中編4
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うたよみ

親父と僕でおじの家に泊まりに行ったときの話

父の弟であるおじは早くに奥さんと死別し今は1人で酒屋を切り盛りしている。

だがこの酒屋が本当にぼろい。っていうかこんな田舎に誰が買いに来るんだろうと思うくらいここらは寂れている。

昼過ぎだろうか。

おじと父親が近所の人の所に行くということで

『すまん○○(僕)、店番しといてくれや!1時間もかからんやろうし、もし客来ても値段見て売ってくれたらええから!』

『何で俺が。オトンが残ればええ話やろ!!』

とはすっごく恐いお父様に言えるはずもなく短い間だしと二つ返事で引き受けた。

親父らが出かけて行ってからレジが置いてある机の椅子に腰掛け漫画を読み時間を潰すことに。

時間も忘れ漫画に夢中になる。

『ねぇ?お兄ちゃん。うた好き?』

いきなり声をかけられ体がビクっとした

顔を上げると白い服に赤いスカートをはいた10歳くらいの女の子が目の前にいた

え???いつから????

頭が混乱する

まだ整理ができないまま女の子はまた僕に問う

『お兄ちゃんはうた好き?』

いきなりの状況に体は強張り心臓の高鳴りが耳の奥から聞こえる

だが体と裏腹に自然と口は動いた

『好・・・・き・・だよ』

これが精一杯の返答

女の子はにっこりと笑い続けて聞いてくる

『ならお兄ちゃんも、うたよむの?』

詠む??

歌は歌うものだろ

でもそんな言葉を出す余裕は僕にはない

『・・・・・。』

言葉が出ない

目の前で女の子がにっこり笑ってるだけ

それが何より恐い

『ねぇ?私にうたよんでほしい?』

女の子は問い続ける。状況が飲み込めない

言葉がつまる

無意識なのか自分がそう思っていたのかわからない

しかし僕は言ってしまった

『詠んで・・・くれるの?』

歌を詠む(?)ってこと自体自分には何なのかわからない

でも女の子の悪意のない笑顔に負けそう言ってしまった

女の子は『きゃははは』と声を出して笑った

しかしすぐに真顔に戻る

女の子が小さな口を開け

『よ・・・

『○○(僕)ただいまー!すまんな遅なって!!』

女の子が何か言葉を言おうとした瞬間に親父とおじが酒屋の扉から帰ってきた

金縛りが解けたみたいに急に体が軽くなった

女の子はもういない

さっきまでここにいたのに

おじがまっすぐこちらに歩いてきて僕に話す

『遅なってすまんすまん!客来たか?』

まだ心臓がドキドキとしているのが分かる

『来た・・・かな?』

『なんやそら』おじが笑う

『まぁ留守番も疲れたやろうし中でゆっくりしといで!』

と僕の背中を押す

『なぁおっちゃん実は言うとさっき子供来てん』

僕は話し始めた。

『なんや未成年にでも酒売ったんか?笑』

『ちゃうよちゃうよ。小さい女の子が来てん』

おじの顔が少し曇った

『どんなや?』

女の子の特徴を挙げ、歌を詠むとか詠まれるとかの話をした

おじの顔色が青ざめる

『おい○○(僕)、うたよまれたんか?』

おじが声を張り上げる。

『なんか詠んでくれるってなってんけど女の子がなをか言おうとしたときにおっちゃんとオトンが帰って来てん』

『なら、うたよまれてないんやな?大丈夫やねんな?』

何回も何回も聞き返される。

詠まれてないと何回も答えた。

『ふーよかった。○○(僕)この事は、はよ忘れ』

いろいろ聞きたいことはあった

しかし大丈夫と言われた安心感と早くこのわけの分からない怖さを早く忘れたい一心でその日は早めの夕食をとり9時には眠りについた。

次の日の夜

僕(21歳です)は親父とおじと酒を飲んだ

ここは酒屋。酒は腐るほどある

アルコールも入り少し怖さもやわらいだ僕は昨日のことを聞いてみた

最初は2人とも気にしない方がいいと話すことを拒んだが僕は諦めずに聞き続けた。

渋るおじの変わりに親父がついに口を開いてくれた

『この土地はよう昔から子供、大人関係なしに神隠しに遭う人がようさんおってなぁ、5年後10年後にいきなり帰ってくるんや。その当時いなくなった服装や背丈で。まぁ死んどる姿やけどな。』

親父は続ける

『ほんで、神隠しあったやつらがいなくなるん前に必ず言ってたんや。女の子にうたをよまれたってな。』

『だからそれをうたよみってここら辺じゃ言うんや。うたよみを聞いたら神隠しに遭ってまうってな。最近はそんなこともなくなってワシもうたよみ忘れとったんやけど新しい者のにおいに釣られてひょいと出できたんかもなぁ』

おじが豪快に笑いながら酒を飲む

・・・笑えない。

あのまま歌を詠まれていたら自分は神隠しに遭っていたかと思えば恐ろしい

しかし1つ疑問がある

「歌詠み」から神隠しなんてまったくイメージがつかない

気持ちも落ち着きひきつりながらも僕はそう言って笑った

親父とおじは目を丸くしこちらを見た

おじが無言で机に転がるペンを手にとりメモ用紙に字を書き始める

『うたよみはな、こう書くんやわ』

「歌黄泉」

最後に聞いた女の子の楽しそうな笑い声が頭に甦った

怖い話投稿:ホラーテラー 氏神さん  

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