当時、私がクラブで働いていた時の出来事です。
幽霊的な部分は出てきませんが不思議な話です。ご理解の上、お読み頂ければ幸いです。
私は、クラブで働くと同時にワンルームマンションで一人暮らしを始めた。
引っ越し後の荷物の移動の際、実家近くのペットショップにて、一人暮らしのパートナーにと『インコ』を購入する事にした。
名前を『こめ』と名付けた。(変な名前でスイマセン)
こめは元気にすくすくと育ち、♂の性質もあってか、
『こめちゃんオハヨウ!』
『ホー…ホケキョ!』
『オイシイネー!』
『どしたん?』
『E(私の名前)な〜、Eな〜、あほぅ♪』(このセリフを教えた覚えはありませんが…)
など、たくさんの言葉を覚え、本当に可愛い姿を山ほど見せてくれていました。
特にお気に入りの言葉は
『出ちゃう!』
関西で育ち、関西で働いていた私に取っては、一度も言う機会がないセリフですが…カゴから出たがる『こめ』に対し、『出たい?』と聞く私の言葉を、インコ訛りで覚えてしまったのか、近づく度に『出ちゃう!』と言い、カゴから出してもらうのを催促するのでした。
仕事柄、夕方から深夜3時近くまで家を空けるのですが、家にいる時間帯は出来るだけ『こめ』を出し、肩に乗せたり、私がシャワー中には、シャワー横の洗面台で水浴びをさせたり、常に一緒に過ごしていました。
ある日曜日、遠方にいる友人M美から電話がかかってきました。
M美とは、この仕事を始める前からの付き合いで、一人暮らしを始めてからも、2時間以上かけて私の部屋に遊びに来てくれたり、かなり頻繁に会う仲でした。
そんなM美と、電話越しに喧嘩をしてしまったのです。
肩を落とす私の様子を見てか、『こめ』は私の顔を覗き込み、心配そうにしてくれていたのが印象的でした。
その日、私は仕事だったのですが、仕事中にもM美からのメールや着信がありました。
いつも土日平日・時間も問わず来てくれるM美に対し、たまには私の方からもサプライズで会いに行って仲直りするかぁ…。と思い、家に帰った私は、M美の住む街へ、会いに行く事を決心しました。
『こめ、M美んトコ行ってくるし、お留守番しといてね。帰ったら出したげるね。』
そぅ『こめ』に告げると、私は家を後にしました。
『こめ』は『頑張って!』と訴えかけるように私を見つめていました。
季節は冬。時間も真夜中3時半。
当然タクシーもなく、電話で呼び出そうとしても、行き先や時間帯が尋常ではない為か、
『そっち方面は雪が心配やな〜。スタッドレス履いてる車がないから…ちょっと行けへんな〜』
『ほか当たってくれるか?』
などの対応ばかりで、ようやく乗る事が出来たのは朝5時近くになってからでした。
『今年1、高額のお客さんに出会えたゎ〜♪ありがとうなお姉ちゃん!』
笑顔で去っていったタクシーを見送り、M美の家のインターホンを鳴らしました。
…………。
朝7時過ぎ。私が着く寸前に、仕事に出たのかM美とは会う事が出来ませんでした。
駅近くの喫茶店でコーヒーを飲みつつ、M美にサプライズで仲直りしに来た事をメールで伝え、何の収穫もないまま、電車で帰る事にしました。
『…ただいまぁ〜。』
私はブーツを脱ぎ、『こめ』の方へ歩きながら
『M美に会えへんかったゎ〜…涙』
と話しかけました。
………。
何も反応がありません。
鳴き声も、動く音も…。
………。
『こめ』の反応がありません。
短い廊下を抜け、部屋の電気を点けると共に、私は叫んでいました。
『こめ!!!』
『こめ!?』
…………。
次の瞬間、私は言葉を失いました。
カゴの隅っこで、『こめ』は、冷たくなっていたのでした。。。
『ごめんね…。ごめんね…。』
冷たくなった『こめ』を両手に乗せ、なでながら何度も何度も謝り、涙を流しました。
次の日、休みだった私は『こめ』を綺麗な花柄のキッチンペーパー?で包み、小さな箱に入れて、実家に連れて帰りました。
当時、高校生だった弟が学校から帰ると同時に、庭に小さな穴を掘ってくれました。
