『出ちゃう!』

と言いながら飛び出して来たのです。

もちろん、そんな言葉は教えていませんし、、、けれどやっぱり、『こめ1の生まれ変わりに違いない』と思い、嬉しくなりました。

『こめ2』は、相変わらずで、かわいく元気に育つものの、言葉は『出ちゃう!』の一言のみしか話しませんでした。

そんな『こめ2』との生活の中、仕事前に一声を掛けようとした時、異変に気付きました。

『こめ2』が、苦しそうにしている…。

動きも鈍くなってきた…。

お腹が少し腫れている…?

『こめ1』を看取ってやれなかった事もあり、心配になった私は、次の日の朝に獣医に診せに行こうと決心し、家を出ました。

仕事が終わり、急いで家に帰ると、すぐに『こめ2』の様子を見ました。

『……あれ?』

なぜか、仕事前の様子とは正反対で、元気に動き回り、体つきもシャープになっているのでした。

…!!

その直後、身体に電気が走ったかのように私は驚いたのです。

…タマゴが……。

そうです。『こめ2』が卵を産んでいたのです。

♂と思いこんで育てていたのに、♀だった事にも驚きましたし、お腹が膨らんでいたのは、卵のせいだった事にも驚きました…。

が!

いちばん驚いたのは、卵が落ちていた場所でした。

以前『こめ1』が冷たくなっていた場所でした。

直感的に『これは何かある!こめ1からのメッセージに違いない!』と思った私は、その日眠る事なく、『こめ2』と過ごしていました。

数時間が過ぎた時でした。

『こめコロシタ。M美ガ。M美ガ…こめギューした!ギューした!』

と突然、叫びながら飛び始めました。

偶然かもしれませんが、私がM美のところへ向かって会えなかった時間と同じ時間帯でした。

あの喧嘩の日以来、M美とは仲直りする事なく音信不通で、『こめ1』が死んでしまった事はもちろん、『こめ2』を飼っている事も知らないはずです。

M美を疑いたくはないですが…何かあったのでしょうか…。

『こめ2』は、その日限りで、卵を産む事もなく、怖いセリフを発しながら飛ぶ事もなく、今も元気に『出ちゃう!』と言いながら過ごしています。

読んでいただいた皆様、長々と失礼しました。

ありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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M美ちゃんに、復讐しようか。