短編2
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鏡の中の自分

二、三年前まで私は髪を伸ばしていた。別に髪を伸ばしたいとかじゃなくて、美容院に行く日程が中々取れなかったから。

当然前髪も伸びっぱなしで、鼻までは余裕である長さ。

それでも私は髪を切る予定を立てずに結ぶなりして学校へ行っていた。

ある日のことだ。夜中に尿意がして目が覚めた。深夜ということもあり、何か霊的なものが出ないだろうかという恐怖感を抱くが、当然何も出ることはなく、トイレへ。用を済ませ、早々に個室から出ていく。

しかし、世の中には、油断大敵、という言葉がある訳で。

ここで安心したのが悪かった。

霊なんか出る訳ないよなぁwなんて考えながら、洗面所で手を洗い、ふと顔を上げた。

すると、居たのだ、ソイツが。

長い前髪に、水色の服。前髪で目は見えないが、あまり高くない鼻と渇いた口元だけは今も覚えている。

一瞬、思考が停止した。鏡の中に、気持ち悪い女が居る。

恐怖と共に、怖いもの見たさが後押しし、ソイツを見ようとする。しかし、長い前髪がそれを阻んだ。

邪魔な目の前の長い髪を退けようと頭を振ると、なんと、鏡の女も頭を振ってきた。

頭を振っただけでは視界が晴れることもなく、次は手を使い、耳にかきあげる。すると、鏡の女も真似をした。

自分の視界がクリアになったと同時に、女の前髪で隠れていた目が見える。

その顔は、自分だった。

翌日私は美容院に行った。

パッツン前髪になった私は、鏡を見る度に思う。次からはパッツンにしよう。そして髪を伸ばさないようにしよう。

現在、私は前髪を伸ばして真ん中分けにしている。

怖い話投稿:ホラーテラー おむらいすさん  

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