これは、俺が大学1年の時の話なんだけど、講義のとき、俺が座った席の後ろの列、まあつまり俺の斜め後ろに必ず座る女子(名前は分かってるがあえて「彼女」と表記する)が居たんだ。
見た目は黒髪で前髪がぱっつんのわりと綺麗な女の子で、まあ別に不気味な外見はしてないんだけど。
講義を受けていると刺さるような視線を感じるんだよ。
見られてるなーってことに気づいて、1回だけ振り向いたら目があったんだよ。
目をそらさないでずーっと俺の目を見てたんだよね。それで俺「まさか、こいつ・・・俺のこと気になってるのか?」とか思ったんだよ。
男でしかもまだ学生だったらこう考えちゃうよな。
でも、彼女とは挨拶も交わしたことないし、しかも俺は中学時代からかなり奥手で、自分から声をかけたり、デートに誘ったことなんて滅多になかったから、彼女の事を気にしつつも別になにもしなかったんだ。
それからちょっと日にちが過ぎて「俺の事気になってるのか?」と思い初めて、彼女の事を意識しだしてから気づいた事があったんだ。
講義が終わって、教室に残る奴もいれば帰る奴もいるし、次の教室に向かう奴もいるんだけど、この子は俺が教室を出るタイミングを見計らって一緒に教室を出るんだ。
最初は偶然だと思ってたんだけど、毎回タイミングが良すぎるんだよ。
・・・まさかストーカーなのか?とも思ったんだけど、彼女は別に地味でもなくて結構友達も多いみたいだったから絶対ストーカーなんかするタイプじゃないと思うんだよ。
ていうか嫌いなタイプじゃなかったから、ストーカーされるくらいなら付き合うし!とか考えるようになってきたんだよ。
それで、1度勇気を出して飯にでも誘おうと声をかけてみたんだ。
2人きりだといきなり気まずいから、俺の友達1人さそって声をかけたんだ。
すると結構いい反応でさ「アタシも友達連れていくよ^^」って感じで、話すと結構ノリがよかったんだよ。
それでやっぱりイイ子じゃん♪とか思ってさ、ストーカーっぽいだなんて思って申し訳なかったなーって思ったんだよ。
それでその日の夜、俺と友人K、彼女と彼女の女友達Aの4人で大学近くのファミレスに行ったんだ。
俺の隣がK、俺の前がAでKの前が彼女っていう席になったんだよ。
ちょっと「え?」ってなったんだよね。
なんで彼女は俺の前じゃないんだろ?
あんなにノリが良い明るい子なのに俺の前が恥ずかしいのか?
そもそも俺の勘違いだったのか?
とかいろいろ考えたんだけど、今までの行動の事もあるからそんなに気にしないようにしたんだ。
楽しく飯食いたかったしな。
よーし、飯食ったらカラオケだぜー!って気分で弾けてたんだけど、彼女は「帰る」と言い出したんだよ。
このあたりからなんだかよく分からなくなってきたんだよね。
やっぱり俺の勘違いだったのか・・・?
頻繁にそう思うようになってきたんだよ。
でも相変わらず彼女は俺を見てるし、教室を出る時も、食堂に行くときも、俺の側か後ろにいて俺を見てるんだよ。
でも、話すと普通だし他愛無い会話だけどそこそこ話もしてたんだ。
前ファミレス行ったメンバーで飯も何回か行った(飯からは相変わらず発展していないが)。
ちょっと疑心暗鬼になっていると彼女のほうから2人きりで話がしたいと言ってきたんだ。
俺の煩悩はMAXで「やっと告白か!?」とか考えちゃったんだ。
今まで2人きりってのはなかったからね。
大学の中に喫茶店があるんだけど、そこで話をすることになったんだ。
そしたら彼女突然「なんでキミのことを見てるかわかる?」って言ってきたんだ。
ちょっと胸がドキドキしてさ「わかんないな」としか言えなかったんだよ。
まさか「俺の事好きなんだろ?」とか勘違い発言できないしね。今までオカシイと思ったことは何度もあったけど、こうして2人きりになってしまうと煩悩の方が先にでてきて、彼女のオカシイ所とか全部飛んじゃってたんだ。
そんな事を考えてたら、彼女がアイスコーヒーを一口飲んで言ったんだ。
「キミのこと嫌いなんだよね」って。
え?ってなったよ。
そのまま彼女は続けた。
「キミのことが凄く嫌いなの。なんで嫌いなのかはよく分かんないけど生理的に受け付けないってこういうことなのかな。存在してるのがもう嫌なのかも。
でもね?キミのことは嫌いなんだけどキミという人間は知っておきたいの。だからキミをずっと観察してるの。今もね。キミがどういう人間なのかをよく観察して、アタシの頭の中でキミを想像するの。
それでね、キミを脳内で殺してるんだ。
多分300回くらいは殺してるかも。あ、今もだよ?脳内で沢山沢山殺してるんだけど実際にはキミには死んでもらいたくないんだ。頭の中では何回でも殺せるけど、現実じゃ一回きりでしょ?それじゃおもしろくないでしょ?
だからいつもキミを観察してるんだ。キミに何か不幸なことが起こったら真っ先にアタシがキミが苦しむのを見られるでしょ?
キミのことは常に知っておきたいの。そういう意味ではキミの事が頭から離れてないんだけどねww」
彼女はクールに、でも微笑みながらそう言ったんだ。
俺の目をずっと見ながらね。
なんで嫌われてるんだ?嫌われるようなことをしたのか?いつから嫌われてたんだ?
まず最初に頭に浮かんだのはそういう思いだったけど、あとから彼女が普通じゃないと思えてきたんだよ。
でも、俺と接してるとき以外はすっごい普通の女子大学生なんだよ。
なんで俺なんだ・・・?
そんなこと考えたりもしたな。
でもひとつだけ引っかかってることがあったんだよ。
「キミのことは常に知っておきたい」
この言葉。
常にって無理がないか
?
俺は当時1人暮らしだし、窓からの景色は駐車場で見晴らしは全く良くない。
これで監視なんかしてるわけねーだろって思ってたんだよ(少しビクビクしながら生活してたが)
実際監視できる環境じゃなかったし、工学部の友達に盗聴や盗撮の可能性があるところは調べてもらったしな。できるわけないとは思ってたけど。
それからは彼女のことは忘れようと思い休学したんだ。
2か月くらいかな。
復学した時には講義の時も視線を感じることがなくなったんだ。
お?なんでだ?彼女は大学辞めたのか?とおもって周りを見渡したらさ
いるんだよね。
いるんだけど別に俺の方を見てるわけじゃなかったんだ。
嬉しい事なんだけどなんか気になったんだ。
するとその講義終了後、彼女が話しかけてきたんだ。
彼女と話したのはこれが最後になるかな。
「キミはもう存在してないよ」だってさ。
マジでゾクっとしたよ。
あとから知ったんだけど、俺の交友関係から俺がどんな生活してるかなどの情報は、彼女の友達の友達が俺の友達みたいな複雑な線で繋がっていて、彼女に伝わってたらしい。
(さりげなーく聞いてたらしいから彼女の友達も彼女が俺のこと好きなんだと思ってたらしい)
「キミのことは常に知っておきたい」ってこれの事かと思ったよ。
長文駄文失礼しました。
怖い話投稿:ホラーテラー クラッチさん
作者怖話