『こめ』の埋葬が終わると、一緒に手を合わせてくれていました。
『こめ、歴代のインコもいるからね。向こうで、お友達になってね。』
お別れの時間が過ぎ、私は一人暮らしのマンションへ戻る事にしました。
電車を降り、駅を出ると、東西に大きな商店街が続いているのですが、私の家は駅から西方向にあります。
なのに、誰かに呼ばれるかの様に、東の商店街側に足が向かうのでした。
引っ越してから、特に用もなかったので、東側の商店街に行ったことすらありませんでした。
数分歩いたところで、身体がピタッと止まりました。
商店街を抜けきる手前、右側に、わりと大きなペットショップがありました。
『!?』
ビックリしたのも束の間、またも呼ばれるかの様に、足は店内へ…。
そして、他の物には目もくれず、どこに何が置いてあるのか知っているかの様に、インコの雛の入ったケースの前に着いたのです。
皆様お察しの通り、『こめ』を失ったばかりの私は、お恥ずかしながら、そこで衝撃の出会いをしてしまうのでした。
ケースの中には5〜6羽インコがいました。
その中に、ひときわこちらにアピールしてくる1羽。
そうです。どう見ても『こめ』なんです。うり二つなんです。
天からも、その子からも
『また一緒に暮らそう』
と言われてる気がして、私は『こめの生まれ変わりだ!』と確信し、その子を迎え入れてあげる事にしました。
第二の『こめ』として。。。
新しい『こめ』は、以前の『こめ』同様、すぐになつき、同じしぐさをしたり、本当にソックリそのものでした。
(ややこしいので、以後『こめ2』にしますね)
ただ少し違ったのは…言葉をなかなか覚えてくれない。
何度も何度も教えたのですが、何も話してくれませんでした。
ある日、カゴから出す際
『出ちゃう!』
と言いながら飛び出して来たのです。
もちろん、そんな言葉は教えていませんし、、、けれどやっぱり、『こめ1の生まれ変わりに違いない』と思い、嬉しくなりました。
『こめ2』は、相変わらずで、かわいく元気に育つものの、言葉は『出ちゃう!』の一言のみしか話しませんでした。
そんな『こめ2』との生活の中、仕事前に一声を掛けようとした時、異変に気付きました。
『こめ2』が、苦しそうにしている…。
動きも鈍くなってきた…。
お腹が少し腫れている…?
『こめ1』を看取ってやれなかった事もあり、心配になった私は、次の日の朝に獣医に診せに行こうと決心し、家を出ました。
仕事が終わり、急いで家に帰ると、すぐに『こめ2』の様子を見ました。
『……あれ?』
なぜか、仕事前の様子とは正反対で、元気に動き回り、体つきもシャープになっているのでした。
…!!
その直後、身体に電気が走ったかのように私は驚いたのです。
…タマゴが……。
そうです。『こめ2』が卵を産んでいたのです。
♂と思いこんで育てていたのに、♀だった事にも驚きましたし、お腹が膨らんでいたのは、卵のせいだった事にも驚きました…。
が!
いちばん驚いたのは、卵が落ちていた場所でした。
以前『こめ1』が冷たくなっていた場所でした。
直感的に『これは何かある!こめ1からのメッセージに違いない!』と思った私は、その日眠る事なく、『こめ2』と過ごしていました。
数時間が過ぎた時でした。
『こめコロシタ。M美ガ。M美ガ…こめギューした!ギューした!』
と突然、叫びながら飛び始めました。
偶然かもしれませんが、私がM美のところへ向かって会えなかった時間と同じ時間帯でした。
あの喧嘩の日以来、M美とは仲直りする事なく音信不通で、『こめ1』が死んでしまった事はもちろん、『こめ2』を飼っている事も知らないはずです。
M美を疑いたくはないですが…何かあったのでしょうか…。
『こめ2』は、その日限りで、卵を産む事もなく、怖いセリフを発しながら飛ぶ事もなく、今も元気に『出ちゃう!』と言いながら過ごしています。
読んでいただいた皆様、長々と失礼しました。
ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話